大田区議会決算特別委員会-決算に反対した理由:喫緊の課題に応えているか?

超高齢社会への備えは?

「孤独死」は今、どのくらいあるのでしょう。
大田区は実態把握をしていません。

なるほど例えば高齢福祉課は65歳以上がその対象ですが、孤独死で亡くなる人は50代、60代の一人暮らしの男性が多いといいますから、対象外です。「孤独死の定義があいまいだから」といいますが、制度の狭間にあることで、集約がなされないわけです。

しかし区民の側からするとだれにも気が付かれないで何日も放置される死に方「孤独死」は、とても悲しく、できるだけ防ぎたいものです。このことはほんの一例ですが、区民の求めるものと縦割り行政の中での、捉え方のずれがあることは確かです。

大田区議会決算特別委員会での討論内容を以下にご紹介いたします。


大田・生活者ネットワークは、ただいま上程されました第53号議案 2013年度大田区一般会計歳入歳出決算の認定に反対し、第54号から第56号の各特別会計の認定に賛成の立場から討論いたします。

今 年は、介護保険制度の改定という大変大きな節目を目前に控えた年でした。東京の総人口は2020年の1335万人をピークに加速度的に減少すること、高齢 者人口は、2010年の268万人からピークを迎える2050年には441万人と、40年間で約6割増加。対照的に生産人口は、2050年で631万人と 2010年比で3割減です。高齢者単身世帯は、2010年の62万世帯から2050年には116万世帯と、40年間で1.9倍に増加します。

このように人口構成が大きく変化していこうとしているこの時期、まず少子化対策と高齢社会への備えが再重要課題といえるでしょう。

大 田区の福祉政策を、特に超高齢社会への備えという観点から見てみると、介護需要が爆発的に増えていくなか、大田区がまずやらなくてはならないことは、これ までの介護保険のあり方や状況の実態把握と検証、地域ごとの人口構成、高齢化率や独居老人の数、現在行われている介護事業がどうであって、何がどれくらい 足りなくなるか、現場からの情報収集をもとに大田区の各地域にあった地域包括のデザインをしていくことです。ヘルパー不足は現在でも各事業所の悩みです が、今後、生活支援サービスの担い手をどのように確保するのかが、区民生活に直結していきますが、今決算書ではみえてきません
サービス低下につながらないか区民の心配するところです。

国 民生活基礎調査によると、2013年度介護をする側とされる側がいずれも65歳の「老々介護」が初めて5割を超えたと発表されましたが、地域を見回すと高 齢者の一人暮らし、また介護を担っているのがまだ家族の方が多く、介護離職、あるいは介護疲れからの虐待など、厳しい状況があるのです。地域包括支援セン ターにつながるべき人でつながっていない人も多く存在しています。施設より居宅介護を今後の方針とするならば、この決算委員会でも多くの議員からの指摘が あった「地域包括支援センター」の数と機能の拡充はまず、必須であり、地域の相談窓口になってもらわなければ困るのです。

大森北で支え合い活動をしている団体からの報告で、孤独死がこれまでは集合住宅で多かったけれども最近は戸建て住宅で増えていると いう報告を受けました。そこで、福祉課に「孤独死」の実態を把握しているかと尋ねたところ、「孤独死」という定義はあいまいなので、特に把握していない、 との返答でした。なるほど例えば高齢福祉課は65歳以上がその対象ですが、孤独死で亡くなる人は50代、60代の一人暮らしの男性が多いといいますから、 仕事の範疇の対象外です。行政サービスとの結びつきがなければ、制度の狭間となり、したがって集約がなされないわけです。

しかし区民の側 からするとだれにも気が付かれないで何日も放置される死に方「孤独死」は、地域にとっても悲しくできるだけなくしていきたいもので、そのためにはどうして いけばよいか、地域の住民は考えていきたいことでしょう。このことはほんの一例ですが、このように区民の求めるものと縦割り行政の中での、捉え方のずれが あることは確かで、区民生活をどのように支えていくか、地域の課題は何か、ということをまっすぐにとらえ、対策をとっていってほしいというのが、区民の願 いです。そのためには、なにより行政職員が区民の生活実態を知ることであり、縦割りを乗り越える仕組みが必要なのではないでしょうか。

観 察医務院での調査によると東京23区で平成18年、年間に3,365件、つまり一日10人の孤独死があり、死後発見平均日数は男性12日、女性6日だとい うことです。平成18年でこの数字ですから、現在、どれだけ増えていることでしょう。このことが意味することは、一つには、地域の中のコミュニティーがな くなっている中での自治体の役割を改めて考えなくてはならないということです。町会だけでは限界があるのです。

最近、高齢福祉課から、「生活支援サービス等実施団体助成事業」の募集がありますが、立ち上げ資金だけの助成です。いかに継続した安定したサービスを創りだしていけるのかが問われる、非常に責任のある仕事を担う主体を呼びかけているわりには、事業継続性をどのように考えているのか、疑問があります。

助 成事業に対していえることは、地域振興などでの助成制度においてもそうですが、区民を育成し、共に区政の課題を解決する仲間として事業の継続の実現を考え ることに意義があるのではないでしょうか。住民福祉に有用な事業を持続的継続的に行える仕組み、単なる一過性のバラマキにならないような税金の有効な使い 方、活かし方を心掛けていただきたいものです。

また、大田未来プラン10年で計画されていた「生涯学習センター」も未だ実施されてはおらず、区民主体の地域づくりを最も必要とする時代に人材育成・活動育成の拠点作りに結び付いていないことを残念に思います。

建 物の絶対高さ制限のルールが決められようとしています。指摘があったようになぜ、2階3階の家ばかりの地域に27mまでの高さまでを建ててよしとする案が でてくるのでしょうか。自治体の役目は公平な住民福祉ではないのでしょうか。長く住んでいる人が安心して住みつづけられる落ち着いた住環境を区民視点で もっときめ細かに考えるべきです。

限られた財源だとしたら、その優先順位は人を育てる、生活を守るということを第1意義的にするべきです。99億5千万円という多額の不用額があることを思うともっと積極的に区民サービスに活用できなかったのでしょうか。

教 育費の割合は23区中最も低い方だった昨年より、さらにポイントが下がっています。子どもの教育環境を整えるのは、未来への投資、最も基本的な自治体の役 目です。学校図書館も大事な教育施設の一つです。子どもたちに本との出会いを保障するためにも、子どもの貴重な居場所としても、また授業支援としてももっ と学校図書館が有効に活用できるように専門的知識をもった学校司書は、ぜひ配置するべきです。

以上、長期的な展望をもって、区民生活の実態に基づいた政策、福祉・教育・まちづくり、区民の力を最大限に活かすための仕組み作りに今後、期待することとして、反対討論といたします。