地方消費税増税分71億円、安心の生活になっていますか?:大田区議会報告

2016年10月27日 08時49分 | カテゴリー: 子育て支援, 議会報告

10月13日に第3回定例会と決算特別委員会が終わりました。大田・生活者ネットワークは2015年度決算の認定に反対しました。区民の基礎的ニーズに十分に応えていないからというのが、大筋での反対理由です。ここに討論原稿をそのまま載せます。


 

大田・生活者ネットワークは第98号議案2015年度歳入歳出決算の認定に反対し、第99号議案、第100号議案、第101議案の各特別会計の認定に賛成の立場から討論いたします。

2015 年度決算は、一般会計の歳入総額は2,573億1,337万円、歳出総額は2,446億6,989万円、歳入歳出差引額は126億4,348万円の黒字と なりました。2014年に消費税が8%に引き上げられたことに伴い、地方消費税交付金は、71億1,337万円増加しました。

所得が上がっていない中での増税は国民にとっては厳しいものです。さらに収めた税金が確かに暮らしやすさにつながっている、と実感できなければ納税への抵抗感は強まり、政府への信頼、また自治体行政への信頼も損なわれていくのではないでしょうか。
地方消費税交付金分は説明とおりに社会保障費のために使われたでしょうか。

2015年度決算を区民の基礎的なニーズを満たすことができているか、という観点で子育て環境と保育園を例に意見を述べさせていただきます。

保育園定員を当初の予定より増やすなど待機児解消のために尽力されていることは評価いたしますが、それでもまだ解決とはいえず、待機児童は4月1日付で229人、認可保育園に申し込んで入れなかった人は1,958人、箱はできても保育士が集まらないなど課題は山積です。

少なくとも待機児問題は解決してほしい、とはある事相の職員の言葉でもあります。虐待の背景には生活困窮があり、狭い住宅、昼夜入れ代わりの夫婦の長時間労働、せめて保育園に入れていれば、だれかの支援があれば防げる虐待があるかもしれない、と話しておられました。

公平性と受益者負担という言葉がよく使われるようになりました。サービスを受けているのだから負担をするのが当然、しかも支払い能力に応じてということで、 保育料が行政によって算定されます。今回の保育料の改定では、二人目以降や低所得者層への優遇措置はありますが、多くの中間層以上にとっては実質値上げで あり、この「公平性と受益者負担」は大田区の支出削減とのセットになっています。この改定で1億7千万円抑えられるのです。

受益と負担、公平性というのではあれば、保育園に入れなかった人への配慮と認可保育園を希望しても入れず、認証保育園に入り、高い保育料を払う人への公平性 を同時に考えるべきです。区内においては、どこの保育園にも入れず、管理の行き届いていないベビーホテルに子どもを預けて働き始め、高い保育料のためにさ らに労働時間を長くして、あげくに子どもが亡くなる、という事件がありましたが、そもそも何のために働いているのか、わからなくなってきている現状と子ど もを育てるという最も重要な仕事を助けるために社会が何もできなかったのか、ということでの、子どもの生命に対しての申し訳なさと大きな敗北感のようなも のを私自身、感じています。

入園選考に際して、あらかじめ有料の保育施設に入れていた人がポイントが高く保育園に入りやす い現状では、資力のない家庭は不利ということになります。そもそも初めから公平性がない中で、保育料だけを取り出して、公平性を説きながら、実質値上げ で、相対的に見ると自治体支出の抑制とする施策には納得いきません。環境整備のなされていない状況で育児・保育の負担を直接、子育て世帯が背負わされてい る現状があり、さらに子育てしている親同士の中で「受益者負担」という名のもとに対立と分断が起こるのであれば、不幸なことです。だれもが受益者でなけれ ばならないのです。

