アスベスト問題

「ただちに健康に影響はないけど」 どこかで聞いた言葉ですが・・・


目には見えないので、その時には気がつかないけれど、あとから大変な健康被害が起こる、というタイプの「公害」。これらの公害の大変さは、もちろん病気自体の苦しみが一番ですが、発病するのが、数年後、数十年後だったりするので、何が原因なのかを立証するのが難しく、労災認定や補償が得られにくいことです。

そういう意味でも、そのような被害が起こらないようにできるだけの予防をするのが大事なのはいうまでもありません。しかし、一個人としては難しいことなので、本来は、行政や企業が積極的に取り組まなくてはならないことです。

たとえば、これから、ますます被害が拡大すると予測されているものに、建築資材として使われていたアスベスト(石綿)による「肺がん」「悪性中皮腫」があります。

アスベストは髪の毛の5000分の1という細さの鉱物の繊維なので、空気中に飛散しやすく、体に取り込まれると取り除くことができないやっかいなものです。予測死亡人数が2035年までに中皮腫だけで、10万人といわれています(産業衛生学会・村山武彦氏報告)。

潜伏期間が15年〜40年なので、1970年から1990年にかけてさかんにアスベストは吹き付け材やボード、スレート板として使われていた影響で、今頃になって発病する人が後をたちません。

もちろん現在は、法律で使用禁止となっていますが、古い建物の建て替え時期でもあること、耐震工事などもなされることが多いので、解体工事に関わっている労働者は特に気をつけないといけません。また、工事現場の近くにも粉じんとして飛んでくるものなので、社会全体の問題として考えていかなければならないことです。

身近なものとして今、問題になっている工事(現在進行中!)
 都営下丸子二丁目アパートでの内装改修工事及び耐震補強工事

 アスベスト含有ヒル石天井の封じ込め及び囲い込みの際に、
 粉じん対策を行わない違法工事の疑い
 【工事事業者:東京都住宅供給公社(JKK)】

このアパートは、14階建て2棟からなる吹き抜け回廊式、集合住宅で、1971年建築です。2棟を順番にトリプル工事(スーパーリフォーム工事+耐震補強工事+アスベスト天井工事)するため、現在、1棟の住民が移転し、その間に工事が行われていますが、住民から、アスベスト対策工事に関する違法性が指摘されています。

●問題1
「石綿障害予防規則」に規定された、作業労働者の防護対策がとられていないこと。
セキュリティ−ゾーン、負圧装置、除じん装置、換気装置、密閉性のある隔離養生、防じんマスク、保護めがね、保護衣、シューズカバー、いずれも設けられていない。

●問題2
この工事は、アスベストの除去ではなく、天井のアスベストを覆うボードを貼る「封じ込め」という手法をとります。その際に「石綿飛散防止剤」としてスリーエスボンドとアクアフィックスという薬剤を使用するが、アクアフィックスという薬剤は国土交通大臣認可を受けているものではないので、安全性の担保があるとはいえない。

●問題3
いくら「石綿飛散防止剤」を浸透させてボードを貼っても、配管を通す際、アンカー打ちをする時に、アスベストの粉じんが飛散しない保証はない。

以上のようなことから、この工事の違法性を是正するように、住民たちは、「東京労働局」「大田労働基準監督署」「大田区環境保全課」に申し入れをしました。

このように公共工事においても、違法性が疑われる場合があること、行政の監督が行き届かないことがあるのが残念ながら現状です。ご自分の家の周りや、特にお子さんといっしょに歩いているときに、解体工事現場をみつけたら、粉じんを吸わないように気をつけましょう。

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監修は竹宮恵子さん。

アスベストについて詳しくお知りになりたい方は、

「中皮腫・じん肺・アスベストセンター」のホームページをご覧ください。

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