フェスタ、マルシェの可能性を探る 「世界のトマトフェスタ」から
多摩川駅を拠点にもう10年以上続いてきた「昔ながらのトマトの会」主催のトマトフェスタ。 色とりどりのトマトの展示、販売の他、多くの農家からの野菜の出品、工夫を凝らした一般区民のブース、その他楽しいステージが繰り広げられ、手作り感のあ る、温かなフェスタです。年ごとにふくらむ盛り上がりが大きくなったので、この8月に初めて蒲田西口に進出、これから毎月2回、蒲田西口で、西口商店会も 共催で、開催されることになったそうです。
“なぜ、トマトなのか?”
このフェスタについて、実行委員長の山代玉緒さんからお話を伺いました。まず、“なぜ、トマトなのか?”
玉 緒さんのお父さんが、仕事の関係で世界中のトマトの種を手に入れることができたこと、日本の農業振興を思って、その種を各地の農家にプレゼントしたとこ ろ、収穫されたトマトが山代さんの元に送られてきたこと、これが「トマトフェスタ」の始まりですが、娘の玉緒さんは、アメリカ留学中に出会ったペルー人の 影響でペルーのストリートチルドレンを助けるボランティア活動を2000年よりしてきていたので、トマトに関しては、原産国でもあるペルーとの関係に縁を 感じ、家族で、トマトフェスタに取り組むようになったのが始まりだということです。
フェスタのコンセプトは、「トマトを知る」「ふるさとを思う」「震災支援等、農業と都市を結ぶ」ですが、今でもマルシェの売り上げの一部をペルーのストリートチルドレンを助けるために送っているそうです。
2013年よりペルー大使館でのチャリティーコンサートを企画することとなり、来年4月にペルー大使館大使公邸にて第18回チャリティーコンサートを主催予定です。
一番初め、たった1店舗で始まったフェスタが地域で拡大していき、またペルー大使館から国際交流にまで輪を広げてきているわけです。
⇒【世界のトマトフェスタ】since 2005 フェイスブック
大事なのは“人とのつながり”
ト マトフェスタ、それに付随する産直市の多摩川マルシェの魅力は“人とのつながり”だといいます。玉緒さんが出会ったペルー人が教えてくれたのは、国が戦火 にあったときに、頼りになったのは、お金ではなく、“人とのつながり”だったということ。玉緒さんは、その言葉に共鳴して、たくさんの人のつながりを生み 出すフェスタやマルシェに大きな希望を抱いたといいます。実際、“人のつながり”が新たなエネルギーを生み出したり、街の活性化に寄与したりすることを実 感するようになったといいます。
たとえば、3.11。東北の農家が売る場所を失ったとき、彼らは、多摩川マルシェに売りに来ることができ、こちらではいち早く、義援金を集め、届けることができたそうです。継続してマルシェを続けてきたおかげで、即座に助け合いの体制が取れたそうです。
また継続的に地方からの農家が出店することで、地方での農業体験のツアーの紹介や地方のおいしいものを丁寧に紹介するなど、地方と東京都の接点としての機能を果たしています。
マルシェの可能性
ま た、こんなこともあったそうです。区内に住む、一人のイギリス人が、会社勤めをしながらも独立したいと考えていましたが、どうしてよいかわからない。多摩 川マルシェは安価で出展できるので、そのイギリス人は力だめしで、毎回イギリスのパイやチャツネをつくって、売ったそうです。すると“おいしい”と評判に なり、そのうち友だちもできて、いろいろな情報を得ることもできて、ついには、自分のお店を持つことができるようになったそうです。マルシェが店を持つ前 の訓練コースになり、たくさんの友だちと自分への自信を作れた事例です。
「人がつながる」ことで生まれるエネルギー
不登校になっていた学生、一度社会でつまずいて、ひきこもりになっていた人が、それぞれマルシェの体験で自信をつけて、学校にいけるようになったとか、もう一度社会に出られるきっかけになった、ということも聞きました。
こ のように継続的なマルシェは一過性の経済活性化だけではなく、将来お店を出したいと思っている人にとってのトライアルの場所になり、社会との距離を作って しまった人には、もう一度社会との接点を作れる場所になる可能性を持つ、福祉・教育の場にもなっていることを彼女から教わりました。
「人がつながる」ことで生まれるエネルギー、これこそ、フェスタやマルシェというものの大きな可能性であるということに気づかされた、山代さんからのお話でした。