新しい美術館のあり方 すみだ北斎美術館

地域へ、世界へと北斎に関する情報を発信し、成長し続ける美術館

⇒すみだ北斎美術館 HP

地域産業委員会で視察に行ってきたので、ご報告です。
世界的な芸術家、浮世絵で有名な葛飾北斎は本所割下水(現在の墨田区亀沢)付近で生まれ、90年の生涯をほとんど区内で過ごされたそうです。ちょうど美術館のあるあたりです。

隅田川や両国橋を描いた作品が多いですものね。墨田区はこの地域の誇る北斎を世界に、地域に発信するために美術館を作りましたが、とてもその思いのつまった印象的な美術館でした。しかも親しみやすく、また訪れたくなるような美術館です! いくつか特徴をご紹介しますね。

 

建物の魅力

公園の中にある美術館は銀色に輝く地上4階、地下1階の斬新な建物です。「街に開き、地域住民の方々に親しまれる美術館」というコンセプトの通り、気軽に訪れることができるように4方向からの入口。明るく開放的な設計です。建築設計は、(株)妹島和世建築設計事務所。プロポーザルで、176件の応募の中から選ばれたそうです。

 

 

 

 

 

 

 

全景

平成28年11月にオープンしてもう来館者が49万人。予想の20万人を大きく上回っているそうです。海外からのお客さんが1割。北斎の魅力はもちろんのこと、建築を見に来る人も多いそうです。

 

 

 

 

 

 

 

入口

 

美術館を支えるコレクション

特筆すべきは、ピーター・モースコレクション。世界有数の北斎の研究家であり、収集家のモース。有名な冨嶽三十六景など、その作品群の質の高さには世界が注目していました。モース氏の急逝後、そのコレクションが散逸するのを惜しまれたご遺族から墨田区が取得したのです。総数600点。

 

ふるさと納税(クラウドファンディング)で寄付
すみだ北斎美術館プロジェクト “自分たちの美術館”という意識へ

美術館建設の計画は平成元年からでしたが、バブルがはじけて、一時凍結。スカイツリーができる、というチャンスにまた挑戦。しかし建設には賛否両論あり、財政負担への影響を最小限にするために開館前に5億円の寄付を集めることを目標にしたそうです。

 

 

 

 

 

 

展示室前ホール

 

北斎の魅力を行政職員全員が共有し、区民への発信。共感の輪をひろげながら“みんなの美術館”自分の美術館“という機運を醸成。美術館関連特典寄付では、共同創設者ということで、1口1000万円の寄付をしてくれた企業には、パンフレットや広報時、また管内銘板に社名を掲載。1口10万円だと館内銘板に名前掲載と一日館長、5年間の無料パスポートをもらえる、1年間500万円の展示室に企業ロゴを掲示するなどのネーミングライツなど。ふるさと納税「すみだモダン」では墨田区特産の返礼品を選ぶ寄付も行い、両方でこの1月までに総額9億円近く集まっているということですから、“楽しい寄付”の仕組みが功を成しているようです。

 

企画展「Hokusai Beauty」華やぐ江戸の女たち 4月8日まで

施設整備方針には「常に新しい北斎像をわかりやすく紹介し、集客に結び付く斬新な企画を提供する」とありますが、小紋の柄を選んで着物と帯の組み合わせを楽しむことのできるアプリがあるなど、体験的な楽しみも提供されています。北斎は小紋柄をたくさん創作されたそうです。この企画展に着物で行くと2割引になるというのもおもしろいですね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

企画展の入口

 

 

 

 

 

 

 

北斎の絵が着物に

 


さて、大田区も洗足池に勝海舟記念館を作ろうとしています。親しみやすく、たびたび訪れたくなるようなところにしたいですね。