大田区、空家6万2千戸! 有効利用できないか!?

空家対策特措法が施行されました。これによって、老朽化した危険な空家については、自治体が強制撤去できるようになりますが、もう一方で、利用可能な空家については、有効利用ができないだろうか、と思います。

大田区も昨年12月から、「空家のマッチング事業」を始め、住宅課に専用の窓口ができましたが、まだ「提供者」と「利用者」とのマッチングは成立していません。課題も多いことでしょうが、少しでも進んで”地域が豊かになることをのぞむものです。
 
5月末に行われた臨時会に続く連合審査会では、「空き家の有効利用」について、世田谷区の実践を紹介しながら、提案をいたしました。ご報告いたします。



空家の有効活用について

大田区内の空家は住宅土地統計調査によると平成20年に4万4千戸だったものが平成25年には、6万2千戸に 増えています。総務省の統計によると、これは国全体でですが、内訳は、賃貸住宅が約半数で、35パーセントが個人用の住宅、現在、この個人用の住宅の空家 率がどんどん伸びているのは、高齢者単身世帯の増加、そして、空家になってからは、その後の管理ができていない状況が多いと言われています。子どもにとっ ては、すでに自分の家があり、親が亡くなったあとの家をどうしたらよいか、と悩み、先送りしているうちに結果として、放置状態になっていることも多いと言 われています。このままの空家の伸び率で行くと2040年には空家率は43パーセントとなり、3件に1軒は空家になるといわれています。特に大田区は工場跡地に大型マンションが作られていきやすいので、空き家増加に拍車がかかることでしょう。様々な弊害も予想される空家問題、将来的な自治体の負担を考えても今から真剣に向き合わなければなりません。

さ て、大田区は昨年12月より使用可能な空家のマッチング事業を住宅課の窓口で、(株)大田まちづくり公社が業務委託を受けて、実施するようになりました。 空家活用で、しかも社会貢献のための活用といますから、大変期待するところですが、しかしまだオーナーからの登録は7件、利用したい側の登録は14件で、 契約に至った件数はゼロです。相談は180件といいますから関心を持つ区民が少なくないことがわかります。しかしなぜ、なかなか進まないのでしょう。希望 する地域や家賃など、両者の条件が合わないから、という説明を受けましたが、確かに不動産の貸し借りはそう簡単なことではないでしょう。特に専門知識を持 ち合わせない区民にとっては、思いがあってもどうすれば、社会貢献活動に使えるのか、どのような手順が必要なのか、どのような運営をしていけばよいのか、 借り手の市民団体との調整も含めて、難しい問題をはらんでいると思われます。

大田区が参考にしたという世田谷区と「世田谷トラストまちづくり」 の協働事業の「空き家等地域貢献活用」のお話を聞いてきました。2年間で550件の相談があり、7件が成立したということですが、支援体制に特徴がありま す。まず相談を受けたら、どのような活用方法があるかを一緒に考え、世田谷区の関連部署やNPOなどの活用を希望する団体との出会いのサポートをします。 また空き家等の地域貢献活用のモデル企画の募集もしており、選定されると、初期整備に世田谷区が、1件当たり、最大200万円の助成をしています。申請に あたってのアドバイスや、選定されてからの1級建築士の派遣を通しての改修計画、稼働後の運営のアドバイス、他の施設のオーナーとの、課題の共有や情報交 換などのオーナー会議など、継続的な支援体制が組まれています。また、現在7件のモデルケースには、見学者が絶えず、波及効果が生まれているという繋がり が生まれています。

世田谷区の場合は、オーナー自身が社会貢献をする場合、他の市民団体に任せる場合、まるごと一軒使う場合、3階建てだ けれど、1階だけを使う場合、あるいは一部屋だけを地域貢献活動に使うなど、などさまざまです。たとえば、モデルケースの一つ「タガヤセ大蔵」は木造ア パートのオーナーの依頼から生まれた地域の居場所です。2階は入居者が入っていますが1階部分を認知症カフェを備えたデイサービス施設に改修しました。施 設利用者やボランティアや近所の人たちが集える所になっています、畑の仕事をして、みんなで料理を作って、食べておしゃべりする、多世代交流のできる寄合 所に生まれ変わりました。

多くの情報を備えた専門家集団を交えての支援体制は、オーナーの掘り起こしと、安心感につながる重要な要素だと思います。

【1】大田区の事業でもオーナーの志に寄り添った社会貢献活動の事業化に向けての、包括的、継続的な支援体制があれば、さらに展開するのだと思いますが、今後、もっと踏み込んだ支援体制を考えていく予定はありますか。

【2】また、この事業の促進のために、公共性のある、社会貢献になる空家活用に対しては、補助金を出すことには意味のあることだと考えますが、いかがですか。

【3】世田谷では1階部分だけなど、部屋だけの活用も行っています。家一軒だと、たとえば、2階には荷物がおいてあっても一階が使えるという場合もあるでしょう。部屋貸しなど、ハードルを低くすると貸主もふえるのではないでしょうか。部屋貸しも視野にいれませんか。

世田谷トラストまちづくりは「ひと・まち・自然が共生する世田谷」の実現をすすめるという理念を持って、さまざまな団体との連携をとりながら、果敢にまちづくりに取り組んでいます。

今 ある社会資源を利用して、開かれたコミュニティーの場が作られることは、少子高齢化・孤立化・などこの社会の抱える問題の解決にもつながります。街の中か ら、空家が減ってくることは、まちの価値があがり、住みたい人の増える街としての将来的な税収が見込めるということにもつながります。

【4】空き家のマッチング事業はこれからどんどん開拓が必要な新しい分野であることから、機動力のある専門集団を含んだ、まちづくりへの意欲のある、NPOなどに業務委託することは考えられませんか。

住宅に関しては今後様々な課題が生まれてくると考えられます。地域を豊かにするための方策が大田区でも推進されるように願って、質問を終わります。