今こそ、「子どもの権利条約」の実現を!
イ スラエルでの戦争、マレーシア航空機の墜落、今も多くの子どもたちが傷つき、命が失われています。日本では、育児放棄による衰弱死、虐待死、いじめや子ど もの自殺もなくなりません。第1次・第2次世界大戦での多くの子どもの犠牲という「現実」から出発して、子どもを戦争・紛争の犠牲者にしないという決意か ら「子どもの権利条約」は生まれました。
国連採択25年、日本政府が批准して20年たちますが、ここでうたわれている「平和的生存権」や「遊ぶ権利」「学ぶ権利」は保障されているでしょうか。
権利保障の基準を、この「子どもの権利条約」からきちんと学び、具体的な取り組みをすることが、今また私たちに求められている時だと思います。
「子どもの権利条約」の精神と現状を学ぶ講座を受けてきました。荒牧先生の熱のこもった講義の中から抜粋してご紹介します。
「子どもの権利条約批准20周年記念」
子どもの権利条約基礎講座
7月19日(土)早稲田大学戸山キャンパス33号館
荒牧重人さん
(子どもの権利条約ネットワーク副代表・
山梨学院大学法科大学院教授)
子どもの権利条約・4つの柱
生きる権利・育つ権利・守られる権利・参加する権利
★子どもの捉え方と子どもの権利
・子どもは一人の人間
=独立した人格と尊厳を持つ、かけがえのない存在。
・子どもは子ども
=子どもは成長発達していく存在、おとなを乗り越える存在。
子どもは一人ではおとなになれない。
親・おとなの支援が必要。
・子どもは家庭・園・学校・社会の構成員
=パートナーとしての存在
⇒子どものトータルな捉え方が必要
・単なる保護や救済の対象ではなく、問題解決の主体。
自ら選びながら成長していく主体として支援。
・権利は獲得するもの、権利は行使するもの。
★子どもの権利がもたらすもの
・自己肯定感を向上させ、子どもの成長、自己実現に不可欠
・おとなの子どもに対する見方、接し方を問い直す
→「理想の子ども像」をつくらない。
「理想」と子育て・保育・教育の「目標」を混同してはならない。
→子どもなんて「こんなもんだ」と思いこんだり、決めつけたりしない。
・子ども同士、子どもとおとな、
親・保護者と保育士・園・学校教職員との関係を変え、
良い関係もたらす。
→ 権利の相互尊重、真の意味の規範意識の向上
→ 親・教師・おとなの権力や権威を振りかざすのではなく、
子どもとの関係をつくり直していく。
・子どものおかれている状況を変革する
★「子どもの権利条約」の意義
【1】子どもの権利保障についての世界共通基準・
グローバルスタンダード
【2】日本国憲法よりは下位にあるが、法律よりは上位の規範。
条約に反する法律や行政は変えなければならない。
国会は条約が求める立法を制定する。
行政は条約を実施する義務を負う。
裁判所は条約を裁判規範として援用しなければならない。
つまり、なにより命が大切にされなくてはならなくて、戦争も虐待も許されないことなのです。
そして、子どもはおとなのパートナー。 “指導の対象”だけではなく共に社会を構成する構成員としての“位置づけ”がなされていなくてはなりません。位置づけがないのに、責任感を持つことや役割 を果たすなんてことはできないのです。子どもにも意見を表明し、参加する権利があります。赤ちゃんが“むずかる”のもりっぱな表現=意見表明なのです。
行政は条約を実施する義務を負うといいますが、さて、大田区は子どもが子どもらしく、その成長を保障される環境が整っているでしょうか。点検していかなければなりません。
『僕たち、中学生には「人権」がないのですか。
「社会の一員」ではないのですか。』
先日、ある男子中学生の訴えを聞きました。
もっともっと「子どもの権利条約」について、私たちは勉強し、行政を監視していかなくてはならないようです。これから、多くの人たちとともに「子どもの最善の利益」を追求していきたいと思います。
子どもの権利条約ネットワーク荒牧重人先生と