『貧困と精神医療』講演会のご報告 講師:越智祥太医師(ことぶき共同診療所 精神科医)

4月27日、神奈川県司法書士会にて「反貧困ネットワーク神奈川」主催の学習会がありました。越智先生(ことぶき共同診療所 精神科医)とは蒲田と大森の野宿者への声掛け夜回りをご一緒させていただいたことがあり、先生のだれに対しても分け隔てしない優しさ、平等感、だれに対しても敬意をもったまなざしをもって接していらっしゃる姿には感銘を受けました。先生の長い診療経験と野宿者との対応から見えてきた問題提起をお聞きしました。社会のひずみ、そしてあらゆるところで起きている「分断」に私たちはもっと敏感であるべきで、そしてそれをなくすために行動するべきだと教えられたのでした。以下、講義メモです。

 

 

 

 

 

 

 

講師の越智先生

 

 

 

 

 

 

表題

 

野宿者には精神疾患の人が多いか?

そうではない。多いのは、失職したばかりの人、と失職が長くなった人。精神・知的・認知障碍が疑われる人もいるが、リーマンショック以来、非正規労働者が解雇され、野宿や福祉相談に至ることが増えた。
失職⇒失居⇒野宿⇒(無料低額宿泊施設)⇒野宿⇒判断力低下、精神疾患

つまり貧困から精神疾患に至る。個人的な問題ではなく、多くは「貧困」を生む社会問題に起因している

 

貧困は新自由主義で社会保障を削った「政治責任」

貧困不安が健康を害し、社会を損なう。自殺は男性が多く、失業・企業倒産との相関がある。
社会保障を充実させた北欧・カナダはアルコール・うつ・慢性ストレス下がっている。社会保障を削減したギリシア・イタリア・スペインは心疾患が増えた。社会的不安の影響大きい。社会保障を充実させ、「不安」と「ストレス」「緊張状態」のない、ゆとりある社会を。
生活保護費の削減 毎年160億 ますますゆとりがなくなる。
普遍主義に基づく貧困予防的な社会保障制度。教育投資が必要。
生きづらさを感じる社会:社会的に模範的な生き方が望まれる社会。

 

世間的に逸脱すると、すぐに「精神疾患」「発達障害」とみる現代。適切な支援ができなくなる恐れ

そもそも教育を十分に受けてこなかった人もいるし、不器用な人、ぎこちない人、リーマンショック以来、病名のつけようのない人が増えた。しかし病名がないと支援が受けられない。複雑な要素が認められない。その人に合った支援で生活が立て直されるようにすべき。

例:日本人の父、外国人母。離婚して母子家庭。母親の長時間労働で子どもが一人で留守番。不安で落ち着かなくなる。スクールカウンセラーは、発達障害とみなして母親に学校に一日ついているようにいう。子どもは親が学校にいることを嫌がり、親子関係悪化。母は精神科へ通うことに。結果、昼間の仕事ができなくなり、夜勤に替わる。子どもは児相に送致。母が怒って学校のガラスを割る。母、措置入院。施設に入った子ども、“安定した環境なら普通の子どもである”ことがわかる。校長など関わった人はみんな移動で責任をとる人はいない。

例:貧しい青年。受け身で自分がない。ブラック企業で給料未払い。疲れ果てて自殺未遂。越智先生が労働組合に紹介すると、徐々に自分の意見をいえるようになる。今はいきいきと働いている。

 

精神病院医療の問題

世界では脱施設が進むが、日本には世界の病床の5分の1の病床数。拘束、隔離の収容主義は人権の点からも問題。

 

つながりが貧困者を支え、貧困化を防ぐ

例:自棄抑うつ的だった元職人野宿者、市民に猫の世話の仕事をもらい、みるみる元気になった。人とのつながり、自分の役割があることが生きる力に。

普通におしゃべりをすることで、認知がよくなったり、労働組合につなげることで解決したり、市民が作ってくれた仕事で元気になったり、その人に合った支援がある。

カナダ・バンクーバー
地域に人が集いやすいコミュニティーセンターがたくさんある。しかもそれぞれ特色があり、自分に合ったところに選んで行ける。薬物依存の人・・・


 

【これからのこと】

平等な世界を求める新たな社会運動のうねりを起こしたい。声を上げられない人の分も。
自己決定を支える支援、存在を支える支援が必要。

【夜回りの参加案内】

毎月第2・第4火曜日の20時半、JR蒲田の西口を降りたガラス扉前で集合