“景観”の価値 とは ~大田区景観計画の策定に際する パブリックコメント・説明会

 ■富士山を眺めることができる権利
富士山が世界遺産に登録される見込みとのことです。
朝、通勤途中に富士山が見えるといい一日になる予感がしたり、夕焼に染まる富士山をみて一日の疲れが癒されたり、など、日本人の多くが美しい富士山にエネルギーをもらっていることでしょう。
私も、以前、池上本門寺の高台からの富士見スポットを散歩コースにしており、夕焼けに浮かび上がる富士山を時間を忘れてながめたものです。
ところが、ある時から、その場所からの富士山が、高いビルにさえぎられて、見えなくなってしまい、非常に残念に思いました。それから高いビルはさらに増えていき、いたるところで、「富士山が見えなくなってしまった」という話を聞くようになりました。
遠く離れた富士山を“ながめる権利”というものがないものでしょうか。
一人ひとりの日々の小さな楽しみ、でも合わせれば、何千人、何万人の楽しみなのであり、それが奪われることは、日本人のモチベーションに大きく影響するにちがいありません。 “景観”の価値を見出し、それを守る手立てを考えることをしていかなければならない、と思います。

 ■呑川沿いのマンション建設
さて、池上本門寺を望む寺町で、今、呑川沿いに7階建てのマンションが建とうとしています。
日蓮宗の本山、池上本門寺と周辺の多くの寺。緑が多く、古くから住んでいる人が多い地域です。山の上の大堂と五重塔は遠くからも望めます。

地域住民は、「景観」の視点からこのマンション建設には、問題を感じています。ただでさえ、狭い呑川沿いの区道。そこにぎりぎりに建つということも相当な圧迫感になりそうです。
地域の人にとってのそもそもの不満は、この建設に際しての十分な事前の説明や協議が行われなかったことにもあります。
業者との協議を求めましたが、業者は、建築基準法に照らして、なんの違法もないのだから、このまま進めるという返事でした。
規制緩和によりさらに業者に有利となっている建築基準法。 古くから住み、これからもずっと住み続ける近隣住民の意思は、どこにも受けとめられないままに、工事が進んでしまうという現状です。
 
■大田区景観条例」施行・景観計画の策定   ~住民が主体的に関わる町づくりとは~
大田区では、この第1回定例会で、「景観条例」が制定されました。これまで、東京都が景観行政事務を行っていたものが、大田区に移管されたのです。
それならば、大田区が主体的に大田区の景観の価値を守り、育むような、計画に繋げていくべきです。けれども、いまのところ、せっかくできた「景観条例」にはなんの実効力はなく、住民の権利、町づくりの方針はあいまいです。
高度経済成長時代とはちがう、社会の変化や地域の特性に応じた、国の法改正、地域のルール作りが必要です。
たとえば、工事が始まってしまう前に、周辺住民と協議をする場が設けられるとか・・・、住民の意思が反映されるような具体的なルール作りが必要だということを実感しています。
そのためには自治体が支援して住民が町作りに主体的に関われるようなしくみが望まれるところですが、区民説明会はよいチャンスです。多くの方が参加して、景観計画の行方に積極的に関わりたいものです。
以下にパブリックコメント、説明会の詳細をお知らせします。 興味のある方は是非ご参加ください。
   ~大田区景観計画の策定に際して~ パブリックコメント、説明会の実施
パブリックコメント:5月13日~5月31日
 区民説明会   5月23日(木)14:00~16:00(入新井集会室 大集会室)                                             5月24日(金)14:00~16:00(消費者生活センター 大集会室)                                                                 18:30~20:30(消費者生活センター 大集会室)