児童虐待の予防について ー大田区議会一般質問報告ー

2018年12月7日 22時55分 | カテゴリー: 子育て支援, 議会報告

大田区議会で児童虐待の予防について質問に立ちました。

以下に動画と答弁の内容を含めた質問内容をご紹介いたします。

 

 

先日、虐待を受けて育った方々の話を聞く会がありました。ある青年は5歳の頃、両親が離婚し3歳の弟といっしょに父に引き取られ、身体的な虐待を受け続けました。殴る、蹴るは当たり前、弟は殴られて風呂に沈められて命を落としたそうです。やがて、父の再婚相手からも虐待を受け、なぐる、蹴るの他にアイロンを押しつけられたり、冬に裸で外に出されたそうです。そのせいか暴力的な性格になり、転校が多かったので学校では友だちはできませんでしたが、ふとしたことで自分の家とよその家との違いに気が付き、(なぜこんな家に生まれたのか)、と自暴自棄になって6年生で自殺を図ったこともあるそうです。それでも親に認められたくてテストを頑張れば認められると考え、努力をし、100点をとりましたが、無視をされたそうです。ご飯を作ってもらえないので万引きをし、中学では不登校と非行。警察に補導されて、一時保護所に連れていかれますが、家にもどされそうになるので、帰りたくないと訴えたそうですが、家に戻されるということが、中2まで繰り返され、とうとう何回目かに「家に帰すなら人殺しをしてきます」、といってやっと児童養護施設に入れてもらえたそうです。現在は、人間関係を作りにくい、金銭感覚がないなど、生きづらさを抱えているとのことです。

また母親の再婚相手から性的虐待を受け続けた女性は、大人になった今、自己肯定感がなく、生きていく価値を見出せず、自信がない、ずっと抑圧されていたことから心の中の「怒りのコップ」が常に満タンでちょっとのことですぐ怒ってしまうそうです。男性への敵視や蔑視はあるものの、寂しさから結婚をして、子どもを儲けたものの常に自分の子どもに虐待をしそうになるなど、生きづらさを抱えているとの話でした。

彼らに【子どもの頃、どうしてほしかったか】と聞きました。
すると自分の家が特別で、虐待のある家だと気づいたのは、中学生になってからなので、もっと早く子どもに「虐待」というものの存在、それが間違っていることだと知らせてほしかった。助けを求める手立てを作るようにしてほしい、まわりの大人にはできるだけ声をかけてほしいと話されていました。なるほど、その家庭しか知らずに育てば、子どもは家とはこういうものだと思って諦めてしまうかもしません。この時の報告でもう一つ知ったことは、虐待をしているという自覚がなく、しつけだと思いこみ、子どもの意見など聞く必要がないと考えている親もいるということです。子どもにも人権がある、という「人権意識」を文化として根付かせる必要性を感じました。

また性的虐待は精神の殺人といわれるほど、生涯にわたるダメージを残し、しかも身内からの被害が多く、だまっていろ、と言われることもあるので、なかなか発見されません。

貴重な当事者の言葉から必要な施策を考えたいと思います。

 

子ども自身が“自分の守られるべき人権”を自覚できるように

1.お聞きします。虐待を受けている子どもはよその家と比較ができないので、虐待を受けていることを訴えることができない可能性があります。そこでできるだけ早いうち、幼稚園・保育園の年長、あるいは小学校の低学年のうちから、守られるべき人権についての学習と同時に、自分の体の大切さ、プライベートゾーンは人には触らせてはならないなど、自分が人権侵害を受けていたら、それに気がつくような教育をするべきだと考えますが、いかがですか。

答弁:
幼児及び小学生低学年を対象とした人権教育の必要性についてのお尋ねです。
守られる人権の学習については、園や学校でのあらゆる機会を捉えて行うべきこと であります。例えば、毎日の集団生活の中で、けんかやトラブルになることがあります。いやなことをされたり、乱暴されたりしたとき、「やめて!」と直接相手に言葉で伝える、解決しなければ、先生や他の大人に助けを求めるなどの行動ができるよう指導しております。
しかしながら、実態としては、園や小学校低学年の子ども自身が自分の親から虐待を受けていることを訴えることは、難しいケースが少なくないと考えます。
今後も、教育総務部とこども家庭部と連携しながら、子どもの人権教育について取り組んでまいります。

