「おおた子ども応援シンポジウム&大交流会」のご報告

相対的貧困の子どもが6人に一人といわれている日本。
大田区では、独自の生活実態調査をもとに、「衣・食・住」の基本的な生活の場面で課題のある家庭、経済的な理由で外出や体験の機会が限られている子どもを「生活困難層」と位置づけましたが、その結果、21%の世帯が「生活困難層」に該当しました。この調査結果をもとにこれから「おおた 子どもの生活応援プラン」が策定されます。

子どもは地域の宝
「おおた子ども応援シンポジウム&大交流会」
~地域で支えるヒントが見つかります!~

2月18日 おおた文化の森にて

主催:大田区、大田区地域福祉計画推進会議

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活動報告者の方々

「大田区における子どもの現状と課題」

大田区福祉部副参事(子ども貧困対策担当)石川里香さん

◆貧困の定義
絶対的貧困…世界銀行の定義、一日の生活コストが1.9ドル未満(日本円では約230円)
相対的貧困…格差が存在する中で、社会のどのような人もそれ以下であるべきでない水準(例:地域社会で必要なお付き合いができるくらい) 阿部彩教授

◆貧困が子どもに及ぼす影響
子どもの成長に必要な学び、経験、人との関わりなどが限られる恐れ。
社会的排除につながる恐れ。(人間関係が希薄に、社会の一員としての存在価値が奪われる、助けを求める機会が得られない→助けられない)

“子どもの輝かしい未来のために、子どもが生きるために必要な力を育み、安心して暮らせる地域社会を整え、子どもたちに引き継いでいく必要がある”

◆大田区の貧困対策 4つの視点
・「気づき、見守る体制づくり」・「切れ目のない支援」
・「貧困の連鎖を断ち切る」・「総合的対策」

◆課題
・子どもには自分を認め、受け入れてくれる「人」の存在
・親の子育て不安

→子どもを包摂する地域社会
→本当の意味の貧困対策
→子どもも担い手も笑顔の地域社会を

 

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大田の子どもに寄り添う活動事例発表

「こども食堂」

子どもの応援団を増やそう 「だんだん」の取り組みから
きまぐれ八百屋だんだん店主 近藤博子さん

・八百屋をやってみて
一人暮らしの大変さを語る高齢者、育児にいきづまっている若いママ
→地域の問題に気が付く

娘の勉強へのつまずき
→ 塾の経験者がワンコイン寺子屋
「“八百屋で寺子屋”と東京新聞が取り上げる」

放課後の宿題 → みちくさ寺子屋(無料で畳のこあがりを貸す)
宿題をやるだけで親子関係よくなる→友だちを連れてくる→子どものたまりば
大人の学び直しの要望 → 様々な講座

・子ども食堂のきっかけ
副校長先生から、一日、バナナ1本で暮らしている子どものことを聞く。

→子どもは児童養護施設へ。地域で何もできなかったことを不甲斐なく思う。
2012年、子どもが一人でも入れる食堂を(子ども食堂)
貧困対策ではないが、全ての子どもに網をかけることが対策にもなる。

・私の故郷・島根
地域でフォローしあいながら生きてきた。

・今、必要なものは
安心できる場 ・第二の家族 ・文化の伝承 ・おばあちゃんちみたいな

かわいそうな子はどこに? というよりも「子どもはどの子もけなげに生きている」という意識を!

・子ども食堂・だんだんの今
・スタッフが子どもをほめる→お母さんは自分の子どもがほめられたことでなごむ。
・だんだんで過ごした子どもが高校生になって、手伝いをするようになった

子どもが真ん中、子どもの笑顔があふれる街に
活動団体の連携をめざす・こども笑顔ミーティング

 

「学習支援教室」

関係と体験の豊かさを求めて
学習支援教室「いるか」 堀井美沙さん

・自己紹介
現在、25歳、大田区生まれ。息子1歳。
子どもの頃は、両親、共働き。祖父母宅にてお留守番。母が看護師で、母の仕事仲間
の子どもたちもいっしょに夕食を祖父母がめんどうを見ていた。町会の祭りに参加す
るなど地域となじみ、両親の共働きを寂しいとは思わなかった。

・転機
ジュニアリーダーをしているお姉さんに憧れ。高校生でジュニアリーダーに。イベント企画、運営。今に続いている。「人は人と関わる中で成長する」とPRカードに。
大学3年生の時、東日本大震災。無条件に応援してくれる人の存在の大切さを思う。
→単発のイベントではなく、継続した関わりを→学習支援

・学習支援教室「いるか」について
学力アップをめざさない。楽しい、なんかやってみよう。
子どもは“遊びに来ている”という感覚。2時間中、1時間は勉強、1時間は遊び。
遊びの中で人との距離感、付き合い方を学ぶ。
学生スタッフが地域イベントに参加。自分もそうだったように子どもたちがお姉さんに憧れられるといい。子どもの存在はシニア世代を元気にする。

・スタッフが高校生や大学生のワケ
無条件に子どもを受け入れる。大人のように勘ぐって接するのではなく、直で。

・生の学び・特別教室
・妊婦さん:「ぼくの生まれる前」の話
・地域の人が書初めの先生:子どもの反応「ゆっくり見てもらったの初めて!」
「はじめて上手く書けた」。地域の70代の方が張り切って教えてくれた。
・特別養護老人ホーム「認知症サポート講座」→家で子どもが優しくなった。

