まちぐるみ自然エネルギー・循環型社会

 

行政視察で高知県梼原町に行ってきました。

 

福島原発事故以来、注目されている自然エネルギー。東京電力管内では電力不足はいわれていないものの、電力料金の値上げは、特に中小企業には、大きな圧迫になっているものと思われ、安価で安定した電気の供給が求められます。

 先日、「再生エネルギー固定価格買取制度」が制定されたので、電力市場に参入する民間企業や行政も多くなることが予想されます。そこで先進的な施策を行っている自治体に学ぶ目的での視察です。梼原町は、今、注目されている町だけに、大田区の他に、兵庫県朝来市、高知県仁淀川町からも視察団が来ていました。

 

雲の上の町ゆすはら

梼原町は、高知空港から車で約2時間、四万十川上流の山間の町です。登り道を走っていくと、緑の山々と渓流、お茶の段々畑(千枚田)、狭い平地には田んぼが見えますが、ほとんどが山(町面積の91%が森林)、日本三大カルストの一つの四国カルストに抱かれた高地の町です。人口4000人弱の小さな町ですが、地域特性を生かしての梼原町の振興計画は「森林と水の文化構想」であり、環境・教育・健康を3本柱としています。

 

梼原町庁舎

町役場に着くと、その建物にまず驚きました。木をふんだんに使ったぬくもりのある建物です。中に入るとまた組木のような天井、床もカウンター、イスや案内板まで、美しい木目のある杉の集成材で作られていました。地産地消、町産材の振興に努めているそうです。

                  

               91%が山。地元の木をつかったいい香りのする庁舎

説明を受けたのは、議場です。大田区の場合は、議場は、本会議の時以外はほとんど使われませんが、こちらは多目的に利用出来るように大型スクリーン、プロジェクターが組み込まれていて、建物自体の省エネや省資源の他に「効率性」も追求されているのでした。 

自然エネルギー 

風力発電・・・標高1,300mの四国カルストにデンマーク製の風車600kwが2基。年間380万kwh。町内の58%の電力を賄います。 

小水力発電・・・町内に3か所、川の堰の落差を利用しての発電は51,700Mwh、町内使用電力の2.7倍にもなり、余った分は、四国電力に売電している。わずか6mの落差を利用して発電した梼原川の電力は、昼間は中学校に・夜は、街路灯82基に供給しています。 

地中熱利用・・・ヒートポンプで圧縮加熱した地中熱で、温水プール。25m5コース、歩行浴32m、幼児用プールを擁し、一年中利用できます。 

太陽光発電・・・庁舎は屋根一体型の全面太陽光発電システム、その他の公共施設22か所が太陽光システムを取り付けています。(ちなみに大田区は10か所) 

この他にも、森林の育成のための間伐、間伐材の有効利用の木質バイオマス・ペレットストーブ、ごみの固形燃料化や廃油の活用など、持続可能な地域づくりへの取り組みをお話ししていただきました。 

説明してくださった中で印象的だったのが、子どもへの教育のこと。“子どもたちと太陽光パネルをつくり、そこで生み出される電力で、ものを動かす仕組みを見る”という学習をするそうです。エネルギーの“見える化”により、“入口と出口を知る教育”をしているとおっしゃっていました。 

自然の恵みを実感することで、自然との共生の心も育まれることでしょう。それにひきかえ、都会はなんでも“ブラックボックス”になりがちです。こころして、“入口と出口を知る教育”を意識していきたいものです。 

梼原町は、大自然の中で、可能な限りの自然エネルギー利用を追求していますが、大田区もせめて公共施設全ての太陽光パネル設置ぐらいはできるのでは、と思いながら帰路についたのでした。