正しい戦争なんてない。どこの国であっても、命の重みも子どもを亡くして流す母親の涙も同じ
4月25日は、大田区民プラザで行われた「大田憲法会議」主催の「oota 憲法 スクール」に参加しました。
イラクから見る日本
~暴力の連鎖の中で考える平和憲法~
講師:高遠菜穂子さん
(イラク支援ボランティア、「イラク戦争の検証を求めるネットワーク」呼びかけ人)
イラクで現在も人道・医療支援活動をされている高遠さんは、今、現在のイラクの状況、未だに戦乱の続く様子を映像も含めて、生々しく伝えてくださいました。
小さな子どもたちの黒焦げの映像には、大きな衝撃を受けました。「対テロ」といいながら始まった戦争が、どれだけ罪のない人たちの命を奪い、悲しみを産んでいることか、私たちは、この13年にわたるイラクの現実から何を学ぶことができるでしょう。
「紛争解決には武力を用いない」とする憲法9条の意義をかみしめるものでした。
以下報告です。
●イラク戦争は終わっていない。憎悪は増幅する
2003 年から始まったイラク戦争は、現在も続き、戦後最悪、地獄の状態。イラク戦争前は、サダム・フセインの独裁下ではあったが、イスラム教徒のスンニ派とシー ア派は、仲良く共存していた。アメリカの介入が、宗派対立を引き起こし、内戦は不信と憎悪からドロ沼化した。武器供与は常にアメリカ。そのような中で反米 感情を誘い込む ISが強大になり、その爆弾テロの恐怖に加え、イラク政府軍の対テロといいながらのスンニ派狩りと無差別空爆、米国を中心とする有志連合の空爆も橋や施設 などのインフラ、民家を破壊し、国内難民は320万人といわれる。こうなる前に国際社会は手をうつべきだった。アグレイブ刑務所でのイラク人に対する米軍 による人権侵害もイラク人は忘れることができない。
●平和国家ジャパンのブランド力が崩れた、サマワの自衛隊派遣
イ ラク戦争前のイラク人の日本への認識は、「日本には軍隊がない」「日本は戦争をしない」「日本は広島・長崎の原爆投下から奇跡の復興を遂げた」というも の。アメリカから劣化ウラン弾を落とされた辛い経験は、日本へのシンパシーや尊敬の思いともなっていた。だから、サマワに陸上自衛隊が派遣されると知った ときの、イラク人の驚きと失望は大きいものだった。
「自衛隊撤退要求」の人質事件では、斬首された日本人が星条旗の布にくるまれて発見された。このことの意味するものは・・・
●イラク戦争の検証は?アメリカの罪
イ ラク攻撃の前に、国連監視検証査察委員会は、700回に及ぶ査察を実施しており、「イラクには大量破壊兵器はない、またその能力もない」との報告、しかし その最中、米政府は開戦。米軍占領統治に対する反米感情からの一般市民のデモに対する米軍の乱射事件に始まるファルージャ総攻撃。2004年4月、米軍が ファルージャを包囲し、住宅地区を含める爆撃。多くの女性・子どもが亡くなる。
イラク戦争は、国連安保理の許可を得ない 武力行使であり、明らかに国連憲章違反であったし、その理由とする「大量破壊兵器」は存在しなかった。この誤った戦争により、イラクはあまりにも壊滅的な 打撃を受け、人命を奪われた。 しかし未だこの戦争の過ちについて十分な総括が国際的になされていない。
アメリカ、ジョンホプキンズ大学の推計では、2003年のイラク戦争の結果として約65万5千人のイラク人が死亡したと推定、WHOはイラクで2003年3月から2006年6月までに15万1千人が暴力によって死亡したと推定している。
米軍との戦闘で命を奪われた人だけではなく、占領後の宗派間対立の激化で多くの人が死亡したわけであるが、戦争が起きなければこれだけの犠牲がなかったことは明らかである。
2005年には米政府は自国民に対して、イラク戦争は間違っていた、と謝罪をしたが国際社会に向けての謝罪や検証は行われていない。
イギリスも同じく謝罪をし、オランダは国際法違反だったと結論づけている。
さて、日本政府は・・・いまだに、「イラクが悪かった」としており、検証・分析を行っていない。
検証のできない国が「集団的自衛権の行使」をしてもよいのだろうか?