大田区第1回定例議会での反対討論の全文です。
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議員提出第1号議案「第32回オリンピック競技大会及び第16回パラリンピック競技大会の東京招致に関する決議」に反対の立場から討論します。
昨年、東日本大震災という未曾有の災害を経験しました。地震と津波という天災に加えて「原発事故」からはさらにまた大きな困難と課題を突き付けられています。
安全神話の中で原発が作り続けられてきた背景には、豊かさと便利さを追求して、効率優先・利益優先思想により、技術信仰、開発や大型公共工事偏重の構造を作り出してきたという問題が浮き彫りになってきています。
また東京と地方との格差は、経済活動の一極集中、地方から都市への労働力の流入などが原因で、格差是正のためには、建設業だけにお金が流れる構造ではなく、一次産業、地方の農業・漁業・林業などを支える仕組みが必要です。つまり、もう大型公共事業による、一時的な経済効果に頼るのではなく、持続可能な社会をめざしていくべき時代であるのは明白です。そのための社会構造をめざした、大きなビジョンを示すのであれば、東京都のリーダーシップには期待するものですが、従来型の短絡的な発想「東京オリンピック開催」には賛成することができません。
開催動機とビジョンに「2020年大会の機会を得れば、新しい世代に幅広い恩恵を与える」とうたっていますが、“幅広い恩恵”とは何か、だれのためのオリンピックなのか、がわかりません。少子化、高齢化、社会保障費の増大、児童虐待や自殺者、また一人暮らしの方の孤独死の増加など社会問題が山積しています。限られた予算をどのように使うかは、まず市民生活に目を向け、優先度の高いものから配分されるべきです。
見通しがないまま、東京都の24年度予算にオリンピック招致事業として20億4千9百万円の計上になっていることには問題がないでしょうか。前回の実らなかった招致活動のために使われた費用、都拠出金149億円はもちろん都民の税金で賄われましたが、今回も、いわば招致のためにリスクのある、投資的な費用がつぎ込まれようとしています。都民のコンセンサスは得られるのでしょうか。
戦後すぐの東京オリンピックの時代は、経済成長が公共事業と結びつくという効果があったと思われます。オリンピックの準備がそのまま、インフラ整備や経済復興の役割を担ったわけです。けれども今は、状況が全くちがいます。インフラ整備は必要としても都市計画が先で、必要なところに必要な工事をするべきです。新たな競技場を作ったとしても自治体にとっては、維持管理が将来的な負担になることの懸念が大きいと考えます。建設業界への経済的効果はあっても、都市部と地方の経済格差を縮めることにはならず、またその経済効果も一時的にしかすぎないのです。
このように効果がわからない、投機的な事業への疑問、格差是正、循環する持続可能な社会のためには、地道な生活重視の視点からの政策が特に今は必要であるというという問題意識から、オリンピック招致には反対いたします。