ほっとけない「香り」の問題 大田区議会中間報告

第3回定例会に
「近年急増する香害の実態調査及び啓発活動についての陳情」

この陳情は、健康福祉委員会で審議されました。結果は少し残念な「継続」でしたが、審議の過程で、行政も議員も実際に起きている化学物質による健康被害についてしっかり考えることができ、今後の健康政策の一つの注目すべきテーマになったのではないかと思いますので、ここに報告いたします。

以下、陳情文の要約です。

 


柔軟剤・合成洗剤・消臭スプレーなどにより体調不良を訴える人や、化学物質過敏症を発症する人が急増している。

大田区立小中学校で化学物質過敏症やその予備軍の高感受性の児童生徒に関する実態調査をしてほしい

教育委員会や各公共施設で「家庭用洗剤などに含まれる化学物質」について注意と配慮を呼びかける啓発活動をお願いしたい

理由:柔軟剤や消臭効果が持続する洗剤には、特定の成分を含む超微小なカプセル、マイクロカプセルが含まれており、イソシアネートやアクリルアミドといった有害物質が使われている。有害物質が呼吸や皮膚から吸収されると、以下のような症状を引き起こすことがある。

・粘膜刺激症状(結膜炎・鼻炎・咽頭炎)
・皮膚炎
・呼吸器症状(気管支炎・ぜんそく)
・循環器症状(動悸・不整脈)
・消化器症状(胃腸症状)
・自律神経障害(異常発汗)

など。とりわけ子どもへの影響を懸念する。

以上。


この陳情を受けて、大田区健康政策部・生活衛生課長からは「化学物質と体調不良との因果関係やメカニズムは解明されていないが、実際に体調不良を起こす人のいることは認識している。なんらかの形で情報提供をしていきたい」という内容の答弁がなされました。

調査については、教育委員会・学務課長より、すでに学校では「保健調査票」に化学物質過敏症であることを書き込む欄があり、教員が把握をしているという見解がなされました。

議員による審議では、全ての議員が化学物質過敏症、またはその予備軍に対しての配慮や啓発活動の必要性を述べましたが、調査に対してはすでに教育委員会が「保健調査票」で実施しているので改めての必要はないという論調でした。
採決の結果は「継続」で、会派別の態度は、自民党(継続)、公明党(継続)、令和大田区議団(継続)、共産党(賛成)、立憲民主党(賛成)、大田・生活者ネットワーク(賛成)でした。

ここに個人情報を除いた陳情文を紹介いたします。

 

↓クリックで全文(計3P)のPDFが見られます。

 

 

また大田・生活者ネットワークとしての討論文を掲載いたします。


 

大田・生活者ネットワークは、
「近年急増する香害の実態調査及び啓発活動についての陳情」の採択を求めます

年々、芳香剤や消臭剤、合成洗剤や柔軟剤の香りに関して、コマーシャルが盛んになり、合成化学物質である人口香料が社会に広がりを見せています。それと同時にここ10年で都内の消費生活相談に香りに関して寄せられた苦情や相談は急増しており、そのことが東京都の広報でも紹介されています。この広報では、マンションの隣人が使う柔軟剤のにおいで、気分の悪くなる人、息苦しくなる人がいるなどの実際の例が紹介されており、注意と配慮をよびかけています。

体調不良を訴える多くの方は、柔軟剤の香りに影響を受けていますが、香りの成分である合成化学物質についての情報はなく「香料」という表示だけで、日本は何の規制もありません。しかし柔軟剤には、香料を徐々に放出して効果を長続きさせるためのマイクロカプセルが含まれており、その成分にイソシアネートという、毒性が極めて強く、欧米では厳しく規制されている物質が使われています。またアクリルアミドという物質も使われており、大量に吸入した場合は、中枢神経に障害を引き起こすこともわかっています。様々な化学物質が作用しあうということや、それらの化学物質が体内に蓄積されていっているということも考えられます。

最近、知り合った方は家の前にコインランドリーができて、しばらくして、家族で化学物質過敏症になったそうです。洗剤や香料の見えない化学物質が換気扇を通して家に入り、やがて家族の体調に変化が起き、せきこんだり、息苦しくなったり、頭痛やめまいで日常生活に支障をきたしたのです。一度化学物質過敏症になると、今度はあらゆる化学物質に反応するようになり、今では電車にも乗れなくなったそうです。

化学物質過敏症予備軍が今、急増しているように思いますが、彼らは体調不良を訴えても理解されず、わがままだと言われたり、クレーマーだといわれかねないのが現状です。すぐに判定できる医師が少なく、「心因性」だと言われることもあります。

昨年7月に東京高裁で花王の和歌山工場の原料の検査・分析業務に従事していた人が化学物質過敏症になり退職を余儀なくさせられたことで、損害賠償を求めた裁判で勝訴しました。企業に対して、室内に排気装置や防毒マスクを常備していなかった安全配慮義務違反を訴えたわけですが、化学物質の暴露と、化学物質過敏症との因果関係が認められた判決でした。大企業の力は大きく、会社に不利になる情報は流さないものですが、この裁判の結果からは今後、合成化学物質の実態、そして私たちの環境と健康をどう守っていけばよいのか、企業倫理の在り方を問いながら、環境整備が進められていくことを期待するものです。

水や食物以上に私たちは大量の空気を吸って生きています。「予防原理にたち」「感受性の高い子どもたちを特に守る視点で」まず、陳情者のいうように啓発活動は重要です。また現在学校で行っている保健調査票は個々の子どもの情報を担任が知っておくという使われ方で、もちろん大事なことですが、集計するなど全体の実態調査という意味合いにはなっていないと聞いています。保健調査票を活用してでもよいとは思いますが、全体像、実態を把握することは学校保健を考えるうえで必要だと考えます。

以上のことから、実態調査と啓発活動を求めるこの陳情の採択を希望します。

 


 

【参考】世田谷保健所では啓発のチラシが作成されています。

↓クリックでPDFが見られます。