中高生の居場所 決算特別委員会での質問 ①

★中高生をめぐるさまざまな問題と課題

日本の子どもは、「自己肯定感」が低いと、よくいわれます。日本青少年研究所が各国の中高生にした調査では、「自分をダメな人間だと思う」と答えた割合が先進国のなかでは、日本の中高生が最も多く、また、「自分の参加により社会を少し変えられるかもしれない」と思う中高生が最も少なかったのが日本だったといいます。 

23年度の区内の中学校の不登校児353人、区内8つの都立高校の中途退学者の数は、163人。高校生の不登校に関しては、都内全体で、4,220人。この不登校は、「ひきこもり」にも通じますが、いまや学齢期に引きこもりを起こし、立ち直るきっかけを見出せないまま中年期に達する人も多く、全国では200万人を超すといわれる社会問題です。

一方、23年度、区内での不良行為、つまり飲酒、喫煙、深夜はいかいなどで、補導された少年(14歳~20歳)は2,399人でした。 

自己肯定感が低く、自信がない、学校に行けなくなる、非行、いじめや自殺、さまざまな問題は、経済、雇用、貧困、学歴偏重、学歴があっても就職出来ないなど、今の社会構造や状況が反映されてのことでしょう。 

解決への道のりはそう簡単ではありませんが、学校と家庭以外の地域の中に「居場所」があることは、中高生にとって大変大事なことだと考えます。 

今、中高生が、気軽に集い、仲間とおしゃべりしたり、遊ぶことのできる場所が、大田区の施設の中にあるでしょうか。

 

★「こらぼ大森」の中の「子ども交流センター」

「こらぼ大森」の中の子ども交流センターは、中高生が多く集まる児童館です。唯一スタジオのある児童館なので、バンドの練習ができ、30団体ほどが活動しているそうです。年に3回のライブが行われていますが、なかには、学校には行けないけどここにならこられるという子ども、悩みを打ち明ける子ども、つっぱっているけれども声をかけてほしい様子の子どもと、中高生のよい「居場所」になっているようです。もとは小学校だったので、体育館でバスケもできます。区内にもっと子ども交流センターのような中高生の居場所が必要という区民の意見も多く、ここに来る子どもはいいけど、どこにも行き場がないと、公園・コンビニ・カラオケ・渋谷などの繁華街に行ったり、または親の管理の甘い家に集まって、飲酒・たばこの巣窟になっていることもあると聞いています。

 

★児童館の開館時間延長と日曜日の開館を

さて、それでは、子ども交流センター以外の大田区の既存の施設は、中高生にとっては、使いやすいでしょうか。

たとえば、児童館。全館、中学生タイムを設けていますが、あまり利用されていないようです。しかも対象は中学生だけで、高校生は使えません。

利用されていない理由のひとつが開館時間の問題です。大田区は、5時が閉館時間ですが、他の自治体の中高生プログラムをもっている児童館を調べてみますと、午後8時まで開館しているところがほとんどです。

大田区の場合は、中学生のみを対象としていますが、それでも、平日5時閉館では、320分が授業終了時間で、学校帰りの寄り道は禁止されているので、一旦家に戻ってから行ったとしても利用時間内にはほとんど間に合わないことでしょう。部活をしている子どもにとっては部活が終わるのが6時前後ですから全く間に合いません。日曜日も休館日なので、利用できません。

平日は、学童保育の子どもたちがたくさんいるために、中学生が活動するスペースがないということも問題かもしれませんが、タイムシェアすれば、つまり、中学生は遅い時間を使えるとすればもっと利用しやすいのではないでしょうか。 

児童館の利用対象を高校生までに広げるとともに、開館時間を8時までに延長、さらに日曜日も開館することはできないのでしょうか。 

5時閉館は、中学生はもとより、多くの働き学ぶ区民にとっては早すぎます。大田区は、仕事をしていない、学校へ行っていない区民のことだけを考えているのでしょうか。

(今後、民間委託するなかで、時間延長・日曜開館は検討する、という答弁を受けて)

直営の児童館では、なぜそのようなことができないのですか。品川は、直営ですが、週2回は8時までの開館です。年末年始以外は年中無休で、日曜日だけは委託をしている、という形をとっています。 

他の自治体ができているということは、自治体によって優先順位がちがうということだと思います。

たとえば、世田谷は、学童保育を全て学校内に移し、遊び場としての全児童対応も始めていますが、全て直営です。児童館はそのまま残っているので、むしろ人件費や設備整備に、よけいにお金を投入していることになります。つまり、直営だから、できない、のではなく、何を大事だと考えるか、だと思います。そのためにはどう工夫すればよいのか、考えることだと思います。 

大田区の保育園では休日保育や延長保育枠ほとんどが民間(民営化されたり民間委託されている)の保育園です。区民の暮らしを支えるべき公務員が困難なところを民間に任せているのはどうしてでしょう。

直営だとできないという理由を教えてください。 

児童館は、18歳までの子どもを対象としている施設ですが、大田区の児童館は、高校生は使えませんし、中学生にも使い勝手が悪くほとんど利用されていないということになります。 

 

★中高生の興味やニーズに合った施設づくりを

他の自治体の児童館の中高生プログラムをみると、やはり、バンド、それにヒップホップダンスも人気です。品川区では、平成18年に学童保育を全て児童館から学校の中に移した機会に、児童館の空いたスペースを利用して25館のうち9館を、中高生向けに整備しました。それぞれにスポーツ、バンド活動・ダンス、演劇などができるように館ごとに特徴を持たせ、中高生はそれぞれ、目的をもって集ってきます。乳幼児から高校生までが集う館でありながら、ルームシェア、タイムシェアで、それぞれの活動を楽しんでいます。平日は6時、週2回は8時まで開館し、年末年始以外、年中無休です。見学させていただいた八潮の児童館はティーンズプラザという名称でもありますが、特にスタジオが充実しており、バンドの練習が盛んで、年間の利用者が中高生だけで1万人近く。区内の商店街のイベントに児童館がタイアップしてダンスやバンドのライブコンサートが頻繁に行われており、若者の力を利用しての商店街活性化も定着してきているとのことでした。地域の大人から、準備、運営まで任され、発表の場が与えられることで、リーダーシップが育ち、多世代交流の経験をへながら、地域の一員としての役割を果たすことで、自信と地域への愛着が深まっているとのことです。 

中高生にバンド練習やヒップホップダンスを練習する場所、発表する場所を区内施設の中で提供できるところはありますか。

大田区では中高生の興味やニーズに合った施設づくりができていません。たとえば、蒲田の路上では、時々ストリートダンスを練習している若者をみかけます。本庁舎の前の通路やアプリコの前の広場をダンスのステージにして、発表の場にすることはできないでしょうか。