分断のない社会を求めて~給食費の無償化をめぐって~

大田区ではこの4月から学校給食費が値上げになります。

小学1,2年生 3,800円→4,100円
小学3,4年生 4,200円→4,500円
小学5,6年生 4,600円→4,950円
中学生 5,000円→5,350円

物価の高騰が一つの大きい要因ですが、一方、給食費の無償化を要望する陳情が出ています。
子ども文教委員会の中の議論では、”経済的に厳しい家庭には「就学援助費」が出ていて、給食費は免除されるのだから、他の人からは給食費を徴収してもいいだろう”という意見が多数を占め、陳情は不採択になりました。

 

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嶺町出張所で開催されていた子どもたちの絵画展より

 

大田区は給食費の収納率は99.8%といいますが、だからといって、生活が厳しい人が少ないとはいえません。
就学援助があるからいい、という考え方でよいのかどうか。

私たちは数名は、議員提出議案として、「給食費無償化」を求める議案を提出しましたが、やはり不採択。

以下、「給食費無償化を求める議員提出議案」への賛成討論です。

 


●議員提出第1号議案「大田区学校給食費助成条例」に賛成の立場で討論いたします。

憲法のいう「義務教育は無償とする」という考えに基づき、給食も食育の一環としてとらえて、無償化を求めるものです。

保育・義務教育・医療など全ての人が人らしく生きていくための基盤を整えること、ニーズを満たしていくことは、権利として保障していくことをめざすべきだと考えます。平等に基本的なニーズが満たされることは社会の安定にもつながると考えます。

給食費において、就学援助を受けている人だけを救済する方が確かに財政的には安上がりですが、格差の中の分断を決定づけることになり、人の「尊厳」を傷付けるものになります。昨年までは就学援助を受けられていたのに、今年は受けられない、家庭の厳しい経済状況は同じなのに、なぜ受けられないのか、と不満を抱えている人もいます。救済を受けられる人とそうでない人をどのように厳正に分けるのか、そもそも選別することで、税を負担する側と救済される階層との相互不信、また弱者同士のねたみなど、社会全体の連帯感を失わせ、寛容さをなくし、むしろ分裂を招いていくことになっています。

格差が広がり、社会への不安・閉塞感が漂う中では、未来への投資や消費意欲は失せ、経済の活性化どころか、ますます社会保障費が膨らむ中で、さらに縮減と分断が続く袋小路になっていく、というのが、今の日本の現状ではないでしょうか。

財政社会学者の井出英策さんは、このような今の日本の状況を変えていかなければならない、「すべての人が受益者になる実感が持てる社会作り」が必要だといっています。基礎的なニーズは満たされ、安心してくらしていける、という社会への信頼感と租税との組み合わせです。たとえば、消費税増税分が何にどう使われていくのかがはっきり見えて、税によって暮らしが確かによくなっている、という実感が伴えば、租税への抵抗感もなくなるかもしれません。

少子化を食い止めることに成功した国々は家族手当など、所得に関わらない現金給付を充実させています。所得制限を設けない普遍的な給付は、行政の効率化も図れます。

大田区においては、地方消費税分が158億円、年間の給食費16億円を支出することは十分可能ではないでしょうか。何を支出するべきか、区民が明るい展望を持てるメッセージを込めた施策が必要と考え、議員提出第1号議案に賛成の討論といたします。

 

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