「集団的自衛権」は必要でしょうか

戦争のできる国へ

安倍首相が、「集団的自衛権」を容認する憲法解釈の変更を検討する考えを表明しています。日本国憲法では、①一切の戦争の放棄 ②戦力の不保持 ③交戦権の否認という徹底した平和主義がうたわれているのにも関わらず、です。

集団的自衛権と個別的自衛権

【1】 集団的自衛権:自国が攻撃を受けていなくても自国と同盟を結んでいる国が攻撃を受けた場合に、同盟国と共に又は、同盟国に代わって反撃する権利。これま で、歴代の政権は、「集団的自衛権」の行使は、戦争の放棄を掲げた憲法9条のもとで許された「必要最小限度の実力行使」の範囲を超えると解釈し、禁じてき た。

【2】個別的自衛権:自国が攻撃を受けた場合に反撃する権利。

武力行使である「集団的自衛権」が認められれば、海外での戦争への参加が可能になるのは確かです。

イラク戦争では、大量破壊兵器があるという誤認から、米国がイラクへの攻撃を始め、日本もイラクに航空自衛隊を派遣しました。実際、戦闘に加わらなかったとしてもアメリカの側に立ち、イラクに踏み込んだことの責任は決して小さくないはずです。

亡くなった多くのイラク人はなぜ、殺されなくてはならなかったのでしょうか。(米軍侵攻後の死者はイラク政府発表、15万人。アメリカ政府発表、3万人前後)
その検証や反省もないままに、また戦地に赴く、危険な道を選択しようとしているのです。

戦力は抑止力になるのか

「戦力をもつことが抑止力になる」という人がいますが、その考えで行くと武力を持つことの果て
しない競争が終わらなくなります。


平和への最大の武器は憲法

第 2次世界大戦の反省から生まれた憲法、その徹底した平和主義の思想のおかげで、70年近く戦争をせずに来られたのではないでしょうか。「憲法」は平和を維 持するための「知恵の結集」なのではないでしょうか。その意味では、まだまだこれから「憲法9条」は世界貢献ができるはずです。日本は、この武器を持っ て、戦争のない世界を実現するために先頭をきって平和外交に努めるべきです。

安倍首相の「憲法が国民の命を守る責任を放棄せよ、と言っているとは考えられない」という発言には、大変驚きました。国民の命を守るとは、どういうことでしょうか。交戦することで国民を守れると、本当に思っているのでしょうか。

以前、朝日新聞の記者だった、伊藤千尋さんの講演会を聞いたとき、とても印象に残る話があったので、ご紹介します。


日本の次に平和憲法を創ったコスタリカ・軍隊を捨てた国

日 本は自衛隊という軍隊をまだ持っていますが、コスタリカはすっかり軍隊を捨てました。内戦の経験から、“軍隊があると社会がだめになる”、“軍事費は社会 の発展の役に立たない”と考えたのです。そして社会の発展のために何が必要かを国会で話し合い、「教育」こそが、社会の発展の基盤になると結論づけて、軍 事費は全部、教育費にして、“兵士の数だけ教師を”、“兵舎を博物館に”というスローガンで、平和と福祉を重点にした発展を目指しました。

またアリアスという大統領は、戦争をしている隣国3つに対話による解決を説得し、戦争を終結させることもしたそうです。

この大統領の言葉「私たちにとって最も良い防衛手段は、防衛手段を持たないことだ」はまさに、憲法の精神です。

コスタリカでは、小学校1年生から、「人は誰も愛される権利がある」という言葉を教わり、徹底的に基本的人権を教えられるそうです。そして「自分は国から愛されていない」と感じることがあれば、すぐ憲法を使って、違憲訴訟を起こすそうです。

一方、日本はどうでしょう。沖縄の基地のそばで、爆音に悩まされている人々、いまだ放射線の影響が心配される中で暮らさざるを得ない福島の人たちは「国から愛されている」と感じているでしょうか。

アフリカ沖、カナリア諸島に「憲法9条の記念碑」
グランカナリア島テルデ市の真ん中に、「ヒロシマ・ナガサキ広場」があり、「憲法9条の記念碑」もあるそうです。なぜか。

市長さんが、市の中心部にある広場だから、“市民が平和を考える広場にしたい”、それなら戦争の悲惨さの象徴のヒロシマ・ナガサキの名と世界平和をめざす憲 法9条を記念しようと考えたそうです。市議会に予算要求をして、満場一致で、提案可決、広場と美しい記念碑がつくられたということです。

1996年に行われた、その除幕式。おもしろいのは、集まった数百人がみんなで、ベートーベンの第9「歓喜の歌」を歌ったそうです。9条に第9! 合いますね。
“世界の平和のためには、憲法第9条が必要だ”と考える人が、日本以外の国にもいるということは、日本人として誇らしいことです。

*以下参照

活憲の時代 コスタリカから9条へ―こころを熱くする伊藤千尋・講演集 (こころを熱くする伊藤千尋・講演集 1) 活憲の時代 コスタリカから9条へ―こころを熱くする伊藤千尋・講演集 (こころを熱くする伊藤千尋・講演集 1)
(2008/05)
伊藤 千尋

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「戦争をさせない1000人委員会」運動が発足しました。
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現政権は、憲法の原則である「国民主権」や「基本的人権」を侵害する「特定秘密保護法」を強行採決・成立させ、今度は、「集団的自衛権」を容認する憲法解釈にまでふみこもうとしているのです。

だ れのための、何のための「憲法」そして「9条」なのか、子どもたちの将来のために、平和な世界を築くために私たちはしっかり考え、行動しなければならない ときを迎えています。ノーベル平和賞の候補にもなっている、この憲法9条を「集団的自衛権」行使で、骨抜きにするわけにはいきません。