大地震発生。そのとき、大田区は?

池上本門寺の主催で3月11日、東日本大震災七回忌の法要に続いて、シンポジウム「大地震発生、そのとき、大田区は?」が開催されました。大地震が発生した時、行政、お寺はどのような役割を果たすのか、市民は備えとして何を心がければよいのか、いろいろな角度から考えることができました。

まず東京都と大田区の被害想定

首都直下地震 東京の被害想定

東京湾北部地震 マグニチュード7.3
死者 東京都9,700人 大田区1,000人
避難生活者 東京都339万人 大田区23万7千人

 

パネリストの言葉を拾ってご紹介いたします。

●池上本門寺総務部執事 酒井智章氏

東京大空襲で本門寺は焼けて貴重な文化遺産をなくした。現在は霊宝殿をつくって後世に残すべき文化遺産を保存している。本殿他、耐震補強工事を行った。広い空間があるので、多くの人が頼ってくることを想定している。本門寺は大田区のちょうど真ん中、避難所になるべく、大田区との防災協定を結ぶ予定。総合病院の医師と話す機会があったが、大田区の60歳以上の人の検診率が低いとのこと、日常から健康を保つこと、非常時にはお薬手帳や検診カードをもっているとよい。災害時のトイレが大きな課題。一人ずつの袋、燃やせるものなど開発されているので、個々人で備えを日ごろから心がけたい。

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パネリストの方々

 

●大田区議会議員 深川幹祐氏

小学校での避難訓練はさまざま。池上第二小学校は、夏休みにお泊り防災訓練があり、5,6年生は泊まり、1年生から4年生は夕方集まるが、簡単な担架を作ることや消火器の扱いも上手。入新井第四小学校は公開授業と町会の避難訓練を合わせて実施することで、多くの人の参加を実現。各家庭での備蓄食料が重要、入れ替えを年に一度日を決めておくとよい。カセットコンロも用意しておくと便利。山形県長井市との防災協定ではバキュームカーの応援。大田区の耐震リフォーム助成・住宅リフォーム助成を活用することをお勧めする。

 

●大田区被災地支援ボランティア調整センター 瀬戸大介氏

東松島市での現場のコーディネーターを経験し、お寺が助け合いの場となっていたのを見てきた。私設避難所ということで、行政からの物資が届きにくい面があったが、食べ物を持ち寄るなどして、助け合うことができた。被災者であっても、支援者になれるように、家具の固定など、日ごろから備えをして、その時がきたら、周りの人を助けられるようにしていきたい。

 

●日本福音ルーテル雪ヶ谷教会牧師 田島靖則氏

東北大学が臨床宗教師という資格制度をつくった。国立大学が宗教を取り入れることは珍しいがそれだけ大災害時の被災者への心のケアが必要だということ。熊本地震の時は、仏教の僧侶とキリスト教の牧師がペアを組んで、「移動傾聴カフェ」を行った。必要な物資を車に積んで、避難所近くにテントを張り、被災者の話を聴く。危機的状況の人には専門的なスキルをもった人の受容と傾聴が必要。まずは、おいしいお茶と全国から届く、お菓子をいただく。地元の宗教者は自分も被災者であるが、被災者が支援者になることには大きな意味がある。避難所では心がささくれがち。思いやり、想像力が大事。

 


キリスト教の牧師も交えてのシンポジウムは興味深いものでした。仏教も神道もキリスト教も一緒に大田区宗教者懇話会という会が2カ月に一度開催されているそうで、田島牧師が代表を務めているそうです。

災害時には多くの人が助け合って、難局を乗り越えなくてはなりません。心の拠り所となる宗教者が大田区では協力関係を築いているということ、広々とした空間をもつ本門寺が防災を考えるシンポジウムを開催してくださったことに大きな安心感を覚えます。

災害を想像することは難しいことですが、日ごろの備えがやはり重要だということを再確認しました。

池上本門寺 菅野日彰貫首さんの言葉、「わが身にあててみる」「すべてのことを自分のこととして考える」ことが今、一番問われていると。福島から避難している人をいじめるなど、あってはならないことだと。

子どもの世界で起きていることは大人がきっとどこかで、モデルになっているということでしょう。何事も他人事ではない、という意識を心して持っていたいものです。

 

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池上本門寺「本殿」