 

保護者への子どもの人権についての啓発

2.これから親になる人が、子どもにも人格があり、その意志や意見を尊重すべきだという認識を持つことはひじょうに大事です。現在、大田区においては母子手帳に児童憲章が掲載されていますが、児童憲章は「大人による保護」という側面が強いのに対して、子どもの権利条約は「子どもも社会の構成員として意志や意見が尊重される」という「権利を有する人」という側面が明確にされています。子どもであっても固有の人格があり、尊重されるべき存在であるという、人権尊重の精神を表すことは、生まれてくる子どもにとっても素晴らしいプレゼントになるのではないでしょうか。近隣の区でも小学生の声で掲載が復活した母子手帳に「子どもの権利条約」の条文を載せることはできませんか。

答弁:
母子健康保健手帳に「子どもの権利条約」を掲載するご提案についてのご質問ですが、現在、母子健康手帳には、日本国憲法の精神に従い、すべての児童の幸福をはかる権利宣言とした「児童憲章」を掲載しております。この児童憲章は、その実現のための社会の義務と責任を明確にし、日本の児童福祉の基本理念をなしています。
一方、議員ご提案の、子どもの権利条約は子どもが保護を受ける立場から、権利を主体的に行使する立場へと変え、子どもたちの意見を聞き物事を決めていくことを主軸とする内容となっています。どちらも子どもの健やかな成長を保障することをめざしている点で共通しております。
区は、これまで多様な手法を通じて人権意識の啓発に努めてまいりました。区の公式ホームページで子どもの権利条約を解説している中で、子どもにとって最も大切な4つの権利として、生きる権利、育つ権利、守られる権利、参加する権利を紹介しています。また、子どもの人権に特化したものではございませんが、小学5年生を対象として配布している人権啓発冊子「大切なこと」では、区別と差別、男女、高齢者、障がい者など、さまざまな人権問題を4コママンガを使いながら、わかりやすく解説しています。
今後、この子どもの権利条約の当事者である子どもや保護者に効果的に伝える方法 なども含め、関係部局と連携し、工夫してまいります。

 

こども自身が逃げ込む場所

2016年、相模原市の児童相談所に家庭での虐待から保護してほしいと訴えたにも関わらず、保護してもらえず、中学2年生が自殺した事件がありましたが、区内には子どもが虐待から逃げたいと思った時に、逃げ込める場所はあるでしょうか。私は、今ある4つの子ども家庭支援センターが24時間、365日、子どもを保護する機能を持つべきではないか、場合によってはシェルターと連携をとることも必要ではないかと考えます。子どもが虐待だと知って、助けを求めた場合、その受け皿ができるだけ近いところにあることとその周知、虐待を未然に防ぐための力も地域が持つことができるようにすべきではないかと考えます。

3.お聞きします。
大田区においては、虐待の相談件数は年々増えています。現在、区内において虐待を受けた子どもが自覚し家から逃げた場合、安心して助けを求め、逃げ込める場所はありますか。

答弁:
虐待を受けた子どもの逃げ場所についての御質問にお答えします。
平成29年度に子ども家庭支援センターに寄せられた児童虐待に関する相談は、952件と年々増加しており、様々な状況を想定した児童虐待への対処方法を事前に検討しておくことが重要となっております。
虐待を受けた子どもが、自ら助けを求める際の受け皿として、現在考えられるのは、子ども家庭支援センター、児童相談所、警察署や交番などでございます。これら関係機関に子どもが助けを求めてきた際には、関係機関から児童相談所に送致し、送致を受けた児童相談所は子どもを一時保護所で保護しながら、児童養護施設への入所等も含めた処遇の決定を行っています。
子ども家庭支援センターでは、児童相談所、学校、幼稚園、保育園、警察等の関係機関から構成される要保護児童対策地域協議会の場などを活用し、子どもが助けを求めに来た 場合など、不測の事態が発生した場合の手順を繰り返し確認し、迅速に対処できるよう努めているところでございます。
また、区では、万一の際に子供たちが自ら助けを求めることができるよう、関係機関の連絡先を知らせるためにパンフレットや周知啓発グッズなどを、機会あるごとに配布しております。特に、子どもが身の回りのことを自分でできるようになる年齢と言われている小学校第3学年の区立小学校全児童を対象に、子ども家庭支援センターの電話番号を明記したクリアファイルの配布を行い、周知を強化しているところでございます。
今後、子ども自身が子どもの権利に対する理解を深める中で、自ら助けを求めるケースも想定されることから、万全の対応を図ることができるよう、なお一層、関係機関との連携を深めてまいります。

