地域まるごとケア 「家族まるごと、地域のみんなで支えよう」
“子育て支援”も“高齢者の見守りや介護”もまるごと地域の課題として取り組んでいる先進自治体の報告会が行われ、大変興味深いものでした。基調講演の報告と三重県名張市の事例を少しご紹介します。
2015年度地域まるごとケア・プロジェクト
地域包括及び子育て世代包括ケア先進自治体調査報告会
2月7日(日)発明会館ホール
主催:にっぽん子育て応援団
企画趣旨: 介護保険制度から生まれた「地域包括ケア」という考え方は、介護の世界に留まらず、地域で暮らすすべての人々に広げられるべきではないか。制度によって分 断された各種支援事業を、地域で暮らす人々をまるごと包み込むように利用していけるようになることこそ、地域での暮らしの実態にふさわしい仕組みになるの ではないだろうか。
基調講演
「地域まるごとみんなで支え合うコミュニティ構想」
にっぽん子育て応援団団長 樋口恵子
■危機的な超高齢社会・ピンチはチャンス
日本は今、大変な転換期に来ている。それは人口構造の変化で、少子高齢化は激しく、90代の人口増加率が一番高い。そして50代の男性の5人に1人、女性は9人に1人が独身という、結婚をしない国民になってきた。
長寿になってきたということは各世代が豊かに存在しているということ。平和と豊かさがあったからこそ、103歳のおばあさんが2歳の“やしゃご”を抱く光景がある。
しかし人生100年のモデルがない。高齢者の犯罪が増えてきているのは居場所がなくなっているからではないだろうか。特に60代後半の男性。
■支え合う地域性の構築
お 金持ちより人持ち:お金があっても介護する人がいなければ、生きていけない。いろいろな人の中で育ち、生きる環境作りを新たに模索しなければならない。昔 は子どもの数が多く、従妹も多かったが、現代は家族だけでは「集団」は形成できない。子どもはいろいろな人の中で育つもの。
■人たる者、望まれて祝福されて生まれるもの。未来の子どもたちもずっと。
賀川豊彦「子どもの権利」
「子どもには食べる権利、眠る権利、遊ぶ権利、夫婦喧嘩をやめてもらう権利、叱られる権利がある。」
こ れは今でも十分通用することばである。叱られるということは“何が悪くて何がいいのか”教えてもらうことが大事だということ。これにプラスして“褒められ る権利”も私は入れたい。“自信の根っこ”を小さいうちに育てること。大人まるごとから、よいものを子どもに手渡していきたい。
■地方行政の役割
国の省庁が縦割りなのはしかたがない。しかし、地方自治体は住民の人生100年に寄り添うべき。困りごとを抱える人や家庭に求められる支援はシームレス。質の高い民主主義を確立すべき。
樋口恵子先生と
●三重県名張市:名張版ネウボラの推進
人口8万人、15の地域づくり。
保健師が地域保健活動、地域診断により母子保健や子育て支援における課題と強みを整理し、地域の強みである既存資源(人・物・仕組み)の力を引き出し、コーディネートすることで必要とする支援を住民とともに生み出すことをめざす。
ネウボラとは、妊娠・出産・育児の切れ目のない相談・支援の場、システム。
まちの保健室・チャイルドパートナー
地 域ごとの公民館には「まちの保健室」があり、妊娠段階から出産・育児までを継続的に相談支援を行うチャイルドパートナーが配置されている。地域ごとのチャ イルドパートナーと地域の子育て支援の取り組み、子ども支援センターや保育園が連携しながら、母子保健コーディネーター(保健師・助産師)とともに,保 健・福祉のサービスと利用者、人と人、人と地域を結びつけ、全ての妊産婦や乳幼児の保護者に対する伴走型の予防的支援できる環境をめざす。