日本保育学会 第72回大会に参加して  会場:大妻女子大学 5月4日・5日

2019年5月6日 22時56分 | カテゴリー: 子ども, 子育て支援

研究発表と講演会、自主シンポジウムなど合わせて1000件にも上るという、大規模な学会が2日間に渡って行われました。全国から集まった保育者や研究者が「保育の質」「支援の在り方」について共に考えました。大きな社会変化の中にあって子どもにしっかり向き合う視点を確かなものにする学びは常に必要であると改めて思いました。

2つの企画から報告いたします。

 

 

 

 

 

 

 

会場の大妻女子大学の前で

 

 

子どもの権利は守られているか

シンポジウム
「保育・支援の質向上に“子どもの権利”をどう生かすのか」

2016年に児童福祉法が改正され、児童福祉の理念に「子どもの権利」の視点が明記されました。グローバルスタンダードである子どもの権利条約の趣旨に基づけば、子どもを取り巻く環境には大いに危機感を覚える現場からの報告でした。

 

1、天久 薫さん(社会福祉法人四季の会 第2どろんこ夜間保育園園長)
行政にネグレクトされた子どもたち

劣悪なベビーホテルから子どもを取り戻すために、認可夜間保育園が1981年から開始された。しかし現在、認可夜間保育園は全国に81か所、ベビーホテルは1,500か所以上で27,000名あまりの子どもがいる。夜間保育園はベビーホテル対策になり得ていない。第2どろんこ夜間保育園は現在61名、母親の半分はサラリーマンであとは飲食業などの自営業でホステスさんは3名。保育標準時間は11:00~22:00。夜間であっても、「質の高い保育」が子どもの健やかな育ちと保護者の子育て力を育む。福祉とは「望ましくない状況を少しでも望ましい状況に変えること」であり、夜間保育は福祉そのもの。児童福祉法第1条は保育業界的に読み替えると「全ての児童は、保育を等しく保障される権利を有する」。自治体はベビーホテルの実態を調査し、保育需要を把握・分類したうえで、その結果を反映した子ども・子育て支援事業計画を策定し実行するべき。

 

2、畠山由美さん(認定NPO法人「だいじょうぶ」理事長)
ネグレクトとよばれる家庭への支援

行政だけでは虐待を止めることが難しいと考えた市から柔軟に対応できる市民団体に要請、委託事業として開始。虐待予防には居場所が必要であるという考え方から、また新たな社会的養護の形として市の施設を使っての官民協働の「居場所」機能を構築。子どもの相談をいつでも受けられる24時間365日体制の相談業務他、虐待予防の子育て応援セミナー、家事・育児の手伝いなどの生活サポート、居場所の提供、自立するまでの住まいの提供、学習支援、物品提供など。虐待をしてしまう親への回復プログラム等、できるだけ親子分離しないで地域でサポートをする。子どもが地域の中でその子どもらしく生きられるように家庭支援。虐待・貧困の連鎖を断つことをめざし、子どもの最善の利益を追求するケアマネージャーのような役割をする。虐待を受けていた子どもの言葉「大人が本気で向き合ってくれるから通うのが楽しかった」、家庭環境に恵まれない子どもの心の支えとなっている。

 

3、伊丹 桂さん(社会福祉法人ベタニアホーム 母子生活支援施設ベタニアホーム施設長)
子どもの権利擁護のための親支援の視点

虐待相談は13万件を超える。虐待、DV、貧困、障がいが背景にあるが、予防としての妊産婦への支援が足りていない。「漫画喫茶の個室で産み、声が出たのでばれると思って殺した」という乳児遺棄事件に対して、「勇気をもって近くの役所に相談に行けばよかった」という人があるが、すぐには役所には行けないもの。「実はね」と話せる人がいるかどうか。現状の行政は必要最低限の権利擁護。親支援の視点が必要なのは、DV家庭で成長すれば、普通の子育てがわからず、自己肯定感のなさは、支援者がケアする子どもへの妬みになることもあるから。親が就労でき、社会での役割を持つようになると子どもの不登校が改善することが多い。つまり親の自己肯定感を高めることが重要。措置別児童の家庭状況を見ると母子家庭が多い。母子家庭を支援することが重要。

 


 

いずれの報告からも子どもと保護者を同時に支えるセーフティ―ネットの必要性、親子を包摂するコミュニティー(関係性をつくる)の重要性を痛切に感じました。困難を抱える家庭の実態がどうなっているのかのリサーチが早急に行なわれるべきで、保育業界を含めて私たちの社会が「子どもの権利」を守る意思があるのかどうか、まさに問われている時といえます。

 

 

 

 

 

 

 

呑川にかかるこいのぼり。近隣の池上小学校と池上第二小学校の子どもたちの作品です

 

 

 

 

 

 

 

子どものしあわせを願っての端午の節句ですが・・・。”子どものしあわせ”を希求していきたいですね

 

 

日本保育学会 第72回大会から講演「子どもが人として大切にされる保育」

の記事に続きます。