 

虐待に陥らないように親を支えること。
ファミリーサポート制度の拡大で乳幼児のショートステイシステムを!

大田区は児童相談所を開設しようとしていますが、同時に虐待を予防する体制を強化する必要があります。大田区では保護者の傷病や育児不安、出産など、子どもの養育が困難なときに、児童福祉施設で一時的に2歳から15歳を対象とした児童を養育するショートステイ・トワイライトステイ・休日デイサービス事業を行っております。年々利用者が増えており、ショートステイにおいては、2015年487人の利用が2017年には806人と大幅な伸びがあり需要が高いことがわかります。

ショートステイ・トワイライトステイ等を利用することで乗り越えられる局面があることを思うとき、もっとも虐待の多い2歳未満にも支援の手を伸ばすことができないでしょうか。

明石市は1回7日以内のショートステイもトワイライトステイも0歳から受け入れており、ショートステイにおいては児童福祉施設以外にも登録里親家庭もこの事業に協力しています。また母子家庭や父子家庭は安価で利用できるように配慮がなされています。中野区ではファミリサポート会員に呼びかけ、このショートステイ協力会員を増やしていると聞きましたが、中野区の場合は3歳から17歳までの子どもを1回につき3日以内、渋谷区は2歳から12歳までの子どもをやはりショートステイ協力家庭が6泊7日以内、江東区は1歳から中学3年生まで1回につき6泊7日まで預かるシステムを作っています。

大田区のおこなっているファミリーサポートシステムは大変すぐれた仕組みです。しっかりした研修制度をもち、会員登録制で、提供会員が4か月から12歳までの子どもを対象に自宅で預かる制度ですが、保育園の送り迎えや仕事が遅くなってしまう人の場合、夕飯まで預かってもらうこともあります。子育ての先輩から、多くの励ましももらいながらの家庭的な育児サポートの仕組みです。切れ目のない子育て支援というなかで、2歳以下のショートステイがないことを埋めるために、ファミリーサポートのお泊り版、ショートステイを創設することはできませんか。

4.お聞きします。子どもには家庭的なぬくもりが必要です。児童福祉法が改正になり、今後、社会的養護においては、家庭的養護を増やしていくという方向性が打ち出されています。里親への予備軍としてもファミリーサポートシステムの機能を拡大して、「ショートステイ協力家庭」を募り、家庭を支えるための重層的なサポート体制を構築することはできませんか。児童相談所の登録里親とも連携をとれないでしょうか。

