池上旧トーヨーボール解体工事に関して

アスベスト対策のための陳情

街頭でアスベストの危険を訴えるきたざわ潤子
街頭でアスベストの危険を訴えるきたざわ潤子
昨年秋から始まった旧トーヨーボール解体工事に関して、アスベスト除去が十分に行われるかどうかは、地域住民の心配するところでした。9階建て、18,000㎡の巨大な建物です。

説明会は、1度目は地域住民主催、2度目は業者主催で行われましたが、どちらも100名ほどの人がつめかけ、真剣で、活発な質問が飛び交い、地域住民の不安と関心の高さが伺えました。

①トーヨーボールが建築された昭和40年代はアスベスト大量使用の時代だったこと。
②ボーリング場は、防音のため飛散性アスベストを大量に使用しているケースが多いこと。
③名古屋や大井松田の旧トーヨーボールの建物内部には大量のアスベストがあったこと。
④転売が繰り返され、建物の図面が無いこと。
⑤区内の解体現場から出るコンクリートが再生砕石として道路や駐車場に使われているが、そこからアスベストが検出されていること。(つまり除去や分別ができていない)

等、心配材料が多いこともあり、業者にも行政にも、十分な調査を行ったうえで解体工事が行われるようにと署名活動などもして、この間ずっと訴えてきました。(署名1,118)

説明会のときには必ず、業者側は、「法律通りの届けを出している」といいます。けれども、その法律(届出)=十分な分析に基づいたものなのかという、具体的なところが最も大事な点です。

説明会では、エレベータシャフト部分の調査をしていなかったり、2度の調査といってもクロスチェックになっていなかったことも判明して、疑問や不安は払拭されませんでした。

特に天井吹き付け材がたった一箇所のアスベスト無しという調査結果をもって、あとは目で見て同じだから「無し」とみなして工事が進められていることに大きな不安が残りました。

2011年2月28日、区議会、都市・環境委員会にこのことに関する3つの陳情が提出されました。

①建物解体に伴うアスベスト事前調査及び飛散防止策が十分行われていないケースがあるので、現状の調査を行ってください。
②レベル3まで含めたアスベスト建材の事前調査と届け出を義務付けてください。
③池上旧トーヨーボール解体工事において、国土交通省の補助事業を使い調査してください。

傍聴をいたしましたが、奈須りえ議員の上記3つの意見に対して、行政側は「法令にのっとった対応をしている」という回答を繰り返すばかりで、積極的な検討を考える姿勢は全く見られませんでした。

奈須りえ議員は、届け出を形式的に受理するだけでは区民の健康は守れない、厚生労働省の示す採取法※によると3000㎡以上のところは600㎡ごとに調査せよとの制度は生きているはず、大田区の条例が時代遅れになっている。実際再生砕石にアスベストが含有されている、ということからも現行のやり方には不備があるということは明らか。区民の健康のために今後何をしなければならないか考えるべき。レベル3までの届け出を義務付けている練馬・文京・新宿区の例をあげ、今後の工事全般に影響を及ぼす大事な案件だからこそ、真摯な対応を、とせまる、熱弁でした。

けれども、次の日の委員会で、この件は継続審議となりました。事実上の不採択です。

今回は大変残念でしたが、今後、自治体には、時代にあった一歩踏み込んだ対策(条例の改正)を期待したいものです。自治体の姿勢によって、業者と地域住民のよいリスクコミュニケーション(安全な工事をするために十分な客観性のある調査がなされ、地域住民への公開と双方向の説明会がなされることなど)も生まれるのではないでしょうか。

※平成21年度版厚生労働省委託事業「石綿含有建材の石綿含有率測定に係る講習会テキスト」(資料①)及び「建築物の解体等に係る石綿飛散防止対策マニュアル2007」(資料②)に示された試料の採取法

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