「児童養護施設退所18歳の若者に対する支援」 大田区議会 予算特別委員会で質問に立ちました

昨日、「虐待や貧困の連鎖を断ち切るためには・児童養護施設退所18歳の若者に対する支援」というテーマで質問しました。

後半、赤字のところが児童養護施設退所18歳の若者支援についての行政側の答弁です。
大田区は、今年度予算に「子どもの貧困対策に関する計画の策定」を入れており、その中でちゃんと調査・議論をしていくということと、支援の必要性もうたっていますので、前回よりは大きく前進したかな、と喜んでいます。


予算特別委員会

本 年1月27日、区内在住の3歳の男の子が親からの虐待によって亡くなるという悲しい事件が起こりました。この世に生を受けて、最初に出会い、頼るべき親か ら虐待を受けることほど、残酷なことがあるだろうかと思います。二度とこのようなことが起こらないように地域づくりや教育、行政サービスのあり方をもう一 度確認し、私たちに何ができるのか、しっかり考え、予防のために全庁的に連携を取っていかなければならないと思います。

質問いたします。
【1】あの事件を受けて大田区はどのような対応をしましたか。なぜ起こったのか、事件の分析から今後に生かすことなど、お考えがあったら教えてください。

虐待の要因には、「生活困窮」、「孤立」ということがいわれています。
大田区が28年度予算に「妊娠届け」を提出した時に全ての妊婦に保健師等が面接をして、その後の出産・育児期を通して切れ目なく支援をしていくという事業を加えたことを大変評価し、リスクの高い妊婦には特に配慮していくということも大変重要なことだと考えます。

し かし明らかにリスクの高い母親だけでなく、“産後うつ”に代表されるようにだれでも育児不安に陥ることがあるものです。子ども家庭支援センターの事業であ る「ノーバディズ・パーフェクト」という事業は“だれだって完ぺきじゃない”、ということをグループワークで仲間といっしょに確認しながら、徐々に自信を 付けていく優れたプログラムだと聞いていますが、まだ区民への周知が十分ではないのではないでしょうか。

お聞きします。
【2】PRの方法はどうしていますか。実際に参加している方の感想はどのようなものですか。

【3】今後の事業展開を教えてください。

さて、品川児童相談所の資料によると、虐待を受ける年齢で最も多い層は7歳~13歳で内容別でみると心理的虐待が最も多く、それに次いで身体的虐待、ネグレクトの順になっています。傍からみただけではわからないけれども、子どもが困難を背負っている場合もあるでしょう。

お聞きします。
【4】 日本は子どもの権利条約を批准していますが、学校教育の中で、子どもの権利についてきちんと学ぶ機会はあるのでしょうか。条約の掲げている「生きる権利」 や「守られる権利」あらゆる種類の虐待から守られること、を子どもたちは知っているのでしょうか。もし悩んでいる子どもがいた場合、学校で相談できる場所 はありますか。

品川児童相談所で聞いたところ、入所時、大田区に住所があり、現在施設に入所している子ど もたちは、概算で230人ということです。230人もの大田区の子どもたちが家庭にいられず乳児院、児童養護施設、または里親等のもとにいるという現実を 重く受け止めなければいけないと思います。また児童相談所総計の虐待相談が前年度比15%増のところ、大田区は20%増と他区より多くなっています。

貧困や虐待の連鎖をどこかでしっかり断ち切る施策が必要です。

昨 年の第2回定例会でも質問いたしましたが、児童養護施設を18歳で退所しなければならない若者に対しての支援について質問いたします。児童養護施設の子ど もたちはその多くが幼い時から家庭で虐待を受けてきて、心に傷を負い、格差社会の中でも最も過酷な状況のなかで、社会に出ていかなくてはなりません。親元 を離れているために、経済的な支援を受けられず、高額な学費や生活費の負担が進学の妨げになっています。

先日、上池台にある、社会福祉法 人の機恵子寮にお話を伺ってきました。閑静な住宅街にその施設はあり、42名の子どもたちが暮らしていますが、地域の人に温かく見守られ、よい地域である ことに寮長さんが感謝されていました。問題は、やはり18歳退所です。今年度は3人の若者が退所をすることになっており、1人は幸い寮のある会社に就職で きたそうです。あと二人は大学に合格し、1人は学校の寮にもう1人は民間のアパートを借りるそうです。大学生活は奨学金を借りても、生活はぎりぎりで、バ イトをしないと生活はできす、卒業後はその奨学金を返済するのに追われる日々だそうです。住宅支援と返済義務のない奨学金制度が必要だと語られていまし た。

退所した子どもたちはみな大田区に住むことを望むそうです。自分がこれまで育った施設は、唯一、帰ることのできる場所です。何かが あったら、相談にいけるようにと、近くに住みたいのでしょう。大田区に住むことを望む若者が、健康的で安定した生活の中で学んだり、働くことができるよう に援助する仕組みをつくれないでしょうか。

