祈り 

〜 ブータン国王来日に際して 〜

初々しい王妃を連れ立ってのブータン国王。
衣裳の鮮やかさ、美しさも印象的でしたが、その衣裳に決して負けない凛とした気品と美しさを備えたご夫妻でした。

11月17日、日本の国会で演説したブータン国王の、その魂のこもった言葉には、とても感動を覚えました。

「いかなる国の国民も決してこのような苦難を経験すべきではありません。しかし仮にこのような不幸からより強く、より大きく立ち上がれる国があるとすれば、それは日本と日本国民であります。私はそう確信しています。」

この言葉に涙がこぼれ、何度もくりかえし心によみがえりました。

 国会の演説は英語でしたが、途中、祈りの言葉は、「自国の言葉」でした。魂を込めるには、自国の言葉なのでしょうね。

3月12日には、国をあげて日本のために祈願をしてくれたとのこと。そして1か月間、裳に服してくださっていたとのこと。
今回のご訪問には、国で2番目の高僧を同行させたとのこと。

きっと、東日本大震災の被災者のために祈りを捧げるために。

日本が祈ってもらえることの幸せをかみしめました。

被災地を訪問した際の、子どもたちに国王が語ってくれたお話は、こんなふうでした。

「竜を知っていますか?竜は人の心の中にいて、経験を食べて成長します。」

心の中の竜、人格のことでしょうか。

「精神性」を大事にしているお国柄、この国王のたとえ話には、とても含蓄を感じ、私の心の中にも「竜」がいるのかしら、いるのだったら、大事に育てていこう、と思いました。

ブータン王国は、国民の心理的幸福などを指標とする「国民総幸福量」(GNH)を重視する国だそうです。

経済的な豊かさが「幸福度」ではない、ということを教えにきてくれたように思います。

「祈る」ことが生活の一部である敬虔な仏教徒の国。今、日本が取り戻さないとならない「精神性」をそっと伝えにきてくれたように思いました。

美しい竜を育てていきましょう。