レイチェル・カーソンが教えてくれたこと “いのちの循環”を見つめて~上遠恵子さん講演会ご報告
決して「経済」ではなく、「生命」です。
今、私たちは、分かれ道にいます。
もう一つの道は、この地球と生命を守る道。
決めるのはあなたです。
(上遠恵子)
レイチェル・カーソンは、大ベストセラーになった「沈黙の春」を著した海洋生物学者です。12月5日、luz大森で、レイチェル・カーソンの書著の多くを訳された上遠恵子さんのお話を伺いました。講演の最後に語られた言葉が、上記の文章です。
海洋生物学者であったレイチェルは、自然の偉大さ、生命の神秘を特に「海辺」の観察を通して、詩情豊かに語っています。しかし、人間はその自然の一部であるにも関わらず、大元の自然を破壊し始めました。
たとえば、近年、戦争の産物である殺虫剤DDTをはじめ、数知れない合成化学物質。その環境汚染は深刻で、警告したのが「沈黙の春」です。1962年の出版ですが、今読んでも全く遜色ない内容です。つまり事態はまったく改善していないのです。
原 発事故の放射能汚染。このこともレイチェル・カーソンは予見していました。人類は自然への畏怖を取り戻し、地球の一員として賢く生きていけるのでしょう か・・・上遠恵子さんも東京大学農学部農芸化学科研究室に在籍されていた科学者です。レイチェルと重なる時代を生きたことで、よりレイチェルの思想に共鳴 し、その思想を熱心に日本に伝えてこられてきたのです。
講演を要約してご報告いたします。
レイチェルの一生から、教えられることは・・・・
・子どもが育つときに大事なもの
子 どもが育つときは、母親がいっしょに歩きながら、自然を見つめることがどんなに大事なことか。小さなもの(昆虫など)が一生懸命生きている様子、“生命そ のもの”を見つめる、その時間を大事にしてほしい。「知ることは感じることの半分も重要ではない」(センス・オブ・ワンダー)
・進路は大いに悩めばいい。経験したことは全て活かされる
当 時、だれに相談しても、“女が科学を専攻するなんてとんでもない”といわれた。しかし悩んだ末、“自分の道は海に続く”と確信し、研究の道へ。やがて、好 きだった文学と科学が融合して作品が生まれていく。だから、進路については、大いに悩み、柔軟に考えるべき。どんなことでも“体験”が重要。どんなことが 先にあるかわからないし、すべての経験が生かされる時がくる。
・戦争の理不尽さ
第1作目の「潮風の下で」は戦争の 渦の中で出版。戦時下の食糧難の中にあって、「海から取れるタンパク質のことを書け」といわれた。言論の自由が奪われていく過程は、上遠さん自身の学生時 代と重なる。女学校1,2生のときは、英語の勉強ができたが、3年生になったらできなくなったり、「海辺の生物」という本を持っていたら、軍属に怪しまれ て呼び出されたこともあった。青春時代は戦争一色で、軍国少女たちが作られていった。もっと勉強したかった、という行き場のない怒り、虚しさが今もある。 今、特定秘密保護法などのこと聞くと、戦前の不安感がよみがえる。
・海・人間を必要としない世界
1950年に「われらをめぐる海」が大ベストセラーになる。社会にストレスを感じる人にとって、「人間を必要としない世界」があるということが癒しになったのだろうか。
・地球と人間
当時、DDTは安くて、効き目があるということで、奇跡の農薬と言われる。農薬散布も盛んに行われる。土壌汚染や健康被害は看過できない・・・自分の信念を言わなければならない、と決心したレイチェル。
地球は、命の糸で編上げられている。しかし人間がその編み目を破っている。生命の流れは全て神の手の下にある。しかし地球上の生き物がどんどん絶滅している。原因は人間の経済活動。人間という1種族が力を持ってしまったから。それでいいのだろうか。
最後に上遠さんは、「小さい子どもには、自然とたっぷり戯れる体験が必要です。でもうちの孫も庭の虫を見て、嫌がるのですよ。だんだん“自然”から遠ざかった生活になってしまうことが心配です」とおっしゃっていました。
私たちは、心して、大いなる自然に対して謙虚に、そして共存する生き方を考えていきたいものです。
⇒自然科学者レイチェル・カーソンの発言・格言・名言集【沈黙の春】 – NAVER まとめ
上遠さんと