生きる力を充電できる場に! 児童館に中高生ひろば 付帯設備も無償化にすべき

だれでも気軽に利用できるように
児童館の「中高生ひろば」は付帯設備も無償化にすべき

6月25日、第2回大田区議会定例会が終りました。気になった議案の一つは「大田区児童館条例の一部を改正する条例」でした。はじめて行政が児童館の中に「中高生ひろば」を置きこむものですが、付帯するスタジオは2時間借りるのに300円、楽器は2,000円以下の賃料が派生するというのです。

せっかく事業が開始されても有料では中高生たちの中には戸惑う人もいるのではないでしょうか。だれでも気軽に利用することのできる「ひろば」にしていただきたいと考え、反対しました。
以下、討論原稿です。


第56号議案「大田区児童館条例の一部を改正する条例」について反対の立場から討論いたします。
この条例は東糀谷児童館羽田分室において中高生ひろば事業を行うために改正するものです。これまで課題であった中高生の居場所が整備されるということには期待いたしますが、居場所としての機能を考えるとき、音楽スタジオにも楽器を借りるのにも料金がかかることには賛成できません。民間の貸しスタジオとは全く意味合いが違い、スタジオや楽器は、一つのきっかけであって、たとえば学校にも家庭にも居場所がないとしても心安く集える居場所になることを目指しているのではないでしょうか。

大田区は平成28年に「大田区子どもの実態調査」と「ひとり親家庭の生活実態に関する調査」を実施しましたが、その結果21%が生活困難層に該当するとしています。その生活困難層のうち、暮らしの状況を「苦しい」と応えている割合が80%です。経済的に厳しい家庭もあるのです。平成29年の児童扶養手当受給者数3696人で、ここから一人親世帯数が推測されますが、ひとり親世帯の5割が貧困、国民生活基礎調査によると手取り所得の平均が年間220万円です。なぜ生活実態調査までした大田区が貴重な子どもの居場所でお金をとるのでしょうか。大田区以外の22区では児童館利用に係る費用は無料だと聞いています。社会的包摂といいながら、社会的疎外を生み出しかねない施策をとるべきではないと考えます。敷居を低くして、全ての子どもたちに開かれた児童館であるべきです。

これは小学生の事例ではありますが、区内のある児童館の館長さんからお聞きした話です。児童館で乱暴な振る舞いがみられる児童に、よくよく話を聞いてみると「学校が苦しい、勉強がわからない」というのだそうです。その母親とも面談をすると実は生活がかなり厳しいということもわかったそうです。学校でもない家でもない児童館だからこそ、子どものSOSをキャッチできるのかもしれません。

以前品川区の中高生専門館を訪問した時は本格的なスタジオが4つもあり、そこで多くのバンドが練習をし、近くの商店街のお祭りには高校生たちが出演し、司会までやっているという話を聞きました。中高生も共に地域を盛り上げる、地域を作っていく仲間になっていく、そのつなぎを果たしている児童館職員の意気込みに感銘を受けました。あふれるエネルギーをぶつけるには音楽は有効だと考えます。しかしスタジオがあればよいということではなく、子どもたちが喜んで集う居場所になるために、地域性やそこで暮らす子どもたちのニーズは何か、分析する中で子どもたちと一緒に児童館を創り上げていっていただきたいと思います。

 

今、不登校生徒や高校中退者も増え続けています。児童館の果たす役割の重要性は増し、職員の資質、感受性や包容力、そして学校や他の機関との橋渡しをするコーディネート力なども求められるのではないでしょうか。児童館が子どもたちに寄り添い、子どもが生きる力を充電できる場所として等しく利用できることが重要です。以上のことから、この条例の改正には反対いたします。