行政がするべきは、まず基礎的ニーズを満たすことですが、特に家庭への支援、良質な保育環境をすべての子どもに行き渡らせることは、今の時代、最も大事なことだと考えます。それが虐待や少年非行の予防ともなり、社会の安定や経済成長へもつながっていくでしょう。

さて、区民の声をきくこと、つまり区民ニーズに答えることが区政運営の基本だと考えますが、議会への「陳情」は区政にとって、区民の置かれた現状を把握し、 改善に向けて進む大切な機会になると考えます。その意味で印象的だった陳情から考察をして決算の評価にもさせていただきたいと考えます。

その陳情は一時預かりの場所を増やしてほしい、料金を安くしてほしい、というものでした。背景は、頼る人もなく家庭で子育てをしている親が疲れ切ってしまう こともある、虐待を防ぐためにも小休止する場所が必要というものです。保育園にどこにも入れず、仕事を辞めざるを得なかった人、家庭での育児を選択してい ても親が具合が悪くなる時もあるものです。ほんのちょっと安心して子どもを預け、休める時間は貴重です。しかし区内には一時預かりとして広く紹介されてい るのはキッズな大森、キッズな六郷、蒲田のサン御園の3か所であり、圧倒的に数が少なく、しかも調布地区にはないなど、多くの親が困難を覚えています。ま た1時間900円という料金は高くてそうそう使えないのです。そのような親たちの切実な願いのこもった陳情が多くの署名とともに出されていました。しかし 審議にあたっての理事者の答えは「すでに51の保育園が一時預かりをしている」というものでした。それを聞いた議員の多くが51の保育園がやっているのな ら、改めての一時預かりはいらないのじゃないかと考え、結果、不採択になりました。

51の保育園が一時預かりをしていると いうことは子育てハンドブックにも書いていないので、誰も知りません。そのうちのいくつかの保育園に問い合わせとどこの保育園も「とても預かれません、お 休みの子どもがたくさんいれば、あずかれるかもしれないが、それもその日にならないとわからない、から無理でしょう」との返答でした。しかも親は一つ一つ の保育園に自分で問い合わせないとならないので、小休止したい理由でいる親があちこち探し回るのでは本末転倒です。とても、51の保育園で一時預かりがあるからだいじょうぶとは言えない状況でした。この時、ある保育園からはこんなことも言われました。今、余裕のある保育園なんてありませんよ。新人保育者を 育てることで、たいがいの保育園は大変なんです。中にはおむつを一度も替えたことがないまま保育園に就職している人もいるんですよ。

51の保育園が一時預かりをしている、この実態のない発言は不用意ではないかと私は考えます。またこのことに影響を受けて議員が陳情を不採択にしてしまった、 このことは行政のチェック機能であるべき、議会もその役割を果たせたといえるのか、反省をしなければならないのではないでしょうか。区民の声を真摯に聴 き、しっかり調査しながら結論を導きだす議会でなければならないと自戒も込めて思いました。

しかしこのことで、私が懸念し たことは、現場の実態が知られていないのではないか、ということです。一時預かりがなぜ必要なのか、親たちの実態、そして現在の余裕のない保育園の実態で す。また仮に空きがあったとしても、一時預かりという、その保育園になれない子どもがポンと来て、過ごすことができるのかどうか、子どもの心理にも配慮し ての施策であるべきではないかと疑問が残ります。

一時預かりは、日常的に親子で遊ぶことのできる広場事業と一体で行われている「キッズな大森」方式が、妥当だと考えます。家庭保育をしっかり支援する体制作りをすることで、家庭での育児を積極的に選択する人も増えるかもしれません。

区立保育園の民間委託についてです。区は直営の保育園を最終的には、18出張所管内にひとつずつ残すという方針のもと、順次民営化を進めています。平成34 年までにあと37園の民営化を予定しているというのですから、大田区の保育の現場が様変わりしてしまうことは必須です。

