聖フランシスコ子供寮の見学 ~“虐待の連鎖を断ち切る”それだけが願い~ こども笑顔ミーティング 

いつもは「キッズな大森」で座学(?)のこども笑顔ミーティングですが、9月22日はフィールドワーク。久が原にある聖フランシスコ子供寮という児童養護施設の見学に行きました。

 

 

 

 

 

 

 

グループホームの玄関

 

参加者40名。ここには3歳から18歳までの子どもたちが50名暮らしています。異年齢の9つのグループに分かれて、お風呂、トイレ、台所、個室、リビングを持つユニットに分かれて暮らしています。中学生以上は個室。できるだけ普通の家庭のように、大人が身近に食事の準備、洗濯をするのが見られるように生活しているとのこと。毎日10人の職員が泊まっているそうです。ファミリーソーシャルワーカーの宇麼谷さんと副施設長の釘宮シスターにお話を伺いました。

 

 

 

 

 

 

 

釘宮シスター

 

虐待によって引き離されてきた子どもたちが圧倒的に多い。
一番のミッションは子どもたちの心の治療

0歳から18カ月の間に基本的信頼関係が出来上がる。赤ちゃんは羊水の中という天国のようなところから、生まれ出たとたんに恐怖にさらされる。授乳や、おしめを替えてもらうことで保護者がその恐怖から救ってくれる。赤ちゃんはひたすら“安心”を取り入れることによって、社会に対する信頼の基盤を作る。安定した関係性によって“未来は確かだ”と思えると“待つ”ことができる人へ成長する。

もし、母親が常に怖い顔をしていたら?気分に起伏のある人で“確かさ”や“安心感”を感じられなかったら? → 脳が締め付けられ、心身に影響。“成長する機会”を失い、“意欲”を削がれ、社会に対する信頼の基盤がないままに施設に来る。心の土台をどう入れ替えるかは至難の業。優しくされた子どもは人にも優しくできる。虐待を受けた子どもは難しい。

“虐待の連鎖を断ち切る”それだけが願い
“困ったときには助けを求めなさい”という教育

国の流れは養育家庭を増やすこと。しかし養育家庭を支える仕組みがないと難しい。せっかく養育家庭に引き取られても不調で施設に戻ってくる子どもも少なくない。里親支援は重要。支援体制の確立が急がれる。

 

 

 

 

 

 

 

階段途中の飾り

 

自立への道

虐待を受けた子どもほど親を慕う。それは親が心に内在化していないから。内在化していると、子どもは自分自身の道を歩んでいける。そして親を客観的に見ることができ、親を越えていけるようになる。いずれは親を断ち切ることができるように。断ち切っても大丈夫だという“足場”に聖フランシスコ子供寮はなりたい。小学4年生が節目。

 

 

 

 

 

 

 

子どもたちの活けた生け花

 

課題

想像を絶する辛い体験をしてきている子どもたち。ゼロからの出発ではなく、マイナスをまずゼロにしてからの出発。今、心がけていることは1対1の対話をたくさん作ること。どんなに尽くしても心の傷は癒えない。マンパワーがたりない。

 

グループホーム

施設分園型グループホーム。日本の木材を使い、釘を使わない工法。雨水貯留槽があり、災害時には地域の人に使ってもらいたい。

 

自立の家

22歳までいられる。18歳が施設の退所年齢だが、まだ自立も自力で進学することも難しい。せめて4年間、大学や専門学校に安心していけるようにと、住居と食費と学費を修道会が世話している。卒業してからも失敗をして戻ってきて泊まる人もいる。人間には“タメ”が大事。留年した子どもがうまく人生を切り開いていくことがある。失敗しても次にどうするか、考えて立ち止まれる場所が必要。

 

 

 

 

 

 

 

自立の家の礼拝堂の中の天井

 

卒業する子どもたちの言葉
「なんとか頑張れたのは、自分を支えてくれる人がいっぱいいるから。その人たちを悲しませたくない」
「これ以上、めいわくをかけたくないから」

 


 

聖フランシスコ子供寮はシスターたちの献身的な働きで運営されている。
話を聞くたびに、虐待の連鎖を止めなくてはいけない、という思いを強くする。対処療法ではなく、抜本的な解決を求めて動き出さなくては。特別養子縁組制度や養育里親への支援は大事だが、虐待に陥らないような子育て環境をつくることがまず大事。

それにしても自立の家が、アパートとみなされ、多額の固定資産税がかかるということはなんとかならないか。行政の足りないところを補っているのに!

 

 

 

 

 

 

 

自立の家の前で