答弁:
ファミリーサポート事業の充実に関する御質問ですが、本区の、宿泊を伴う子どもの一時預かり事業としては、ショートステイ事業があり、保護者の傷病、育児不安、出産、看護、介護、冠婚葬祭、出張等の理由で児童の養育が一時的に困難を生じた場合に、区内2か所の児童福祉施設において児童を預かるもので、対象を2歳から中学生までの児童としております。
ショートステイ事業の延べ利用者数は、大きく増加しており、頼る相手が少なく、仕事と育児の両立に悩むひとり親家庭をはじめとした家庭への養育支援として大変重要な事業となっていると認識しております。
また、ファミリーサポート事業は、育児の手伝いをしてほしい方と育児の手伝いをしたい方を引き合わせ、育児支援に結びつける事業で、活動内容は、保育園の送迎及び預かり、学校の放課後、学童保育終了後の預かり等で、対象となる児童の年齢は、生後4か月以上から概ね12歳までとしております。
議員のお話のとおり、国は、虐待や何らかの事情で実の親が育てられない子ども等の社会的養育においては、施設から里親等の在宅での支援に軸足を移す「新しい社会的養育ビジョン」を平成29年に公表しております。
乳幼児を含めた宿泊を伴う一時預かりについてもファミリーサポート事業や里親等の活用が可能となれば、保護者への子育て支援となるだけではなく、子どもにとっても家庭的な環境の中で生活できるメリットがございます。
しかしながら、協力家庭での、宿泊を伴う一時預かりについては、万一の場合の責任の問題や、特に、対象を乳幼児に拡大した場合には、夜間の授乳や乳幼児突然死症候群の予防等、様々な課題がございます。 区としては、国・都の動向なども含め、その実現可能性について研究してまいります。

 

虐待する親への回復プログラム

虐待を受けてもほとんどの子どもたちは実親を慕い、強い愛情を持っているものです。虐待した親の回復校正支援がいかに重要かがわかります。虐待をしてしまう親自身が虐待を受けてきた過去があり、自分の気持ちをコントロールできなかったり、情緒不安定だったりする場合があります。またうつなど精神疾患を患っている場合もあるでしょう。そのような場合、親自身が癒されないと根本的な解決にはいたりません。子ども家庭支援センターには、カウンセリングや傾聴、自己回復プログラムなど自分で課題解決ができるような支援、家族関係の修復的支援の導入、研究を望みます。また地域においては、多くの区民が人の心に寄り添う聞き方、傾聴を学び、家族間でも地域の中でも共感的な会話の中で、心が軽くなったり、癒されたりする体験をすることも重要です。

 

虐待予防は育児の安定性とゆとりから

育児の安定性とゆとりがなにより虐待の予防になると考えます。その観点からは、一時保育の低料金化と拡充で育児を日常的にサポートすることが重要です。母子家庭や父子家庭など休む暇なく働いている人や保育園に入れず、収入が減り、昼間は子育てがあるので、夜仕事に出掛けている人など、疲れ切った中での子育てには余裕がなくなります。
また家族の時間を奪う長時間労働や男性の育児参加が少ないことなども母親の過労やストレスが精神の安定を欠くことに繋がります。育休取得や生活時間に配慮した労働時間は子どもの権利の視点で考えられるべきです。

他にも不安定雇用と低収入という中での経済的ストレス、関連して劣悪な狭い住居、孤立した育児で、子育てのロールモデルがないこと、子どもの障害に対しての不安など育児の安定性とゆとりを奪う要因が、少なくない社会とはいえないでしょうか。

 

虐待はさまざまな要因から、全庁的に人権擁護の心配りを

厚生労働省の2015年の児童虐待による死亡事件のうち3分の1が心中です。心中以外の虐待死の4割以上が0歳で亡くなっています。行き詰って母親が子どもを殺してしまうケースもあるのです。性や出産に関する知識がないままに妊娠し、だれにも相談できずに出産してしまうなど、妊娠や出産への援助や学校教育の中での性教育なども問われます。こう考えると虐待問題は子育て施策にとどまらず、学校教育、母子保健、労働問題、住宅問題、まちづくり、地域振興、産業振興、もちろん社会保障のあり方、生活に関わる全てが虐待に繋がっているといえないでしょうか。

虐待は子どもの権利が著しくはく奪されることですが、そこに至るまでの親自身の権利は守られていたかという視点も必要だと考えます。虐待は世代間にまたがる長い複雑な問題をはらみ、個人の力ではどうしようもなかった側面もあると考えます。しかし連鎖はなんとか断ち切らなくてはなりません。どの時点でどういう公的支援が届いていなかったのか、相談をしようと思った親に対して行政窓口は親切に対応できていたか、全ての部署がそれぞれに真摯に検証、分析し、人権の視点から行政施策、社会インフラの整備をめざす、人権尊重都市、大田であってほしいと願います。