『さやま市民大学』 狭山市に平成26 年に誕生した市民大学へ行ってきました
平成26年に誕生した「さやま市民大学」は、社会人向けの「生涯学習」の学びの場です。
(学校法人の大学ではありません)
以前に↓こちらの記事
⇒地域の課題解決 「学び」の場から実践の場へ ~行政と市民との協働~
で、ご報告したことがありますが、今回は訪問をして、実際にお話を伺ってきたので、その報告をいたします。これからの行政と市民との「協働」のあり方において、大いに参考になると思います。
■2つの大学が統合されたわけ
狭山市では、14年の歴史のある「狭山シニア・コミュニティー・カレッジ」と3年前にできた「狭山げんき大学」を運営していましたが、今年から「さやま市民大学」に統合されました。
なぜ統合されたのか、「さやま市民大学」は何をめざすのかを知りたくて、活動拠点である「狭山げんきプラザ」にでかけてみました。
まず、「狭山シニア・コミュニティー・カレッジ」 ですが、55歳以上が対象で、目指すところは、「高齢者の生きがい、仲間作り」と「社会参加」です。修了者を中心に「学校支援活動」の受託もされるほど、 市との協働の歴史がありますが、課題としては、高齢者だけの仲間作りになってしまうこと、座学が大半で、実践的な「起業」への道筋が弱いことがあったそう です。
一方、「狭山げんき大学」は、16歳以上が対象で、行政だけでは解決できない地域課題を市民協働で解決していくために、「起業」などを通しての社会貢献、地域のリーダーを養成しての「まちづくり」を担うことをめざして始められました。
活躍の場をコーディネートする「地域連携推進室」も設置し、修了生の相談事業、地域との取り持ち、応援・フォローアップの仕組みも作りました。課題は、全体の運営のノウハウが行政には乏しいことがありました。
時代は、急激な少子高齢化。地域の課題解決のためには、2つの大学の、それぞれの課題を克服しつつ、統合による相乗効果、バージョンアップを期待して、高齢者だけではなく、市民全体を巻き込んでの、「まちづくり」をすることをめざす「しみん大学」に作り替えました。若い人も、母親も、そして子どもたちも楽しく集える場にしていきたい、という願いがあったそうです。
運営主体は市民に。市民と行政との協働による「まちづくり」のための事業の推進です。そして、今年初めての募集をして、どの教科も定員いっぱいだったそうです。
■運営を市民に
「狭山げんき大学」 の修了生たちが、一般社団法人「街活さやま」をつくり、「さやま市民大学」の運営を担うこととなり、学長は、「協働」の高い理想を持つ「西武文理大学の名 誉教授・小山周三先生」が市長から委嘱され、スタートしました。行政からの天下りのポストはなく、運営委員会には行政側も加わりますが、対等に会議は進め られるそうです。
■まちづくり学科では、現地視察も
商 店街の活性化は大きな課題。世田谷区烏山の商店街、板橋区の大山ハッピーロード、そして今年は、秩父のみやのかわ商店街など、成功事例を見学するそうで す。みやのかわ商店街では、都会に一度出ていった後継ぎが次々戻ってきて、後を継ぎ、暇になった先代がまちづくりに一生懸命になるのだとか。
●さやま市民大学の目的
・まちづくりを担う人材の育成
・学びの成果を地域社会のなかで活かす仕組みづくり
・学びを通した生きがいづくりと仲間づくり
運のいいことに伺った日に、偶然、学長にお会いすることができ、お話を伺うことができました。
■学長語録
・これから行政のすることは、従来型の生涯学習ではなく、社会貢献の場づくり、人づくりです。市民力に投資したら、それは市にもどってくるのです。毎年、400人の受講生が巣立っていって、地域の力になっていったら、どうだろう。
・ 「強制」でも「お願い」でも、「お膳立て」でもだめ。安心して、「住みやすい地域にしたい」「何かしたい」、「役に立ちたい」という自発的な強い意志、下 から盛り上がったものからしか、まちづくりの担い手は生まれてこない。市民を信じて、市民の発想を生かしていくことから、市が活性化する。
・「くれない族」や「ぶらさがり族」の市民にはなりたくない。自分で、このまちをなんとかしようという主体的な市民を育てる。「まちづくりは、幸せの社会デザイン」そのための勉強は、おもしろ、おかしいものではだめ。回数も多く、レベルの高いものでなければいけない。
・助成金が、起爆剤になればいいかもしれないが、持続的な活動になるためには、まず、受け皿が育っていないといけない。行政は見極め、フォローする必要がある。狭山市長が「協働型社会づくり」をめざしているのは、喜ばしい。
・自治会だけの力ではおよばないこともある。あて職ではなく、本当のリーダーが自治会をリードしていったら、活性化する。まちづくりを志す人が、自治会のリーダーに手をあげていき、市民活動といっしょになって活動していくことが理想。
・「私にだって、できるかもしれない」と思えるのは、市から言われてのことではなく、地域の仲間からいわれることによる。
人との交流がとても楽しい、という学長でした。
学長さんと
■レストラン「コミュニティカフェ」
料理自慢の市民が、週に1回毎日「日替わり」で料理をつくる、ワンデイ・シェフ方式のレストランがあります。食事を提供するだけでなく、朝採りの地場野菜の販売コーナーもあり、地域の方が、交流をし、居心地のよい「居場所」をめざしています。
●シェフのいろいろ
月曜日は、障害者の団体
火曜日は、セミプロ
水曜日は、地域の主婦のグループ
木曜日は、元レストランのシェフ
(高齢になったので、店は辞めたけど、週に1回くらいは作りたいということで、参加しているそうです。この方が、全体の指導やアドバイスもしてくださるそうです。)
金曜日は、そば打ちの得意な学長
がシェフを務めます。
レストランの運営に際しては、月に一度、運営会議を開いて、評価をしあうそうです。
私のいただいたメニューは、キノコのスープ、卵とインゲンのサンドイッチ、中華おこわのおにぎり、朝採りキャベツのサラダ、お替り自由のコーヒーで、500円でした。
■校舎の改修
4 億8千万円をかけて改修した元小学校は、授業の行われる教室の他に「インキュベーションルーム」という起業した当初、事務所として貸しだされるスペース、 受講生のための託児ルーム、たたみの部屋の交流ルーム、コミュニティカフェ、パソコンルーム、地域連携推進室、農業を始めた卒業生の朝採りの地場野菜の販 売をするホール、など、工夫が施されています。市民の新しいアイデアがきっとさらにどんどん加わっていくことでしょう。
説明をしてくださった、「街活さやま」の方のお話で印象的だったのは、「定年後に家にばかりいてもつまらなかった。仕事をしたい人はシルバー人材センターにいけばいいし、ここはほとんどボランティアだけど、新しいイベントを考えたり、多世代交流もあって、創意工夫ができるから楽しいよ」
定年はとっくに過ぎた年齢の方々でしたが、実に生き生きとされていました。やっぱり楽しいのが一番ですね!