高遠菜穂子さん講演会  対テロ戦争とは何か? 泥沼のイラクから学ぶ

先日高遠菜穂子さんの講演会に行ってまいりましたのでそのご報告です。


集団的自衛権の行使を許してはならない。むしろ、イラク政府に対して、憲法9条を示して、強く平和を訴えるべき。外から見ると今の日本は鎖国状態。国内完結ではなく、平和学を構築して世界に訴えるべき。それができたとき、9条がノーベル賞をとれるのではないか。

高遠菜穂子さん(イラク支援ボランティア)の講演会
「イラク・戦争・平和を語る」 を聞いて

10月31日 消費者生活センターにて
主催:戦争させない1000人委員会東京南部主催


対テロ戦争とは何か
泥沼のイラクから学ぶ

泥沼のイラク
長 い歴史の中で、民族紛争の続く中東だが、アメリカの軍事介入から完全撤収までの2003年から2011年までの「イラク戦争」は「大量破壊兵器の存在」と いう大義名分のもとの「対テロ戦争」であり、米軍による激しい攻撃で街が破壊され、多くの民間人が犠牲になった。民主化どころか、国家が破たんし、現在も イラクは内戦化、混乱と泥沼の出口が見えない最悪の状況。結局、「大量破壊兵器の存在」はなかった! 当時の小泉首相は、即座にアメリカ支持を表明し、非 戦闘地域ではあったが、自衛隊を派遣した。
イラクは、「テロの最大の被害国」であり、そのような状況にしてしまったのは、「イラク戦争」という 「対テロ攻撃」を支持した私たちの責任でもある。「対テロ」を使えば、どんな「民族浄化」も可能になるという最悪の顛末をイラクに見ることができる。現在 も「対テロ」として、反政府デモに攻撃という形で、スンニ派への迫害は続いている。


イラクの現実が報道されない日本

最 近の日本ではかろうじて、「イスラム国」のことが報道されるのみ。イスラム国以上に残酷なのは、イスラム教シーア派の現独裁政権。イスラム教2大宗派の一 つ、スンニ派に対しての迫害は残酷を極める。イラク内務省が警察と治安部隊を使って行った「スンニ派浄化作戦」は、2005年から2007年までに、内臓 を取り除かれて医療縫合をされたおびただしい数の遺体が路上に遺棄されるという、残虐行為。この「死の部隊」の訓練は米軍によるものだったことが判明して いる。アブグレイブ刑務所での米兵によるイラク人囚人への異常な拷問も、組織的な拷問で、キューバ・グアンタモナ刑務所でも使われた拷問マニュアルによっ たもの。
どのような残虐行為がなされてきたか、また現在、なされているか、ほとんど、報道されてこなかった。

劣化ウラン弾
米 軍が大量に使用した、核廃棄物(劣化ウラン)を利用した弾丸・砲弾。重金属の貫通力に優れ、貫通後に燃焼温度が高まるので、焼夷効果が高い兵器。イラク戦 争後に先天性異常の赤ちゃんの出産が激増していることから、内部被ばくによる、遺伝子の損傷の疑いがもたれているが、因果関係が特定されていない。

白リン弾
手榴弾、砲弾、爆弾の一種。充填する白リンが大気中で自然燃焼すると吸湿して透過性の極めて悪い五酸化二リンの煙を発生させることを利用した、煙幕発生装置。イラク戦争では、照明と煙幕に使ったとされるが、多くの民間人が激しい火傷で命を失った。
陸上自衛隊では、富士演習場などで白リン弾を発煙弾としてのみ装備している。

米兵は今
イ ラク戦争で戦死した米兵は4000人から5000人といわれている。帰還兵病院はあらゆる年代の兵士であふれ、PTSD(心的外傷後ストレス障害)、眠れ ない、孤立感、悪夢などに苦しんでいる。自殺者は、完全撤退した今も止まらず、戦死者をはるかに超える数となっており、大きな社会問題となっている。ある 女性兵士は、戦地で子どもを殺したことで、帰国後出産したが、自分の子どもを見て涙が止まらない。離婚や人格破壊の問題、多数、報告されている。
 

日本の果たすべき役割
イ ラク戦争が起こる前は、民族紛争が続く中であっても、日本の企業がたくさん進出していた。それは、日本が「憲法をもつ国」「戦争をしない国」という信頼の レッテルがあったから。支援に入っていた医師や看護士も特別な信頼を得ていた。これからも「憲法をもっている日本」は中立の仲裁役としての役割が果たせる はず。
集団的自衛権の行使を許してはならない。むしろ、イラク政府に対して、憲法9条を示して、強く平和を訴えるべき。外から見ると今の日本は鎖 国状態。マスコミの中東に関する情報が圧倒的に少ないことが問題であるが、自ら積極的に情報を得てほしい。国内完結ではなく、平和学を構築して、世界に訴 えるべき。それができたとき、9条がノーベル賞をとれるのではないか。

 

 

 

 

 

 

 

高遠菜穂子さんと品川生活者ネットワーク・井上八重子さんと