国連障害者権利条約と大田区障害福祉の現状

12月10日、「国連障害者権利条約と大田区障害福祉の現状を比較考察しよう」という学習会に参加しました。(ラズ大森の入新井出張所集会室にて)
主催:大田区障害者権利条例案を作ってしまう会

まずは、「障害者権利条約」の概要です。
2006年に国連で採択、現在106カ国が批准。日本は2007年に署名し、現在は、批准に向けて調整中。「障害者権利条約」は、障害者の人権、平等、尊厳の尊重をうたっていますが、障害者を「保護の客体」ではなく、「権利の主体」と見る、インクルーシブな共生社会を目指しているということで画期的なものです。


障害者権利条約の8つの原則は、
①尊厳、選択の自由を含む自律と自立の尊重
②非差別
③インクルージョン(社会の一員としての受容)
④人間性・多様性の一部としての障害の承認
⑤機会の平等
⑥アクセシビリリティ(社会的関与の平等の保障)
⑦男女平等
⑧障害のある子どもの成長の可能性と自己同一性保持の権利の尊重
という、人としての権利をしっかり謳ったものです。

しかし、差別はあるのです。

直接差別と間接差別、「合理的配慮」の欠如

「間接的な差別」とは、たとえば、障害者用トイレがない、車イスが入れない避難所、
情緒障害者への配慮ができない避難所も。つまり意図的な区別や排除、制限だけでなく、結果的に不平等になることも差別であると考えます。
「合理的配慮」とは、教育や雇用において、実質的に同じ扱いになるように個別的に設備や業務の運用変更、調整をするなどして、平等を保障することです。

差別や合理的配慮の点で、現状にはまだかなりの課題がありますが、この障害者権利条約には、モニタリングシステム(国内・国際監視システム)も定められているので、行政が義務を怠っていないかどうか監視して、当事者として、また市民側から、問題解決に向けての追及、レポート提出なども行っていこう、という結びでした。

次に大田区の現状報告と問題提起が、当事者から、また現場の立場から、3人の方によってなされました。

1、「学童保育の受け入れ要領」の中の「差別規定」

「大田区学童保育における要支援児受入れに関する実施要領」http://www.gakuho-tokyo.jp/jyourei/oota_syougai.html
以下の文言は、人権擁護の点で問題ではないか・・・

健常児とともに保育することが可能であること。
前項の規定にかかわらず、次の各号の一に該当する者は入室を認めない。
 (1)極度の多動性、突発的行動、放浪癖のあるもの
 (2)排泄に常時介護を要し、予告も不可能なもの
 (3)自他の安全を損なう行動のあるもの
 (4)複雑な専門的処置を常時必要とするもの

また、その結果、児童館における障害児の受け入れは十分ではないし、民間の障害児学童保育の場、4か所しかない。したがって、両親が就業したくても、できないのが大田区の現状。
 (それにしても、あまりにひどい文言ですね!)

2、移動支援の支給拡大を求めて

 車イス生活の鈴木敬治さん、移動介護支給量を大幅に削減されたことで、提訴。鈴木さんは、勝訴して、元の移動時間を取り戻すことができたが、全ての障害者が24時間、地域で自分らしく生活できるような支援施策を求めて、大田区に陳情を出す予定とのこと。

3、医療ケアの必要な子どもに対応できる施設が足りない

城南特別支援学校にお子さんを通わせている保護者の声から。
①医療的ケアの必要な子どもの日中の一時支援、短期入所施設がない。
(親に何かがあったとき、どこにも預けられない、多くの親が不安に思っている)
②障害者が利用できる通所施設が足りない。都立北療育センター城南分園のみ
③心身障害児に対応できる施設がない。重症心身障害児の施設も。
(実態を把握してほしい。親も高齢化、ケアホームなど入所施設も急務)
④新たに制定される「障害者総合福祉法」では介護職の人も研修を受けると、医療的ケアができるようになる。医師・看護婦・介護職の人等のさらなる連携がさらに必要。
⑤医療的ケアの内容によっては、親が一緒に学校に行かなければならない。訪問看護や居宅支援が、学校でもできるように整備してほしい。

というように、障害者福祉の観点から課題がいっぱいの大田区の現状をあらためて実感しました。声を出しにくい人の立場にこそ、しっかり目を向けて、人権が守られるようにしないといけないと、つくづく感じました。当事者参加の障害者委員会のようなものを作って、条例を作っていけたらいいね、という話でしめくくられました。

賛成!