学校図書館の充実を願って : 大田区議会2016年第1回定例議会・予算特別委員会のご報告

予算特別委員会も終盤に入ってきました。
私は「教育」のところで、「学校図書館について」質問いたしました。以下に質問全文をご紹介します。

学校図書館の充実を願って。


学校図書館に関して質問いたします。

読書の意義はいうまでなく、心を豊かにし、人として生きる上で大切な共感力や想像力を
育 んでくれるものです。若くみずみずしい感性を持つ、人格形成期には、特に優れた作品に出会ってほしいものです。大田区の調査によれば、一か月に1冊も本を 読まない小・中学生がいるとのこと、大変残念なことです。本の楽しさ・おもしろさに小さいうちから触れ、その積み重ねが主体的な読書につながることでしょ う。幸い、大田区は多くの市民団体が児童館や図書館でお話会を行ったり、小学校には多くのお母さんたちが読み聞かせのボランテイアに入っていかれていま す。学校図書館がさらに子どもと本との幸せな出会いの場となることを願うものです。

2020年から始まる新しい大学入試制度では、これまでの暗記・知識力をはかるマークシート方式だけではなく、思考力,判断力、表現力を見る小論文、記述式の試験が比重を占めることになる、という方向性が示されています。

“学力”の捉え方を、そのときだけの暗記だけではなく、長い教育の中で培われた“思考力や意志”の表現でもある言語能力、つまり心の体験が教育という人間形成に重要な意味を持ち、それを学力として位置づけていくという、学力評価の大きな転換を迎えようとしているわけです。

学校図書館の重要性が改めて確認されるところです。

さて、28年度予算において、
学校における読書指導の充実として、小学校20校、中学校10校に「読書教育司書」を配置するとしています。

平成27年度施行の改正学校図書館法の第6条には「専ら学校図書館の職務に従事する職員(学校司書)を置くよう努めなくてはならない。

と ありますので、大田区が法律にのっとり、読書教育司書を配置することを大いに評価いたします。しかも業者に委託するのではなく、直接大田区が雇用し、教育 との一体化、学校組織の中のライン上に位置づけていることは、学校と共に学校図書館の運営を通し、児童の成長・発達を共に見守りながら、経験の蓄積を図っ ていけるということでもあり、大いに評価するところです。

学校図書館は、文科省の示した機能として
〔1〕読書活動の拠点「読書センター」
〔2〕児童生徒の言語活動の充実や、授業のための資料整備など
学習支援を行う「学習センター」
〔3〕情報活用能力を育むのに必要な支援を行う「情報センター」
◎教師の授業・研究のニーズにも対応
◎子どもたちの「心の居場所」

が あげられています。これらの機能を考えるとき、読書教育司書が図書に関する専門知識以外に、学校教育の理解、子ども理解は必須であること、また公共図書館 との連携、図書ボランティアの窓口になる役目も担うと聞いておりますから、調整能力、コーディネート力など、人間力ともいえる、高度な能力が要求されてい ることがわかります。

今回の読書教育司書の募集は条件を「司書資格」と聞いていますが、司書と言っても図書館司書と学校司書とは、性格が かなりちがいます。図書館は、美術館や博物館と同じ学術機関なので、図書館司書になるべく勉強をしてきた人は、主に情報検索、資料整理・レファレンスを中 心に学んできています。それに対し、学校司書は、養成機関があるわけではありませんが、独自に児童書や子どもの心理を学び、経験に基づいて職務を果たして いるというのが現状です。ですから「司書」の資格があってもすぐに学校司書としての仕事ができるというわけにはいかないのです。

学校図書館法6条の後半に「国及び地方公共団体は、学校司書の資質の向上を図るため、研修の実施その他の必要な措置を講ずるよう努めなければならない。」と続いている所以です。

読書教育司書が円滑に仕事をしていくためには、研修を始め、区がバックアップ体制を創ることが必要です。司書教諭の補助といっても授業を受け持つ多忙な教師と常に一緒にいられるわけではなく、たった一人で、運営に携わることは容易なことではありません。

教育委員会には研修や他校との情報交換を企画するなどして、学校図書館の充実、「読書教育司書」の育成を推進するためのセンター機能をおきこまなければならないと考えます。

そこで伺います。
【1】新しい取り組みの「読書教育司書」に対しては、研修などバックアップ体制をどのように考えていますか。教育委員会の中にセンター機能をもたせるべきだと考えますが、いかがでしょう。

中 学校の学校図書館についてですが、以前は、管理する人がいないから、鍵をかけたまま、という図書館もあると聞きましたが、今はどうでしょう。27年度は公 共図書館から週2時間、各学校に図書指導に人が配置されたのですから、少しは変わったとは思いますが、たった週2時間では開放的な図書館にはまだなりえな かった学校も多いのではないでしょうか。だとするとせっかく小学校で見につけた読書習慣が中学校では果たせないというのなら残念なことです。中学生になる と深く物事を追求をしていく学習も増えることでしょう。調べ学習から発表や報告に至る学習では、調べる力、理解力、分析力、論理立てて説明する力などやが てはプレゼンテーションが得意な国際人が育っていくわけですが、研究活動の拠点ともいえる学校図書館が閉ざされ、アドバイスしてくれる「読書教育司書」が いないのは、大変残念なことです。

まずは、図書館が開いていることが重要であり、小学校からの経験が継続され、途切れることなく、読書を楽しみ、豊かな人間性、学力を培う場所を利用できる形にしておくべきです。

お聞きします。
【2】中学校への「読書教育司書」の配置を厚くすることはできないでしょうか。

大田区においては小中学校の不登校の出現率が全国や都の平均を上回り、増加傾向が続いているといいます。

保健室以外に登校できる場所があることや心を休める場所があることも大切です。読書の魅力に加え、相談相手のいることの安心感や人の温かさなど、思春期にはとくに“見守り”の意味もあるのではないでしょうか。早期の全校設置を望みます。

お聞きします。
【3】「読書教育司書」の全校配置はいつまでになされますか。その計画をお示しください。

中 学校の学校図書館にボランティアに入っている友人がいます。ほとんど使われていなかった図書館を、きれいに整えて、生徒たちを温かく出迎えるようにする と、お昼休みに利用する生徒が増えて、本の感想や探している本のことを話してくれるようになったということです。人がいて、出迎えてくれる図書館、その温 かさがまず大事だと考えます。
全ての学校に司書が配置されて、子どもたちが心地よく本と出合える居場所を確保することができることを望みます。

試 験前の放課後を勉強できるように図書館を開放して、生徒に喜ばれている学校もあると聞きました。家ではなかなか集中して勉強ができない場合もあるでしょう から静かな空間が使えることは歓迎されることではないでしょうか。各学校の学校図書館の取り組みを情報交換したり、放課後や、夏休み、冬休みの図書館のあ りかたなど、ぜひ生徒たちの意見を反映させて、図書館が有効に使われるように願って質問を終わります。

 

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