・親との面談
いろいろな実情がわかってくる。
特別支援教室に行っている・家族が問題を抱えている・いじめ、不登校。

・いるか・だらだら計画
なんにもしないだらだらの日も大事、今の子どもは忙しい。

・学生スタッフへのお礼 → 高校生 1回1500円、大学生 1回2000円
学生であっても完全なボランティアにすべきではない。子どもたちと豊かな関係を築いてほしい。未来への投資は、かならず街に返ってくる。

 

学習支援事業

「循環型社会の確立と地域創造の実現を目指して」
NPO法人ユースコミュニティー 濱住 邦彦さん

・小4~高校生対象、就学援助を受けている子どもを中心に

学習支援の方法・特徴

〔1〕中学生には、一般の塾と同じ専用教材を活用。教育関係企業3社からの支援
パソコンを使ったeラーニング。

〔2〕場所は、会社の会議室や商店、現在4教室。

〔3〕ボランティアスタッフ70名(大学生・シニア・若手社会人が多い)、マンツーマンの学習支援。アクティブラーニング。

〔4〕話し合いを大切に
子どもたちは、サービスを受けるという意識ではなく自分も教室の“主体”に。自由な居場所にもなっている(勉強の後に、お会式に遊びに行くなど)
支援者にとっての居場所にも。学習支援というセーフティ―ネットを作ることと同時に、地域の支援者と子どもたちが関わるコミュニティ―を作る。

〔5〕体験を大切に
特別授業:リトミック、漫画家の話を聞く
課外活動:体験活動(クッキング等生活スキル・年1回キャンプ、自然体験)
クリスマスパーティーではオリジナルケーキ作り
都立高校への入試にあたって:集団討論の試験に備えて、6日間の集団討論とキャリアカウンセラーを呼ぶ。作文に関しては、小説家の話を聞いた。
就労体験:江東区の物流の会社見学

〔6〕ソーシャルワーク活動 数カ月に1回
親との面談で見えてくること…区の相談窓口、いろいろな制度があっても行きづらい。私立高校にも行けないわけではないが、奨学金制度などがわからない。
明日から食べ物がない、という相談。フードバンクにつないだ。
朝ごはん食べてこない子どもも多い。ケロッグからの提供のおやつとシリアル。

・支援スタッフについて
支援者スピリッツを学ぶ:ケースワーカーに話を聞く
振り返りによる民主的な運営と定期的な研修。スタッフ会議では、上下関係がなく率直に。

学習支援をプラットフォームにして子どもを支える仕組みをつくりたい。

 

スクールソーシャルワーカーの取り組み

子どもが笑顔でいられる環境づくり
スクールソーシャルワーカー 武藤渓一さん

・大田区のスクールソーシャルワーカー(SSW)
平成26年から2名配置でスタート。現在は5名。
資格:社会福祉士、精神保健福祉士等
担当:区内小中学校87校
勤務体制:週4日勤務(非常勤)
SSWの理念:子どもの最善の利益と権利擁護
活動イメージ:つなぐ、社会的包摂

・実際の相談
相談件数:小学校51・中学校50

・対象者の特徴
一人親79%、生活保護世帯35%、保護者の疾患41%→貧困
主訴:不登校、家庭環境、児童虐待
相談の背景:複数の問題状況、特に生保受給家庭は課題が多数

・具体的な活動内容
ケース会議、家庭訪問、同行支援、面談相談、ケースコーディネート(地域連携)、教職員への助言、研修活動

・SSWが大切にしていること
個人として尊重、子どもの最善の利益優先、本来持っている力に焦点を当てる。
自分で決められるようにサポートする、環境との相互作用に焦点、秘密は守る。

・見えてくる実態
一人親で、子どもが不登校になったら大変。
毎日、欠席の届けをする必要。会社からできるものか。
働きながら、子どもをどう支えるか。

 


シンポジウムを終えての感想

それぞれの市民活動の報告はすばらしく、子どもたちの成長過程のある時点では大きな支えとなっていることが伺えました。地域の中のつながりを作っていくための拠点を作っていく、という発想はこれからの時代は特に必要でしょう。

面白かったのは、報告者自身の生い立ちです。たとえば、堀井さんは、両親が共働きでも祖父母の愛情に守られて、寂しいとは思わなかったこと、ジュニアリーダーのお姉さんにあこがれてジュニアリーダーになった、など「人」がキーワードになっていると感じました。物質的に恵まれた学習環境があっても、学習意欲につながる動機付けは別のところにあること示唆してくれます。

大田区の子どもの状況調査の結果は、大変興味深く、これまでにない視点で子どもの実態をとらえており、今後の施策にぜひ生かしていかなければならないと思いました。ニーズを知って、それに対応していくためには有効です。

しかし、気になったのは、子どもの全体像、生まれてから(妊娠中から)のトータルの人生を見て、どこにどういう問題があるのか、とい視点に欠けると思いました。貧困の連鎖を断ち切る、という覚悟は、単にその時点のニーズに応える、傷に絆創膏を貼るだけでは十分ではないと考えます。

人格形成において、最も重要な乳幼児期に、自立への礎ともいえる養育者とのアタッチメント(愛着関係)が築けていたかどうか、ここにまず焦点を当てなければなりません。人生への歩み出しが幸せなものであるとき、本人の人生を切り開く意思、意欲につながり、全ての原動力になるのです。一人一人の自立に寄り添うことが地域の役割、教育の役割ではないでしょうか。

貧困対策は「予防」、幸せな乳幼児期を親子とも過ごせるように全力で応援する体制作り、自立に向けて、子どもの成長を権利として保障することが最も基本的に大事なことだと考えます。

 

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