成長と富の創出の好循環」で“投資と株”の勧め? 「大田区特別区税条例の一部改正」に反対討論

2013年10月17日 23時36分 | カテゴリー: 政治, 税金, 議会報告

大田区議会の多くの議案の中に、時々「条例改正」というのがあります。 今回は、「大田区特別区税条例(一部改正)」というものがありました。
税金に関わるものなので、丹念にみていくと、どうも国民に「投資」をさせようとする国の目論見がみえました。国の借金である国債が1千兆円を超えるという日本。国債を買っているのは、日本国民で、つまり国民がこの国の借金を支えているわけですが、それでは足りないので、今度は、「投資」をしてもらおうと。
景気回復の手段になるという算段でもあるのでしょうが、投資にはリスクがつきものです。だいじょうぶでしょうか。また、株や投資で得た利益に対しての税制の優遇は、公平性において、問題はないでしょうか。結果的にお金持ち優遇になっているのではないでしょうか。
以下に議会での私の討論内容をご紹介させていただきます。


第88号議案 「大田区特別区税条例(一部改正)」に反対の立場から、討論いたします。
国は、「成長と富の創出の好循環」の実現のためとして、民間投資の喚起のための税制上の優遇措置を講じ、それが今回の大田区特別区民税条例の一部改正にもなっています。
上場株式等の配当所得及び譲渡損益の損益通算の対象に、「特定公社債等の利子所得等及び譲渡所得等」が加わりました。特定公社債等とは、国債、地方債、外国国債、外国地方債、公募公社債、上場公社債等を指します。
また株式等に係る譲渡所得等に関して、1:特定公社債等及び上場株式等、2:一般公社債等及び非上場株式等、それぞれに譲渡所得等の分離課税におけるグルーピングをするというものです。一般公社債とは、特定公社債以外のものを指します。
このように株式投資、投資信託における、損益通算ができる範囲を拡大し、投資をしやすい環境を整え、つまりは、区民に投資を促すものとなっています。

一方、金融機関では、「NISA」という少額投資非課税制度の口座開設が大々的に宣伝されています。年間100万円までなら、上場株式、投資信託の取引において、投資を始めた年から5年間は、売却益や配当、分配金に税金がかからない制度です。投資をしたことのない人にまず小口で試してみませんか、という「政府勧奨」ともいえる施策です。
財務省のHPには、「金融所得課税の一体化についての基本的考え方」として、少子高齢化による貯蓄率の低下、家計の金融資産の効率的活用が経済活力の鍵、「貯蓄から投資へ」の政策的要請。とあります。
つまり、これまでは国民の貯金が買い支えてきた国債だのみだったけれど、それだけでは足りなくなってきたので、今度は「投資」にしてもらおうという考え方が露わになっています。 このような背景で、投資を喚起しても、景気が良くなるとはとうてい思えませんが、国が「投資」を景気回復のキーワードにしていることは確かです。
大田区も手を挙げた国家戦略特区の元になっている政府の成長戦略「日本再興戦略」、94ページにわたる本文中、国民生活という言葉は一つも出てきませんが、以外にも国際競争力という言葉も10個だけで、「投資」という言葉がなんと112個も出てくるそうです。
国家戦略特区のメニューの多くは、医療、教育、介護など、公共調達の民間資本による運営に関る提案がほとんどですが、民間投資といっても、学校や上下水道、道路などの大型公共事業がその中心です。
また、オリンピックの整備にかかる費用は、周辺環境整備まで含めれば、1兆円を超えるとされていますが、その資金は、前回の招致の時にもすでに「外債による整備」と言われていましたので、現在の財政状況を考えれば、やはり外債による整備になるのだと思います。そして、利息は、税金から、投資家に支払われることになるわけです。
結局はもう国債を発行することが難しく、私たちの税金と外国からの借金で公共事業を行おうとし、そのうえ国民の「投資」をあてこんでいる、ということには大きな疑問を感じざるを得ません。 投資には、必ずリスクがつきものです。経済が回るための投資ならともかく、今の投資はマネーゲームです。株や貨幣の上げ下げの利ザヤを稼ぐ実体の無いギャンブルにも近いものです。しかもリーマンショックにみるように、グローバル化している世界においては、ある国で起こった金融危機が世界をかけめぐるという負の連鎖が、いつ起こるのかわからず、一たび金融恐慌が起こればすべての人にその負担がいくのです。
金融商品の税制の問題は公平性、妥当性にあります。
同じ高額所得者でも、投資で儲けた人は、優遇されるという側面があり、一方、リーマンショックにみるように、金融機関が破たんしそうになっても大きすぎてつぶせない場合、財政投入されることがあります。

元金融監督庁国際担当参事官の志賀櫻さんは、「一般の善良かつ誠実な納税者は、無用で余分な税負担を強いられ、犯罪やテロの被害者となり、挙句の果てにはマネーゲームの引き起こす損失や破たんのつけまで支払わされている」といっています。
投資を優遇することが、「なぜ妥当といえるのか」どのような説明ができるのでしょう。投資が増えたとしても、マネーゲームだけ、公共事業だけで、実体経済が伴わなければ、リスクを伴い、利払い負担も増え、場合によっては、バブルを招くとともに金融不安を呼び込むことになります。
まず取り組まなくてはいけないのは、実体経済を健全化するために、社会保障など生活の基盤を充実させること、社会保障負担に占める個人負担が相対的に企業負担より増えてきている実態を改善すること、租税回避を招いている税制を改善するとともに、高額所得者ほど税負担の少ない、不公平税制を改善することなど公平な税負担を追求することではないでしょうか。

今回の条例改正は、徴税における格差の拡大や、金融・財政の不安定化を招く要因になる可能性があるので、反対いたします。