いくつになっても学ぶって楽しい 港区チャレンジコミュニティ大学
60歳になって大学生!?
~生きがいを見つけ、地域共生社会を望む生涯学習について~
港区は、明治学院大学との連携事業「港区チャレンジコミュニティ大学」を行っています。今年で13年目となりますが、1年間で40回のプログラム、大学のキャンパスを使用し、学生食堂と図書館は学生と同じように使え、仲間と出会い、学びを深めていきます。受講資格は60歳以上。これまでの最高齢が92歳。今年の平均年齢は69.6歳だそうです。定員60人のところ、いつも100人前後の応募があり、「卒業後、あなたはどんな地域貢献をしたいですか」というテーマの作文選考で合否が決まるそうです。
高層マンションが多く、高齢化と孤立化(核家族の増加に伴い、血縁、地縁といったものが薄れてきている)が課題だという港区、「港区チャレンジコミュニティ大学」は地域活性化や地域コミュニティの育成を図るために、地域で積極的に活躍するリーダーを養成し、「地域共生社会」をつくることを目的としています。
2019年度の講義のテーマをみると港区職員による行政課題を含め、各分野の専門家によって現代的な諸問題、たとえば、高齢者福祉、認知症の理解と予防、児童虐待と社会的養護、社会保障、今日の貧困と社会的排除、消費者問題等、現代的な社会課題をしっかり学ぶプログラムとなっています。
多くの受講生は卒業後、自分の持っている力を社会課題に即して発揮していくのだそうです。たとえば、システム系の企業にいた人が学童保育でプラグラミングを教えたり、元美容師が高齢者向け美容塾を立ち上げたり、居場所作りで、多くのサロン活動、コミュニティカフェが生まれています。すでに700名にもなる卒業生で組織する団体が情報交換や交流の機会を提供するなど継続した活動のためのサポート体制も創っています。
卒業生が地域で行っている「コミュニティカフェのポスター」
自治体と大学との連携で、個人の生きがいと同時に地域づくりへの可能性を膨らませている優れた施策だといえるでしょう。時代の問題を的確に捉えた講義内容と仲間づくりには大きな意味があるでしょうが、大学のキャンパスを使用することでの、学生生活を味わうような高揚感、ワクワク感はモチベーションに影響しているのだと思います。
超高齢時代、高齢者が生きがいを見出し、生き生きと地域の中で役割をはたしていける仕組みを作ることは自治体の大きな課題です。生涯学習をいかに充実したものにするか、港区の事例からは「学びの環境」についても教えられました。