「子どもが不登校になったら」 ~子どもの気持ち・学習・進路~

フリースクールを知っていますか。
フリースクール 東京シューレ”は“子どもの多様な学び、成長を支える”居場所です。

5月7日、大田区産業プラザ(pio)にてNPO法人東京シューレ主催の上記主題の集会が行われました。大田区の小中学校の不登校児童は2015年の調査では514人、子どもたちを支えるためには、どのような環境作りが必要なのか、手掛かりにすべく、興味深く参加しました。

第2部での3人の不登校経験者の話は特に印象的で、不登校を経験したからこそ、自分の道をしっかり見つけて力強い生き方を始めていることに感銘を受けました。不登校=マイナスイメージが払拭され、本当の自立への道筋にとって“学び”とは何かということを考えさせられました。メモを記します。

 

 

 

 

 

 

 

第1部 講演:奥地圭子さん
NPO法人東京シューレ理事長、東京シューレ葛飾中学校長

現在、20万人の子どもが学校と距離をおいて成長している。いじめも不登校も増加傾向である。

「不登校」を個々の子どもの側から考えてみると

・いじめがあって学校に行くのが怖い、不安感
・先生に給食を無理やり食べさせられた、嫌悪感

奥地さんの子どもの場合
転校・いじめ・管理的→身体症状、拒食症
→こんな僕じゃダメなんだ(否定的な存在感)

渡辺位氏との出会い→「ぼくはぼくでよかったんだね」

これまでの日本社会の価値観と対応

学校へ行って当たり前、不登校の子どもは問題児、困った子ども
→治療する、矯正する、癒す

現在の国の動き

「不登校は問題行動ではない」→学校復帰よりも「社会的自立」に向けての支援が大切
→教育機会確保法制定(義務教育の段階における普通教育に相当する教育の機会の確保等に関する法律)→休む必要性・学校以外の学びの重要性

大事なこと

・親が子どもを理解すること
・親の辛さを聴いてくれる人がいること
・不登校していてもだいじょうぶ、という情報があること
・安心できる居場所(家庭、自分のやりたいことができる場所)があること

東京シューレの広がり→子ども中心の学校作り

教育特区制度を使えば市民が学校を創ることができる。
休むことの大切さ、個々の子どものペース・個性を大事にしつつ、学ぶ権利を満たしていく多様な成長支援

不登校の子どもの学習や進路

・人は学びながら成長している。授業を受けるだけが学びではない。
・休養し、充電して、そして心理的な安定がないと勉強には取り組めない。
・学習の主体は子ども。本人の興味、関心、意欲を大切にする環境づくり。
・その子どもに合った学びの内容・方法がある。やりたいことがやれるように協力し、自信にしていく。
・進学も進路も様々な可能性がある。焦る必要はない。“幸せ”になることが大切。

 

第2部 不登校経験者シンポジウム

まゆさん(新宿シューレ高等部。札幌自由が丘学園三和高校4年生。18歳)

小2からいじめで行けなくなった。母親も祖母もとにかく行かせようとして、気持ちを理解してもらえなかった。6年生ではたまに保健室登校。幼稚園受験をして大学まである学校に入ったが辞めて、地元の中学校に行く。高校は中高一貫校に入ったが学力第一主義でついていけなかった。ネイルが好き。学校がいやなら、家にいてもよいのでは。でも人とのつながりは持ちたい。シューレは、ワンフロアーでいろいろなことができ、自分の好きなことを追求できる。大きな家みたいだと思った。音楽が盛んだったのでバンドに参加し、ボーカルを楽しんだ。広い年代の仲間ができたことがよかった。

真陸さん(王子シューレ出身。東洋学園大学卒、大学院をめざして受験勉強中。22歳)

ハーフということでからかわれた。中学では、英語の教科書にボブという名の黒人が出ていたら、みんなからボブと呼ばれるようになり嫌だった。部活(バスケ部)では、顧問の先生からのいじめもある。親は当初わかってくれない。シューレの合宿に参加、不登校の子どもの権利宣言、子どもの権利条約を学ぶ。シューレは“大人に反対する意見”が言えるが、学校では許されなかった。自分のルーツを知りたくて、アフリカに行きたいと思っている。アフリカで人のためになることをしたい。シューレで「オーロラを見たい」といったことから、実際にアラスカにオーロラを見に行ったことがあったが、その経験は大きい。不登校の経験とシューレでの経験によって「とりあえずやってみよう」という気持ちが強くなった。

恵美さん(大田シューレ出身。映像会社(株)創造集団440Hz代表取締役社長。36歳)

公立中学の時、制服も校則も嫌いで、テストありきの勉強も嫌だった。中2の時、急にそれまで仲良しだった子に無視されるようになり、クラスで孤立、学校に行くのがしんどくなった。校則では寒い日にもストーブをつけてはいけないことになっているのに、職員室だけはついている。校則はわけがわからず、学校は生徒が先生に意思を表現してはいけないところ。親子関係はよく、気持ちはよく受け止めてもらえた。シューレに入ってよかったのは、学校にいかなくてもいいんだ、という価値観に出会えたこと。いろいろな年代の人と交われたこと。フィールドワークも多く、興味・関心のあることを探求できるところ。自分も他人も尊重するために、自分は何を感じて、自分は何者なのかを問うてきた。不登校していたからって、マイナスのイメージを引き受けることはまったくない。

 


驚いたのは、彼らが自分の言葉をしっかり持っていて、臆せず表現できること。いきいきとしたチャレンジ精神があることです。不登校を経験して、シューレの学びを通して、かえって自分のことを見つめ、自分の気持ちに素直になることができたからにちがいありません。それはシューレがそれぞれの子どもの存在を受け止め、その子ども本来の力を引き出す環境を創り出しているからなのでしょう。ただ受け身で「先生のいうことに従う、疑問を持たない」という流される子どもであったなら、こんなにしっかり自分の言葉を持ちえないのではないか、とシューレに対する興味が深まりました。

人が自立をするためには、現実社会の中で生きていく力を育くむには・・・不登校が増えているという現実から、私たちは、学校の在り方、教育の在り方を、謙虚に見直さなくてはならないと強く感じるひと時でした。

【ご案内:大田・生活者ネットワーク】
・6月例会
 6月4日 午後1時30分~4時20分
消費者生活センター第2集会室 参加費700円

・7月例会
 7月2日 午後1時30分~4時20分 
消費者生活センター第3集会室 参加費700円