国では22歳まで施設にいられるようにするという議論もなされているようですが、施設入所を待っている子どもが多くいる現状では実現は困難です。もちろん希望すれば残れる道を開くことは必要でしょうが、残るか、自立する道を選ぶか若者に選択肢があってよいと考えます。

世 田谷区では今年度からフェアスタートプロジェクトとして3つの支援を始めましたが、まず住宅支援、シルバーピアの管理人室3室を転用して、月1万円で学生 には4年間、社会人には2年間、シェアルームとして提供します。また年額上限36万円の返済の必要のない給付型の奨学金制度の創設、3つ目は居場所支援で 地域で食事会や交流会ができる交流拠点が空き家活用で誕生し、JCなど地域の若者が積極的に地域づくりの一環で関わっていくそうです。

こ の4月から世田谷区の住宅支援を受ける予定の学生について書かれた新聞記事です。「小学2年の時、父親の暴力にたえかねた母親が家から去り、姉と二人で家 出したところを児童相談所に保護された。その後、児童養護施設に入り、高校を卒業するまで過ごした。短大では、保育士をめざして勉強中。授業料は月 57000円の貸与型奨学金を中心に賄っており、卒業時には130万円を超える借金を背負う。生活費はアルバイトで稼ぐ。家賃は月4万円。食費を月2万円 に抑えても貯金は難しい。定年退職した父親や結婚して子どもがいる姉には、経済的な援助は望めない。友だちと一緒に食事したり、遊びに行ったりできない。 経済的な余裕のなさが友だち関係にも影響する。世田谷区の住宅支援について、「家賃が1万円で済むなら、差額を奨学金の返済に充てられると喜んでいる。」 と、紹介されています。

大田区でも具体的な支援に踏み込んでいくことを望みます。

たとえば、大田区のファミリー向けの区 民住宅は、借り上げ型のものは段階的に廃止をしていくとのことですが、直営の3棟には、2月末現在4戸空きがあるということです。児童養護施設や里親の元 を巣立つ若者がシェアしてすむ住宅に転用することはできないでしょうか。現在、児童養護施設には生活支援コーディネーターが配置されていますが、この生活 支援コーディネーターが住宅を見回って、フォローをする体制をとることもできるのです。

東京都の管轄する施設にいるので、見えなくなって いる子ども。18歳になったとたんにその社会的養護から外れる子ども、子どもにはなんの責任もありません。声を上げられない子どもたちに代わってその人権 を守り、健全な生活を取り戻せるように支援することが、彼らの身近にある自治体の仕事ではないでしょうか。

お聞きします。
【5】大田区も児童養護施設を18歳で退所する若者、里親から自立しなければならない若者に生活の基盤である、住宅の支援や学びたいという志のある若者に返済義務の免除のある奨学金の創設など、検討することはできないでしょうか。


行政の答弁

児童養護施設は、保護者のいない児童や虐待されている児童、その他、環境上、養護を必要とする児童を、児童相談所の判断に基づき、都道府県知事が入所措置を行う児童福祉施設です。
大田区では、救世軍機恵子寮(上池台)と聖フランシスコ子供寮(久が原)の2か所があり、退所後の相談や自立のための援助も行っています。
児童養護施設などの社会的擁護のもとで育った子どもが、次代を担う一員として自立していくためには、家庭で育った子どもと同じスタートラインに立って自立していけるように支援していくことが必要と考えています。

国の「子どもの貧困対策に関する大綱」や東京都児童福祉審議会の提言「社会的養護の新たな展開に向けて」においても、施設退所者へのアフターケアの推進が明記されております。
現在、児童養護施設退所後の自立生活を支援する制度としては、住宅の転居や、就職、就学の支度金を援助する、都の「自立生活スタート支援事業」などがございます。
この他、国で検討されている養護施設の入所可能年齢の上限を拡大する議論などを踏まえ、来年度、区が策定する予定の「子どもの貧困対策に関する計画」の中で、こうした課題について議論していきたいと考えております。

渡司委員(3月11日質問)が子どもの貧困について、大田区の正確な現状を知ることが大切だといわれていましたが、全くその通りだと思います。

こ の間、乳児院、児童養護施設、児童相談所に伺って現状や課題を聞いてきました。措置された子どもは、家庭が子どもを養育できる環境になれば、家庭に返して いくのが本来の役割なのですが、戻れる状況にはなかなかなれない家庭も多いそうです。その大きな要因は、さまざまな形の生活困窮です。親が若年だったり、 精神疾患で養育困難だったり、低所得、長時間労働、保育園に入れない、家があまりにも狭い、一人親の場合も少なくなく、これらの生活困窮の状況は“子ども の貧困”と全く同じ土台なのです。

ぜひ18歳退所の問題とともに、施設入所の実態も合わせて調査をして、「子どもの貧困対策に関する計画」に、生かしていただきたいと思います。そして少しでも早く具体的な支援の検討に入っていただきたいと思います。

貧困の問題は、労働問題など、国の施策にも関わってくるでしょうが、ぜひ一時的な救済だけではなく根本的な問題解決に繋がるような考察がなされ、健全な家庭生活を包括する自治体であることを要望して質問を終わります。

 
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