やっぱり乳幼児期が重要! 青年期に至るまでの土台作り

2月5日に下丸子の区民プラザで「第10回こども笑顔ミーティング」が開催されました。
「こども食堂」を運営している近藤博子さんの呼びかけで始まったこの会は、子どもの居場所のネットワークを作り、子どもたちの笑顔あふれる街にしたい、という主旨で活動しています。

始めのあいさつで、まず近藤さんは子どもの意見を披露しました。
ある中学生の言葉です。「子どもだって、いろいろな子どもがいる。だから一つの居場所があればいいってものではなくて、いろいろな居場所が必要」。
もっともですね。大人の自己満足におわらないように気をつけなくてはなりませんね。

こども笑顔ミーティングチラシ_表面
 

 

 

 

 

 

 

 

こども笑顔ミーティングチラシ_裏面

 

 

 

 

 

 

 

第1部 講演
●「子どもの育ちと脳の発達」佐藤佳代子さん

保育園で長く働いた佐藤さんは、その経験と脳科学者の知見から、子どもの発達は全て脳の発達に付随するもので、健全な発達の道筋が阻害されると脳の発達に大きく影響する、という警告でもあるお話でした。

信頼できる大人との愛着関係を結ぶことがなにより大事な乳幼児期
子どもには、すでに自ら育とうとする力がある。その力を受け止めて、応援するのが大人の役目。

脳幹…根源的な欲求を調整作業するところで、0歳時代に発達するところ。欲求が満たされ、心地よいリズムで生活が整えられた赤ちゃんは、安心安全の感情が視床下部に埋め込まれ、セロトニン(愛情ホルモン)を出します。0歳時代に“わがまま泣き”はなく、「要求があったら、全て抱きなさい」とのこと。欲求が満たされると、視床下部から幸せホルモンを分泌することで自己肯定感が育ち、ストレスからの立ち直りが早い子どもに育つ。

大脳辺縁系は、感じる脳、愛着の脳であり、刺激をキャッチしたら海馬を通り、回路を大脳に送る。6歳~7歳が一番育つ。このときにたっぷり自分のやりたいことをやり、大人に認めてもらうことが大事で、それによってドーパミン(成功感・意欲ホルモン)が出る。

乳幼児期は、同じ人から同じ安心感を得、大人との信頼感を結ぶことが大事。したがって、保育士が入れ替わりたちかわり、という環境はよくない。スマホで育児も。

●「思春期の子どもたちに接して思うこと」白旗眞生さん

調布市で青少年の居場所「キートス」を開設して今年7月で7年になる。
宿泊はないが遅くまでいて子どもたちと家族のようにいる。食事支援・学習支援・育て直し(自立支援)を行っている。

キートスが生まれた背景

中高専用の児童館がある調布市だが、18歳になると出なければならないので、その後の子どもたちを憂い、キートスを始めた。
60歳のとき、200万出してアパートを借りて開始。徐々に支援者が増えていった。ボランティアが65人。日本の寄付文化は育っていないといわれるが、年金の中から寄付を下さる方もいる。賛助会員もたくさんいる。
今では調布市から180万/年の助成。企業からは50万/年。人件費を除いて700万以上かかる(個人の寄付)が、この先行政の委託を受けることはしない、と決意。委託を受けると制約が何かと多い(生ものは出せない、24時間携帯はだめ)から。

キートスでの生活

来てくれる子は、一日ぐだぐだしている。何もしない。ゲームだけ。キートスにはルールがない。自由。ご飯は独りで食べてもいい。我儘いっても我儘と認識しない。いつまでも待つ。
様子を見ながらひとりずつのプログラムを作る。
卒業もない。失敗を繰り返す子もたくさんいる。その子が本来持っているエネルギーを引き出すことがキートスの仕事。

キートスに来る子ども

食事をしていない子。学校に行っていない子。生保世帯。いろいろな家庭環境の子。自殺を何度も図った子、両親はいるが、お母さんが精神で病んでいる。お父さんは家族を顧みず経済的な部分でのみ支えている、目を開けて歩けなくなった子。10代の虐待による人格のゆがみ。金銭管理できない子もいる。何もできず、「大人なのに何で?」と思うことがある。
愛着障害なのか発達障害なのか見分けるのが難しい子どももいる。
薬を飲んでいる子もたくさんいるが、少しずつ薬を減らすように願っている。
“よく生きてこられたな”と思う、ほど、過酷な環境で生きてきた子どもにも多く出会う。誰かがいたから生きて来られたんだなと思う。
そんな子どもが身近にいる。現在273人の登録。

しかし、まだどこにもつながらない子どももたくさんいるはず。子ども家庭支援センターやSSWが見つけてきて繋げる仕組みになっているが、プライドが高い家庭や子どもは続かない。がたまに1年たってまた繋がってくるケースもある。

子どもの成長

一生懸命支えた子どもたちが支える側になることもある。
不登校だったのに、大学に行った子ども。下の子たちが「私たちも大学に行けるんだ!」

土曜ご飯作る人がいないと子どもたちが相談して買い物に行って作る。
始めは苦労したが、育ち直しした子が下の子にまた教えることができている。
思春期の子にとって大事なことは「待つ」こと。

アルバイトして一人で生活を賄っている子。今では「学びたい。学校行きたい」というまでになっている。20万円、キートスで貸すので、通信学校のお金にあてて、アルバイト代は生活費に。緩やかに暮らしなさいといった。

他人が介在する意味

昔関わったことがある、自死した28歳の子。ガスも電気も止められていた。お母さんが何年も清算していたのだが、自立のために母親が払うのをやめたとたん、自死。
→親にいつまでも頼っていちゃだめだと思う。だからこそ他人(キートス)が介在して支援することが大事。

親を責めてはいけない、子どもをみるとき「3世代をみなさい」という。まずはその子たちを負の連鎖から外したい。

子どもにも「知る」権利!

「5時間前だぜ」と嘆く青年。母親に「あなたは5時間後からお父さんと暮らしなさい」と言われた。この青年は転校13回。ずっとお母さんに振り回されている。この青年もそうだが、なぜ離婚したのか、をきちんと言ってもらえてない子がたくさんいる。せめて“どうしても意見が合わなかった”とか、離婚の理由を子どもにも伝えるべき。そうでないと「自分のせいで離婚した」と思い続ける子がたくさんいる。

第2部は、区内で子どもの居場所を運営している方々の報告でした。
それぞれの活動における子どもたちへの思いを伺うことができて、とても心強く感じました。

最後は、大田区福祉部参事・子どもの貧困対策担当の石川さんのあいさつ、大田区が「子どもの生活実態調査」をしたこと、独自の調査分析によると、生活困難層が21パーセントだったことを説明されたうえで、今後の生活応援プラン策定の柱は、1、経験・学力、2、生活・健康、3、居場所・包摂であることを報告されました。そして、状況がさまざまであることから、一人一人のご家庭の様子に寄り添う必要があること、一人での子育ては心細いので、地域により支えられることは親にとっても子どもにとっても大事だというお話をされました。


今後、さらにリアルな子どもの現状をつかみ、地域全体で子どもを育む環境を創っていく必要を感じました。大田区にはキートスのような青少年の居場所がほとんどないので、青少年の実態調査と居場所作りが急務だと感じました。