Talking Gig 【「子ども中心」の社会的養護とは?〜児童養護施設出身者に訊く〜】

さまざまな事情から家庭で生活することのできない子どもたちが日本には約4万6000人いるといわれています。そうした子どもたちを支えるしくみが、児童養護施設や里親といった社会的養護です。けれども、日本の社会的養護にはさまざまな課題があるといわれています。社会全体で子どもを支えるため、大人一人ひとりに
どんなことができるでしょうか?
自分自身も児童養護施設での生活を経験し、当事者の子どもの権利保障、生活向上のために活動を続けるお二人からお話を聞きました。(当日の案内より)

 

Talking Gig

「子ども中心」の社会的養護とは?

~児童養護施設出身者に訊く~

主催:バリアフリー社会人サークル colors
TRANSIT YARD(東矢口3-3-1)にて  2017年10月1日

 


 

当事者の話を聞く

お話を聞かせてくださったのは、「IFCA(インターナショナルケア アライアンス)のメンバーで、日本とアメリカの児童福祉をつなぐ活動をされているお二人でした。私はちょうど、モッキンバードファミリーモデルという、シアトルで実践されている里親同士のケア、フォローの仕組みなど、子ども中心の社会的養護の在り方にちょうど関心を寄せているところでしたし、当事者の意見を聞く貴重な機会でした。

A君
父親からの身体的暴力、母親の育児放棄。公園で暮らしていたこともある。5年生からお金をかせぐ。中学2年で、児相へ。
高校に行かなかったので、児童養護施設は出なくてはならず、一人暮らし。保育士の資格をとって現在は社会人。

Bさん
実兄からの虐待。高校2年生で保健の先生に話したことから児相へ。一時保護を経て里親のもとで3カ月過ごし、その後は児童養護施設で。就職が決まり、社宅に暮らす。

 

児童養護施設で暮らしていて、困ったこと

・施設で渡される「受診券」を持っていくと「保険証」を持ってくるようにいわれて、病院で診察をしてもらえなかった。
・携帯を購入するとき、身分証明書がなくて困った
・門限が早くて(18時)友だちとの付き合いができにくい。部活もできない。
・当時のその施設では、衣類はお下がりばかりだった。
・施設には友だちを招き入れることができなかった。
・いきなり保護されたので、家から大事なものを持ってくることにできなかった。
・里親のもとにいたとき、自由に洗濯ができなかった。水がもったいないからと。
・里親に、以前に預かっていた里子の写真を見せられ、こういう子がいて、こうなった、という話を聞かされたが、自分も同じようにされるのかと思うと嫌だった。「プライバシーへの配慮のガイドライン」があるべき。
・保育士の資格を取るための書類提出の際、母子手帳がないため、予防接種の記録がわからなかった。児相の職員に実家に取りにいってもらうことはできないか。
・身分を証明するものがないと就職のとき、銀行口座を作るときなど、何かと困る。
・保証人になってくれる人がいないとアパートを借りられない。たまたま不動産屋さんがいい人で、敷金を1か月分上乗せで許してもらえた。
・健康保険証、市税納税証明書、マイナンバーカード、年金手帳、学校の身分証明書、どれもない。
・施設退所後、かわいそうな子ども、がんばっている子どもとみられるのがいや。普通にみてほしい。

 

 

 

 

 

 

 

 

こうだったらいいのに、と思うこと

・施設の中では、将来の職業についての知識が得られない。実際の職業を知るチャンス、たとえば、職場見学や体験がしたい。
・児童養護施設入所の条件は学校に在籍していること。学校を辞めると実家に戻されるので、そうなることが不安。虐待されたことで、どう家族と接してよいかわからない。心が追い付かない。学校に行っていなくても、施設にいられるようにしてほしい。
・住民票の閲覧制限をかける際に、1年ごとに警察に過去の虐待のことなど辛い話をしにいかなければならない。同じ話を毎年しなくてもすむようにコピーなどで引き継いでいってほしい。
・保護されるとき、一時保護所も施設もどんなところかまったくわからずにつれていかれる。せめて説明をして、子どもが自分の気持ちの整理をする時間を与えてほしい。この施設に空きがあるから、というのではなく。子どもだって人間、里親と施設のどちらがいいか、など選べるようにしてほしい。

 

施設にいて、うれしかったこと

・ボランティアのラーメン屋さんがきてくれたこと。軽トラックに屋台がついていてうれしかった。

 

大切だと思うこと

・どういう人に出会って、どういう人に成長するかということ。
・アメリカの児相の職員と話していて、新鮮な驚きは、「あなたは何をしたいですか」と聞かれたこと。日本では「○○という状況だから○○になる」という話しかしてもらえなかった。自分の意見を聞いてもらうのは初めて。その子どもが本当にしたいことを聞いてほしい。

根本的に子どもの声を聞いてほしい。
全て大人都合で、システィマチック。
それが当たりまえなのが、現在の社会的養護の実態。

 

 

 

 

 

 

 

 


以上、生々しい貴重な話を伺うことができました。施設ごとに状況はかなり違いますし、熱心に愛情を注いでいる施設も多い中で、一概に施設を批判することはできませんが、そもそも「措置」という言葉が象徴しているように、入所に至る過程では子どもの側には選択の余地がないことは確かでしょう。
制度自体を「子どもの人権」という観点から点検していく必要がありそうですね。
現在は、お二人とも目標を持って、力強く生きていらっしゃるように見えましたが、自立への道筋にも大いに関心を抱きました。

虐待のない社会、「あなたは何をしたいですか」と子どもたちに聴ける社会を創っていかなければならないですね。