日本保育学会 第72回大会から 講演「子どもが人として大切にされる保育」

日本保育学会 第72回大会から

講演「子どもが人として大切にされる保育」

講演者:西野博之さん

認定NPO法人フリースペースたまりば理事長、川崎市子ども夢パーク所長、フリースペースえん代表)

33年間の不登校児童生徒との関わりの実践の中から獲得した“子どもの生きる力を信じること”の重要性。そして子どもの権利条例制定に関わる中で、大人の在り方を問い続けてきた西野さんの言葉の重みをかみしめるひとときでした。

 

子どもをめぐる現状・どれも過去最高

・虐待相談件数 13万件越え(前年12万2578→13万3778) 2017年
・不登校(小中学校)   14万4031人
中学校では30人に1人。 ひきこもり100万人を越える
・小学生の暴力行為 2万8315件(5,474件増加)
小中高では6万3325件
対教師13.7%、器物破損17.0%、生徒間暴力67.3%
・小中高のいじめ 41万4378件(前年32万3808件) 2018年10月・文科省
小学校 31万7121件(33.7%増) 重大事態474件
小学2年生が最多(小中のなかで)
・小中高の自死 1年に369人(増)
子どもの自死(19歳以下) 1年に599人(増)
大学・専修学校生を合わせると 1年間に812人
15歳~39歳、各年代における死因の第1位は自死

 

どうして子ども同士が傷つけあうのか

・背景に貧困・ネグレクト・過干渉
・貧困の状況(実際に出会った子どもたち)
炊飯器をもっていない・布団がない(押し入れで雑誌を広げて寝ている)
食べていない(1日1食の子ども)・医療にかかれない(虫歯だらけ)・・・
 →大人はアンテナを張ること

 

自己肯定感の低い子ども

・自分はバカだ、ダメだ、
・どこにも本音を出さない子ども
親や友だちに気を使って生きている
→メンタル面の不調を訴える子どもが増えている
・子ども専門の精神科医が少なく、薬を過剰に飲まされている子どもがいる。
→セカンドオピニオンが必要。

 

子どもの自信を奪う大人の不安

・子どもに失敗やけがをさせたらかわいそう
→親が先回りして「失敗」を未然に防止
・私の子育て、このままでいいの
→正しい親にみられたい、子どもの評価が親の評価に結びつく

・早期教育全盛
リスクを回避するために、手遅れにならないようにと、早くから習い事
かけっこ家庭教師、逆上がり家庭教師
小学生の履く運動靴、みんな「駿足」、運動会のコーナーを回りやすい設計
・子どものボーっとする時間を奪う
・子どもの命に寄り添うのではなく、お客のニーズに合わせた経済優先主義
・大人の作りだしたプログラムに合わせた生活で、子どもは幸せか
・完璧さ、正しさを求めすぎる家庭、余裕のない家庭
これぐらいできて当たり前、こんなこともできないの
→弱音が吐けない家庭環境、辛い感情を外に出せない
→怒りが蓄積
→暴力・いじめを生み出す
・子どもの思いが置き去りにされて、保護者のニーズだけが優先されていないか

保育の役割は、親の不安を鎮めること
幼稚園・保育園は最先端で子どものSOSをキャッチする場所

 

川崎市、子どもの権利条約を活かしたまちづくりへ

・子どもを権利の主体である一人の人間として尊重する
・子どもと大人は社会のパートナーとして位置づけた
・川崎夢パーク、年間9万人の利用者、16年間で100万人を越えた

 

川崎市夢パーク

 

・ストレスの発散、やってみたいことに挑戦する、自由な発想で自由に遊ぶ
・けがと弁当は自分持ち→危ないことを察知する力が育つ
・公園管理にはリスクとハザード(見えない危険)
ハザードは取り除く(チェックシートを持って毎日点検)
例:土の中で柱が腐っている、釘が出ている
・子ども自身が遊びと暮らしの主体となる、消費者ではなく生産者
・道具と火を使う→人類は火と道具を使って成長・発達してきた
・子どものSOSをキャッチする(助けてと言えない子どもの言葉にならない声も)
→安心して悩みを話せるのは、信頼できる大人。スクールカウンセラーとは限らない。

 

 

 

 

 

 

 

川崎夢パーク、子どもたちが自分たちでかまどを作り、火をつけて好きなものを焼いて食べている

 

外遊びの大切さ

・室内は快適な環境が作られている
・風を感じ、陽を浴びて大気に触れて遊ぶことの大切さ
・不快さに出会う機会の必要性→人間の適応機能をつくる
・遊ぶことは生きることそのもの
息をするように、食事をとるように、遊ぶことを通して心と体の栄養を吸収
・AI(人工知能)が人間の知能を越える
→遊びは非認知能力、感情のコントロール、意欲
安心して失敗できる環境→失敗を重ねながらそれを乗り越える力を育む

 

不登校

・過度に恐れることはない。学校に行かない理由は本人にもわからないことが多い。
・休むことも必要。その子どもにとって、必要な時間。「だいじょうぶ」だと伝える。
・教育機会確保法→学校以外の学びを国が積極的に応援。必要な情報の提供。
・フリースペースえん:不登校児童生徒の権利保障をめざしてつくられた公設民営のフリースペース。カリキュラムに縛られずにゆったりとすごす。何にもしなくてよい。カオス。
・子どもの力を信じて、子どもが自ら伸びていこうとすることを邪魔しない。
・関係性の貧困、文化的な貧困→家族以外の人との出会い

 

親にできることは、子どもの話を聴くことと「クウネルダス」だけ

・子どもの話を聴く→子ども自身が自分の心に向き合えるようになる。
・ウソか本当か、正しいか正しくないか、ではなく「言葉にならない」言葉を受けとめる。
・子どもの怒りの感情を理解する。保護者自身が豊かな言葉を持つこと。気持ちを表現する言葉を。「きっとだいじょうぶ」(魔法の言葉)を届ける。
・親の役割は「食べられているか・眠れるか・うんちがでるか」(クウネルダス)だけ。

 

日々の研修と職員の役割

・自分のものさしを疑う、自分の問題か相手の問題か。境界線の混乱に気づく。
・「生まれてくれてありがとう」「あなたがいてくれて幸せだよ」「存在」を根付かせる。

 

自立とは

・自立とは一人で何でもできることではない。「助けて」と言えること。
・適度に人に依存できること。自立と孤立とは違う。

 

 

 

 

 

 

 

同じ東洋英和女学院短大の保育科を(かなり前に)卒業した仲間と偶然会いました

 

 

 

 

 

 

それぞれ、幼稚園園長や主幹、短大保育科の講師だったり、と保育の道を歩んでいます