大田区立中学校生徒海外派遣報告会 「次にめざすのは世界平和」
9月21日、池上会館で開催された、大田区立中学校生徒海外派遣報告会に参加しました。
中学生たちが、そのみずみずしい感性で、どんな経験をし、何を感じ、学んだか、とても興味深いものでした。映像を使って具体的に報告がなされ、中学生にとって、感動的で、実りあるものだったようで、この派遣事業の意義を感じるひとときでした。
今年で、30回を迎える取組み、今回は、7月25日から8月5日にかけて、全中学校2年生、男女2名ずつ、28名ずつが、Aコース、アメリカ合州国(ボストン、セーラム、ニューヨーク)、Bコース、ドイツ連邦共和国(ミュンヘン、ブレーメン、ハンブルク)に分かれて派遣されました。目的は、「国際感覚を養うとともに、その成果を各学校で発表し国際理解教育の推進に資する」とされています。事前に10回もの研修(語学・個人課題準備・合唱練習)が行われ、派遣に備えたそうです。
現 地では、8日間のホームステイが中心ですが、市庁表敬訪問や市内見学があり、現地の歴史や文化、産業などを学ぶ体験がありました。とりわけホームステイで の現地の家族の一員として過ごした経験は生活習慣や文化の違いに驚くと同時に、優しく温かく受け入れてもらったという経験が中学生たちには大きな感動だっ たようです。ホストファミリーとの別れは辛く泣いてしまったという報告が印象的でした。
■“違い”より、“共通点”を見つける
派遣生徒代表挨拶のなかで、「違いより、同じ点を見つけてくるように」と出発に際してもらった言葉を受けて、「違いはたくさんあったけれど、ジェスチャーなど身体表現は同じだった」と報告をしていましたが、この派遣を通して、“国境を越えて人として共通のこと”を肌で感じたことは、今後の社会・世界に貢献する一員として大事な土台になることだと思いました。最後の中学校長会長のあいさつのなかでの、「次にめざすのは世界平和です」との言葉によって、よりこの派遣事業という体験的な「教育」の理念が示されたように感じました。
■個人課題から・中学生の考察力
56 名、それぞれが研究テーマをもって、この海外派遣に望んでいました。「アメリカの農業と食文化」「アメリカで人気の日本の漫画」「ドイツのペットボトルの リサイクルについて」「大田区とブレーメンの街並みの比較」など、事前に勉強してさらに現地で観察やインタビューなどを通して、報告にまとめていました。 どれもとても興味深く、池上会館展示室に展示されているそれぞれの報告に見入ってしまいました。その中の一つに注目してみます。
ドイツの家庭でのエコ活動
大田区とセーラム市のワークライフバランスについてのレポート
●魔女狩り Salem’Witch
セーラム市には、魔女博物館があるそうです。
ある中学生が魔女狩りの歴史を調べて、現在、セーラム市にその博物館のある意味を考えています。
*魔女狩りとは
ヨー ロッパ中世から18世紀ごろまで続いた一連の迫害。社会の破壊を企む「魔女」という疑いをかけられたものが、裁判や刑罰を受けた。宗教や世俗権力の拮抗が 原因だともされていたが、現代では、歴史上の魔女狩りの事例の多くは社会不安から出来した集団ヒステリー現象であったとも考えられている。(参考:ウィキペディア)
彼 女の報告を読んで、以前、岩波新書「魔女狩り」で、中世ヨーロッパの暗い歴史を少し学んだことを思いだしました。格差社会など社会不安も影響して起きる迫 害はたとえば、1960年代~70年代の中華人民共和国での1千万人以上が虐殺されたともいわれる文化大革命、日本においても関東大震災のときに、朝鮮人 や中国人が心無いデマから虐殺されたという事件がありました。
彼女が指摘しているように、負の歴史をしっかり見つめ続けることは、教育に必要なことなのだと思います。“負の歴史であっても、真実をしっかり見ていきたい”という向上心のある中学生たちの存在に大きな希望を感じました。
「次にめざすのは世界の平和です」から、世界の国々と本当に理解しあって、友好関係を持つための土台の一つの要「歴史」を真摯に振りかえっていきたいものです。
とても学ぶことの多い一日でした。感謝!