心臓病の子どもが集う場 『こばと園』

 1月24日、台東区にある「こばと園」におじゃまさせていただきました。 「心臓病のこども専門の集団生活の場」とはどういうものかを知りたいと思ったこと、短大時代の友人がそこで働いていること、大田区に住む心臓病のお子さんもわざわざ、台東区にあるその「こばと園」まで通っていっているということが動機でした。

 

江戸通りを一本奥に入った裏通り、浅草聖ヨハネ教会の扉に「こばと園」の札がかかっています。小さな階段を下りて、古い扉をあけると広いホール。カーペットが敷き詰められ、きれいな楽しそうなおもちゃが用意されています。少しずづつ、親子が集ってきました。部屋はストーブの温かさでホカホカしていましたが、それよりもっと温かい笑顔の保育者たち。子どもが来るたびに本当にうれしそうに笑顔を向けていました。
 hato.心臓病であっても楽しい集団生活を
心臓病という大きな重荷があっても、心も体も成長をする毎日です。 本当は保育園や幼稚園に通って、友だちと遊び、集団生活を体験するなかでいろいろな刺激を受けて、成長させたいところでしょうが、心臓に負担になる運動は難しい、感染しやすく重症化しやすいので、感染症を避けなければならない、など特別な配慮が必要で、幼稚園・保育園に入ること(受け入れてもらうこと)が困難なのです。
 hato.「台東区障害者福祉計画」に位置づけ
そこで、親たちの願いから生まれたのが「こばと園」で、浅草聖ヨハネ教会が無償で貸してくれる広いホールと親たちの自主運営で、昭和51年に開設されました。昭和53年からは、東京都から「通所訓練事業」として認められ、補助金の交付を受け、昭和56年に台東区に移管されても、今度は「台東区障害者福祉計画」の中に組み込まれ、補助金は引き続き江東区から交付されています。正規の保育者が3名とお手伝いの人が10名ほどで、保育にあたっています。
 hato.保育の内容
実施日:毎週 火・金 10:00~14:30  親子でいっしょに登園
 ●保育内容:積木・ままごと・ブロックなど思い思いに遊ぶ
 ●朝の集まり:出席をとったり、季節の歌を歌ったり、指遊びをしたり、           ゲームをします。お弁当・自由遊び・おやつ・帰りの会
来る人数は、日によって違うそうですが、今日は、4人でした。

hato.課題:地域の幼稚園や学校に通えるか
手術が終わったり、体力がついてきたり、ということで、医者からは、幼稚園・保育園に行ってもいいといわれても、地域の幼稚園や保育園が必ずしも入園を許可してくれるとは限りません。やはり心臓病のリスクを負うことにためらうがあるのでしょう。やむをえず、受け入れてくれる幼稚園のある別の区に引っ越す人、塾のようなところに通う人、いろいろだということです。
ただでさえ、心臓病という重い病気と闘う厳しさ・辛さの中にいるのに、地域の中で、お友だちを作りたいという切なる思いも叶えられず、悲しい思いをしている親たちの話には心が痛みます。 小学校の入学でも大きな壁があるそうです。ちょっとの配慮で学校生活を送れるのではないか、親はそう考えますが、学校はリスクを遠ざけようとします。
施設を勧められることがあるそうですが、精神障害児施設・肢体不自由児施設はあっても、病弱児の施設はないのです。病弱児施設を作らないのであれば、学校の中で、どうすれば安心して過ごせるのか、学校と家庭で話し合って、そのような環境作りをすすめるべきではないでしょうか。
さて、こばと園に通っている大田区のKさんは、お医者さんから幼稚園入園の許可をもらいました。ところがどこの幼稚園も入れてくれません。たった1年でも幼稚園の集団生活を味わわせてあげたいという切なる思いは叶うでしょうか。
「障害者権利条約」の批准は叶いましたが、現場はまだまだ追いついていけません。
 
冊子「こばと園のあゆみ」の中から

生まれてくる子の100人に一人が何らかの心臓疾患を持っているといわれ、その中でも重症の病児と言われた時の親のショックは大きく、立ち直るには多くの時間と周囲の励ましや理解が必要です。同じ悩みを持った親同士のふれあいから、親が前向きに気持ちを変えていき、こどもに対しても明るく付き合えるようになります。 親が元気に子育てをするようになれば、子どもも変わります。そういう親子のためにも、これからも心を合わせて歩み続けてまいります。