区民の暮らしに寄り添った予算を ~大田区議会第1回定例会 予算特別委員会報告
3月26日で第1回定例会・予算特別委員会が終了しました。 大田区の1年間の予算を決める重要な会議です。
4月から消費税が8%になりますし、防災に要する費用の財源にするための復興増税が特別区民税と都税合わせて1,000円、今後、10年間徴収されます。国民健康保険料も上がります。先の見えない大型公共事業より、今、必要な待機児対策と高齢者施策、区民の日々の生活に寄り添った施策を優先して展開すべきではないかと考え、2014年度予算に反対いたしました。
以下、予算への反対討論です。
一般会計総額2,420億2,235万円という、昨年に対して4.2%増、過去最高額という予算、「地域で総合防災力を強化、元気で安心な国際都市をめざします」というテーマが掲げられています。
しかし、「防災力」にしても「国際都市」にしても、生活の基盤がしっかりしてこそのものです。日々の「暮らし」の中の、多くの区民の求めている本当の「安心」につながる予算になっているのかどうか、特に消費税増税という大きなハードルを越えるからには、しっかりとした着地点、明るい道筋が見えなければなければならないと思います。
保育園の待機児対策は、大田区最大の課題だと考えます。子育て支援であるとともに、女性の就労は家庭経済、ひいては社会全体の安定化、経済活性化にもつながります。
インターネットで知ったベビーシッターに子どもを預けて、子どもが亡くなったという痛ましい事件がありました。子どもと子どもを育む家庭自体を社会が守るというスローガンがあったはずですが、いつの間にか、格差社会のひずみの中で、子どもの人権さえも危うくなっているのかもしれません。
公共の役割は質を担保した保育園の増設、長時間労働の是正や育休がしっかりとれるなど制度を整えて、子どもを社会で育むという風土を作ることです。まじかに施行される子ども子育て新システムに向けて、実態に即した、子どもの最善の利益をめざした施策を願うものです。
虐待、いじめや不登校・ひきこもりと家庭と児童の問題は依然続きますが、子どもの成長は待ってくれないので、その対策には力を入れるべきです。少なからず、経済的な不安定さも背景にあるといわれています。
小中学校で就学援助を受けている家庭は、一時期よりは減ったとはいえ、28パーセント。全体の4分の1以上にもなります。経済困窮家庭の子どもへの早いうちからの学習支援は、その後の学習の基礎をつくることになるばかりではなく、自己肯定感を育み、心の安定にもつながる、家庭とはまた別の居場所の機能をもつ可能性があります。
大田区の未来を担う子どもたちのために、福祉と教育との連携も模索する時代であり、早急に取り組むべきことの一つと思われます。
児童の問題と同時に、若者の就労をサポートする機能も必要だと思われますが、若者にかける予算の配分はほとんど見られません。もっと積極的に「子どもや若者の成長・発達」にかかわる支援に取り組むべきです。
また、高齢化社会を迎えて、区民は先行きに安心感を抱けるでしょうか。
介護予防サービスが自治体に移行、特養の入居者が要介護3以上に制限されるなど、大きな制度改正が行われようとしています。独居高齢者が増える中、コミュニティーの再生は高齢者にとって命綱にかかわることだと思います。要になる地域包括ケアシステムのあり方、地域包括センターや特別出張所、社会福祉協議会の役割など、地域の実態・ニーズに即して、新たな再編も視野に強化していかなければならないと思います。
今回、社会福祉協議会に対する助成が1千万円も減額されていることは大変残念です。地域の課題解決のために市民活動と連携して、地域力をバックアップするのが社会福祉協議会であり、今、まさに再構築しなければならない地域コミュニティーの推進役でもあるはずです。
さまざまなボランティア活動の推進とコーディネート、地域の中に高齢者の居場所、サロンをつくる支援、成年後見人の養成など、その守備範囲は時代と共に広く深くなり、その重要性・必要性はとみに増しています。会費制度だけでは不安定であることから、消費税増税分を社会福祉協議会に組み入れてでも強化し、今、まさに事業拡大とその充実に努める分野だと思います。
高齢者の住宅問題も深刻です。自立の支援を受けながら、低額で入居できる、区立おおもり園が廃止に向けて入居者を取っていませんが、今後低所得で、自立に不安を覚える高齢者の住まいはどうなるのか、心配です。
非正規雇用や失業で十分な蓄えがなかったり、満額の年金には満たず、月5万円ほどの年金で暮らす人も少なくありません。月1万円で入居できる、おおもり園のような施設は形を変えたとしても拡充されるべきですし、特養も、都市型軽費老人ホームも圧倒的に足りません。生活の基盤である住まいの問題だけを見ても今回の予算では安心への方向性を見つけることができないのです。具体的な安心に向けての計画が必要です。
予算のうち、大きな割合をしめるのが、新空港線や、連続立体に関する再開発、跡地の産業交流施設など、新たな施設整備です。特に産業交流施設は、国からの補助金を呼び込むことで、施設整備ができるとしても、それが大田区にとって恒久的な利益につながるのか、未知数です。
不確実な未来への危険な投資よりも、今ある区民の生活基盤の安定と、なにより子どもたちの成長のために環境を整えることが最優先課題であってほしいと思います。
障害者に対する施策として大森駅のエレベーター設置の検討、また福祉費では地域生活支援事業の予算の増額は障害があっても、地域の中で行動しやすくなる共生社会の充実に向け、評価するものですが、さらに予算全体で人に寄り添った事業を充実させるべきです。区民の生活実態に即した区民の生活を助ける社会保障の拡充にもっと比重が置かれるべきだと考えます。
以上のことから、2014年度大田区一般会計予算に反対いたします。
毎年のように保険料があがり、区民にとっては大変大きな負担になっています。高額医療が増えていること、後期高齢者医療保険に移行することで国保加入者が減少しているということが、その主な理由だと説明を受けますが、その理屈でいえば保険料はどんどん上がるばかりです。
滞納率も高く、区は収納強化に努めているとのことですが、非正規や自営業の人が多く、社会保険の場合とちがって、国保は全額自己負担で、しかも低所得層が多い中、収入に対しての負担率は大変高いものになっています。
このように、制度的に問題があり、制度の見直しを図らないことには、病院にかかれないために重症化する人が出てくるなど、問題は深刻になるばかりで、制度設計に大きな矛盾を抱えています。保険者として大田区は、国への意見書を出すなどの策を練るべきです。
さて、このことに加え、先日、第2次の国民健康保険事業特別会計の補正予算の討論で指摘したように、見積もりより多く集まった保険料と、その結果、一般会計からの繰入れ金が、財政基金取り崩し分と合わさって、施設整備資金積立基金に流れる構図ができているとしたら、問題であり、本来の目的にそって、区民に還元するべきだと指摘しました。
このように制度の問題、また保険料の見込みの算出方法、余ったときのお金の流れのあり方、など大幅な保険料の値上げがなされるのであれば、なおさら、区民の納得のいく形を求めるものであり、反対です。