呑川 ~悪臭問題を考える~

悪臭問題から考える雨水対策

この時期(春から夏にかけて)には、雨が降るとその次の日あたりには、呑川の中流域、西蒲田・蒲田あたりに黒いスカムが浮き、悪臭が発生することがたびたびあります。スカムは下水道の越流(オーバーフロー:通常は下水管から処理場に行く汚水が、大量の雨水のために許容量を超えて川にあふれ出す現象)の影響で、西蒲田付近に堆積した汚泥が浮いてくるものですが、潮の干満の影響も重なり、硫化水素も発生し、この付近に住む人はそれらの悪臭に悩まされています。

 

 

 

 

 

 

 

スカム・西蒲田(7月27日)

 

オーバーフローの原因は雨水と汚水を同じ配管に流す「合流式下水道」にあります。抜本的解決策である分流式への(田園調布地域以外)切り替え工事を行うためには、時間と工事負担(予算や区民の協力)が伴うため、一気には取り組めません。しかし、下水道インフラが寿命を迎え再整備の時期に「分流式」への切り替えが必要と考えます。

区では、悪臭対策として、「スカム発生抑制装置」や、川底の汚泥の浚渫(しゅんせつ)、また年に一度はバキュームでさらうこともおこなっていますが、まだ改善にはいたっていません。新たな取り組みとして西蒲田5丁目児童遊園内に高濃度酸素水浄化施設(呑川の水を取水し高濃度酸素水溶解装置で浄化後放流する)の設置と、オーバーフロー対策として降雨時の下水を一旦貯留する設備を、東調布公園地下に設置する検討が進められています。

 

 

 

 

 

 

 

旧型・水質浄化装置

 

呑川は大田区の真ん中を流れる川で、住宅地、寺町、商業地、工業地帯と大田区全体を眺めることのできる川です。悪臭の早急な解決、そして区民が憩える、美しい川、動植物が豊かに生息できる清らかな川になることを願いながら注視していきたいと思います。

 

 

 

 

 

 

 

新型スカム発生抑制装置

 

各家庭の雨水利用も

コンクリートで覆われた地面ばかりでは保水力や浸透力がありません。雨水の流出対策としては緑や土の保全も大切です。私たち個人ができる雨水対策としては、緑を増やすこと、また住宅の雨樋から雨水を取る雨水貯留槽(天水尊やレインバンクなどとも言われる)の設置事業などがあります。雨水貯留槽の設置実績は864件(平成20年から28年)に留まっています。水害だけでなく巨大地震などの自然災害が想定される今、雨水貯留槽のように個人でできる雨水利用は防災用水の確保に繋がり、全区的に設置されていくことが望まれます。

 

 

 

 

雨水利用

 

呑川の水質改善の課題が都市基盤の在り方を変え、その技術が防災にも必要とされていくことを多角的にとらえ、大田・生活者ネットワークは安全・安心なまちづくりを提案していきます。

 

 

 

 

 

 

呑川のカルガモ(久が原2丁目)