不登校だって、だいじょうぶ! ~フリースクール 東京シューレを見学してきました~
毎月第2木曜日が「一般見学会」ということなので、「東京シューレ王子」を見学してきました。代表の奥地圭子さんのお話や東京シューレの利用者(不登校経験者)の若者の体験談を伺うことができましたが、とても興味深い内容でした。不登校になったからといって、悲観することはない、進学もできるし、海外留学の道だってある。育ち方はそれぞれ。不登校だからダメ、ということは全くない・・・というお話は、実際にそこに集っている子どもたちの楽しそうな様子や体験談からも実感できました。
会議室、この部屋で奥地圭子さんの話を聞きました
◆フリースクールとは
公的教育機関ではない、学校制度外に創られた子どもの学び育つ場。国の学習指導要領に基づく教育過程とは違う、子どもの考えや子どもの興味関心を大事にした独自の活動を展開。欧米では多様な学びの場があることが重要との認識で、さまざまな学校がある。
◆フリースクール誕生の背景
1975年より不登校が増え続け、現在は12万人以上の状態が10年間続く。行政が学校復帰政策を取り続けても増加の一歩で、学校以外の子どもの育ちの場は必要。各地にフリースクールスが誕生し、社会的意義を生む。
◆学校との関係
1992年、文科省はフリースクールを「民間施設」として不登校支援施策の中に位置づけ、在籍校の校長裁量でフリースクールに通った日数を学校の出席日数にカウントできると通達。翌年、通学定期券の適応も実現。今年2月に施行された「教育機会確保法」では「個々の不登校児童生徒の休養の必要性や状況に応じた学習活動、その情報提供、助言、支援」の必要性を示している。
◆東京シューレの活動 対象6歳~20歳
「安心して過ごせる場所」「自己決定を大切に」「子どもでつくる」「ひとり一人を尊重する」子ども中心の教育・学びを理念とする。シューレの運営をする大人は「先生」ではなく「スタッフ」、大人も子どもも学年が違っても、対等な関係、なんでも意見交換ができる。
〔1〕フリースクール東京シューレ
・東京シューレ王子 会員90人
・東京シューレ新宿 会員40人
・東京シューレ流山 会員20人
東京シューレ王子、全景
〔2〕ホームシューレ
在宅で成長する子どもを支援。ホームエデュケーション。アメリカでは215万人が利用、学校に行けなくても自分の興味関心で学びはできる。オーダーメイドの教育、家の可能性は大きい。求めれば交流もできる。三和高校との連携で高校卒業認定も可能、学習サポートも受けられる。どこであってもその子が成長したいと思えば、成長できる。
〔3〕高校コース(高卒資格取得)
札幌自由が丘学園三和高校との提携により、フリースクール、ホームシューレを経験しながら高校卒業資格が取得できる。
〔4〕シューレ大学
若者自らが創り出す知的欲求と表現・創造活動の場。演劇やソーラーカーなど、本格的。生き方がひろがる。
〔5〕東京シューレ葛飾中学校
2007年、教育特区制度と葛飾区の提供による廃校を活用し、私立中学校の運営を開始。125名の在校生。体験からの学びを大切にしている。
〔6〕親同士の交流
サロン
◆当事者のお話
S君
経過:小学2年でいじめにあった。暴行を受け、物を取られた。いじめられているのか、ふざけているのか、境目がわからず、先生には相談できなかったし、クラスのみんなも黙認しており、不登校に。シューレにはすぐになじんだ。異年齢とも仲良く付き合えた。学校は、先生が正しく、子どもの上という感じ。シューレは押し付けられることもなく、個人を尊重する。将来の選択を増やすために高校コースをとり、基礎からやり直している。三和高校卒業をめざしている。冬のスクーリングの犬そりが楽しかった。
興味:ある日突然、燻製に興味をもって、シューレで燻製機を作ることから取り組んだ。他にフットサル、バトミントンを楽しんでいる。
N君
小学校のとき、いじめられた。母が校長に訴えても、把握できていないといわれる。担任が加害者にあやまれといった後は「ちくったな」と逆効果。中1でもいじめ。中2で不登校。気の強い3人に同時に物を壊され、暴行を受ける。家の写真をラインで回された。いじめられていることは家族に相談できなかった。心配かけたくなかったので。移動教室のとき、夕方になってから参加しようと思って両親に千葉から山梨につれていってもらった。夜10時、出迎えた校長と担任は「よくきたね」といってくれたが、その後、担任が母親に「なんでこんな時間に連れてくるんですか」と言っているのが聞こえた。大人は嫌い。シューレは上下関係も強制的なこともなく、子どもの身になって接してくれる。ミーティングがあって自分の意見が尊重される。働くためには、専門学校に行きたいが、そのためには高校卒業をめざす。今は、ユーチューブの動画撮影、打楽器の演奏が楽しい。
たこ焼き作り
毎日のプログラムは子どもたちで決めているとのこと。この日はたこ焼き作りと映画鑑賞でした。
心が傷ついた状態では、将来の夢も描けない。2人はシューレに来て、自分の居場所を見つけ、好きなことに打ち込むことにより、将来のことを考えられるようになってきたのです。お話を聞いて、つくづくそう思いました。
「好きなことに打ち込む」それだけでもできるように、私たちは子どもの居場所を確保しなければなりません。そして私たちの作った社会のひずみがそうさせたのかもしれないことを謙虚に振り返り、改善にむけていかなければならないのです。
東京シューレは子どもたちの言葉を通して振り返るチャンスをたくさん提供してくれます。私たちは子どもの心を知り、“本当のニーズ”をつかんでいかなくてはなりません。
子どもたちの幸せのために、日本のために。