子どもの本音にむきあいたい ~子どもの貧困問題とソーシャルアクションを問う~

2017年12月19日 10時27分 | カテゴリー: 子ども, 子育て支援, 教育, 貧困

2017年12月16日、東洋大学にて公益社団法人 東京社会福祉士会による子どもの貧困問題とソーシャルアクションに関する講演会が開催されました。
内容をご紹介させていただきます。

 

子どもの本音を聞く

虐待を受けて。当事者の声を聞く Ⅰさんから

虐待によって保護され、2歳から18歳まで児童養護施設で暮らす。ネグレクト、心理的、身体的、経済的虐待。しかしどんなに虐待されても親が好きで、親の元に帰っては苦しむ。6つの施設を渡り歩いたので施設間の格差を知る。心に寄り添って話をよく聞いてくれる職員もいれば、「俺の税金でメシくってんだからいうこと聞けよ」という心無い言葉を浴びせる職員もいる。施設育ちの子どもが18歳退所すると、人とのつながりをつくれない男子はやくざに、お金を得たいと思う女子は風俗の世界に行ってしまいがち。施設の子どもたちはだれかに頼りたいけど、頼れない。傷ついているからエネルギーがない。

 

 

 

 

 

 

 

Ⅰさんのたどってきた道

 

子どもの貧困センター「あすのば」の活動に参加してみて、「自分の意見を言う場」が与えられたことがうれしかった。自分たちは“心のそばにいてくれる人”を求めている。今の日本は、苦しみを知っている人だけが、人の痛みをわかってくれる。

 

 

 

 

 

 

 

施設を18歳で退所した友人のたどった道

 

虐待を受けてきた子どもたちに必要なものは

・だれかに認めてもらえる経験
・愛してもらう経験
・成功体験
・一緒に何かをする体験


Ⅰさんの経験談をお聞きして、自分の責任ではないのに理不尽な人生を歩まざるを得ないことの辛さを垣間見ることができました。パワポの資料にあるようにⅠさんは成績優秀、運動神経もよく、カヌー競技に関心を持ち、自らの情熱で師を得たにも関わらず、競技のリスクから親の協力がなければできないといわれて断念したとのこと。つまり若くて才能があっても、夢を追求することが許されない境遇だということなのです。どのようにその苦しさを乗り越えることができたのか、その心の軌跡まではわかりませんが、話をよく聞いてくれた施設の職員の存在が救いになったこと、自分をちゃんと認めてくれる大人の存在の重要性を教えられました。
しかし同時に“子どもの権利”の視点において私たちは大きな課題を持っていると自覚しなければならないのです。

以下は、支援のあり方についての森田先生からの提言です。

子どもの貧困を断ち切るための支援に求められること

森田明美さん(東洋大学社会学部教授・社会貢献センター長・NPO法人こども福祉研究所理事長)

なぜ子どもを貧困から救わねばならないか━貧困は子どもの責任ではない
1、子どもの貧困は子どもの希望を奪う
2、 子どもの希望は子どもが頑張る(生きる、努力する)支えである

子どもの声が届きにくい
1、子どもの話は聴いてもらえない
2、聴く場や(聴く力のある)人がいない
3、子どもが声を出す場がない

子どもの貧困を断ち切るための支援に求められること
1、支援の目的:「恩恵を受ける」から「主体的に生きる」に変わる意欲を支え、暮らしを取り戻し、市民として生きる機会をつくる
・発見する相談:だれもが利用できる場
・「支援臭のない」専門的な力を持つ支援者

2、内容:重層的・総合的・継続的支援→ひきとる行政部局、普遍・固有的支援の連携・市民との協働
 
3、方法:意味ある大人との出会い→対話の成立→自己肯定感の向上→生きていていい→市民力

 

 

 

 

 

 

 

森田先生

 


子どもの貧困問題は、なかなか解決の糸口が見えないままです。森田先生の提示された「支援のあり方」は、支援する側の人間力が問われるものであり、子どもを人として重んじ、支援者自身が自分を律し、そのうえで、「目標や方向性」を持つこと、共生こそが解決への正しい道のりであると示唆するものでした。

子どもは支援の対象でありながら、応答関係をちゃんと成立させること、子どもの話を聞きながら社会を創っていくこと、ニーズ対応型ではなく、子どもの権利型の支援に移行するべき、との森田先生の提言は、実際に虐待を受けて施設で過ごした青年の体験談からもまさにそうだと思えた講座でした。“意味ある大人”をめざしていきたいものです。