ある委託園、私立認 可園で、今年7名の保育者が一度に辞めました。子どもにとっては、保育者との信頼関係はその成長の糧として非常に大きいものであり、慣れ親しんだ先生がい なくなることのショックは大きいものでしょう。また多数の保育者の入れ替えによる技術指導、保育園の文化、保育理念などの継承などにも大きな困難があった ことが想像されます。辞めた理由をお聞きしましたが、わからない、とのことでした。委託になるとその事業者の方針もあり、中が見えにくくなるものです。

自分の子どもが生まれるまで、小さな子どもに接したことがない親が増えている中で、家庭の養育力をも支えなければならないとしたら、保育園の役割は年々大き く重くなっています。ある直営保育園のベテラン園長先生からお聞きしました。今の保育園の役割は子どもを保育するのと同じくらい家庭を支えなければなりま せん。家庭がぐらぐらしていたのでは、子どもが育ちませんから。子どもだけを見ていればよかった時代とは今は全くちがいます。不安定な母親への声掛けに気 をつかうことも大事ですし、子どもの生活リズムを作ってあげられない親に厳しく注意することもあります、とおっしゃっていました。子どもが健全に育ってい く環境を体を張って守っていこうとする、園長の気概をかんじましたが、直営だからこそ、保育の本筋を追求できるのではないかと思いました。ある株式会社立 の保育園には「親からクレームがこないように」という厳しい方針があるそうですが、そういう中で、親に注意をする、ということができるでしょうか。家庭の 養育力が落ちている中で、子どもの育ちを支えるという保育者の力量が試される、大変難しい時代だからこそ、保育園の在り方を真剣に議論しなければならない と考えます。今年度から、はじめられた「子育て応援券」で妊婦さんのうちから保育園に相談や見学に行ける仕組みはとてもよいと思いますが、保育園には不安 でいっぱいの妊婦さんが必死でメモをとりながら、保育士の話を聞きにくるそうです。母親を支え、家庭を支え、子どもの成長を育む保育園は、日本の将来を 作っていく大事な土台ともいえるでしょう。

民間委託が必ずしもよくないといっているわけではありませんが、経営が第一であ るとすれば、経済効率性に走る危険性もあるということです。保育や教育の根本理念は、経済効率性とは離れたところにあると考えます。またこれだけ、虐待や 少年犯罪、不登校やいじめ、子どもや家庭にまつわる問題が噴出していることを考えると乳幼児期の重要性をとらえなおすことと同時に民間委託の見直しも検討 すべきではないかと私は考えます。難しい時代になったにも関わらず、現場実態の把握がしずらくなることも心配です。

最後 に、区は区民の声をどこでどのように聞き取っているでしょうか。「主要施策の成果」では、事業が予定通りに進んでいるか、という進捗状況を数値化していま す。391事業中、そのほとんど364事業が「プラン通りの進捗があった」とする3という評価になっていますが、「実施した」という表現ばかりで、質は問 われず、区民の役に立ったかどうかは全くわかりません。区民の生活実態をきちんと知る中で、区民の実態に合わせた施策を展開し、また反省、改善といったサ イクルを機能させる必要があります。反省し、課題解決の道をさぐらなければ、改善には至りません。
新大田区経営改革推進プランの3 つの基本方針の第一番目が「区民ニーズと環境変化に即応する行政経営の推進」、予算編成の考え方においても重点課題に「少子高齢化の進行等、人口構成の変 化への対応」とありますが、区民ニーズをいかにとらえ、基礎的ニーズを満たしてきたのか、「少子化を真剣に食い止めようとしてきたのか」、振り返り反省す べき点を見出し、次の予算に活かしていただくことを望みます。
地方消費税交付金増加分71億、不用額103億、積立基金残高1,211億円の大田区です。
決して、基本的ニーズにおいては、支出のフレーム抑制ありき、ではなく、長期のビジョンを描く中で、まず子どもが健やかに育つ、良質な環境づくりにまい進する大田区であることを願い、討論といたします。