第6回こども笑顔ミーティングのご報告「障がい児と家族の現状、保育の現場から見える虐待問題」
2016年7月24日、第6回 こども笑顔ミーティングが消費者生活センターにて行われました。
今回は30名の参加でした。イスを円形に並べて、みんなの顔が見えるようにすわり、始めに自己紹介、その後はゲストトーク。最後は、自分が取り組んでいきたいことなどを一人ずつ話して終わり ました。子どもをめぐる環境には、日頃みなさんそれぞれに課題を感じておられるようでしたが、お二人のトークでさらに問題の共有と共感の輪が広がったよう でした。ここにゲストトークのご報告をいたします。
「ゲストトーク」から
テーマ
「障がい児と家族の現状、保育の現場から見える虐待問題」
【1】伊藤さん・お子さんは車イスユーザー
「障害児も地元普通級で学べるように。子どもは子どもの中で育つ」
・地域の小学校に入るまで
学区のT小学校は校舎の造りが入り組んでいるので、車椅子で生活するのは無理だと判断。学務課には隣町のK小学校への越境入学をすすめられたが、堂々と通い たいと思い、学区へ引っ越した。学務課担当者に同席してもらい、学校側と「入学後1カ月は親が付き添う。その後は、親が付き添わずに、学べるようにしてほ しい」と相談。
・親の付き添いなしに、普通に学べる環境を
しかし入学後は、「親が常時付き添い、子どもを手助けするように」と強く要求された。義務教育なのに、なぜ親の付き添いが必要なのか疑問に感じ、心が休まら なかった。校長先生からの呼び出し、圧迫面接が辛かった。入学前は「運動会やプールはできませんね」、入学後は「災害時、逃げ遅れますね」「手がかかるか ら、担任のなり手がいないかもしれません。担任の先生が否定してくれたことが救いだったが、察した子どもは「遠足には行かなくていいよ」と。子どもに負担 をかけていることが心苦しかった。
新しい校長先生が着任され、今春より遠足の付き添いを要請されなくなった。親が付き添わない遠足を終えて、初めて子どもが「楽しかった」という。
・区議会への陳情
入学前に大田区議会に陳情を出した。「親が付き添わなくても、学校教育が受けられるように。支援員を増やして対応してもらいたい」と。残念ながら、継続審議 になってそのまま流れた。「支援員の人数、時間が少ないため、子どもを見ることはできない。だから、親が付き添うように」と強要されるのが現実。本人と親 が希望すれば、地元普通級で障害児も皆と一緒に学べるようにしたい。次回、また支援員を増やしてほしいと陳情を出したい。
【2】二木やす子さん・元保育園園長、虐待対応事例研究会
「保育園の毎日は、親支援の毎日」
公立保育園の先生たちで現場の事例を持ち寄って毎月1回虐待についての勉強会を始めて16年になる。
●保育園だからこそ、わかることがある。親子一体だからこそ
「おやっ」と思うことがある。入園面接で「危ない」と気づくことがある。
子どもに全く関心を持たない親、無視する親、子どもをただ保育園に押し付けていってしまう親。→ 子どもは愛情に飢えているので、保育士に底なしに甘える。あるいは、どこまでやれば、関心を向けてもらえるか、試す子ども。大人を困らせる。友だちをつきとばす、机に乗るなど問題行動。家庭内では緊張状態。
子どもの変化、親の変化、子どものSOSを見逃さない → 洗濯をしない、靴が小さくなっても買わない。欠席がち。
保育士の仕事、その子どもに関わることも大事だが、集団を見ていくことも大事。保育士の力量が問われる。
●お母さんの背景 → 若年結婚、出産。親自身がまだ遊びたい年齢。生活の仕方が身についていない。親自身が虐待を受けてきている。精神疾患。貧困。子連れで再婚。すぐ離婚、すぐ結婚。男性に心がいって、子どもにネグレクト。
●保育園の役割
お母さんの状況、思いを受けとめる。「おかあさんの困っていることはなあに?」と聴く。子どものいいところ、笑顔のかわいさを見せてあげる。
親ができないことを支援。食事、安全、清潔、福祉事務所につなげること。
ある母親の場合、介護施設のパートでは、生活保護より経済的に厳しい。ろくろく食事もできていないのかもしれない。→ 学校に行ったらどうなるのか。臭いといわれて、登校拒否になるかもしれない。保育園には情報が入らなくなる。→ こども食堂の意義
母子寮を出た人は保育園に優先的に入れる。しかし「優先入所」と書いていないので、虐待の状況、家族状況がわからずバックアップ体制がとれない。(児相の方は書くようにいっている。他区は書いている)→ 継続して支援していく仕組みが必要
●母親の変化
この5~6年、大きな変化。お母さん自身が甘えたい。「私を見て」といっている。お母さんに心の余裕がない。子どもがイヤ、といったら、「もう知らない、置 いていくよ」と。保育園の役割、お母さんに一声かける。お母さんに心を寄せる。「ママ、だいじょうぶよ」とママをフォローする。ママを支える。ママは毎日 が苦しい、おばあちゃんも疲れ切っている。保育園の毎日は、親支援の毎日。
どんなに危うい家族でも公立保育園は断らない。無認可園ではそうとは限らない。
●対策
子どもの成長の過程がわからない。抱く、抱かれることができない。
母親学級がチャンスではないか。子どもの成長過程を伝える。生まれてくることを楽しみにできるように。
伊藤さんの話を聞いて、“本来学校の役割とは何か”、二木さんのお話を聞いて、“これからの子育て環境における保育園の役割とは何か”を考えさせられまし た。どちらにしても、子どもたちがどう育つことが幸せなのか、生きるために獲得しなければならない力とは何か、このことを今また真剣に求めて、子どもこそ が宝だということを再確認して保育環境、教育環境を整備していかなくてはならないと強く感じたひとときでした。こども笑顔ミーティングが現場の中から、現 代社会の矛盾をあぶりだしていることだけは確かです。ここからのスタート、道は険しいですけれど、この日、共感した仲間がいたことは、大きな勇気になりました。