この税金の使い道、区民生活にどう役立つ?議会報告3-大田ブランディング・シティプロモーション戦略

第4回定例会の議案として「一般会計補正予算」が上程され、その中に「大田ブランディング・シティプロモーション戦略の策定に係る経費」約1千万円が計上されていました。平成30年度までかかるので、債務負担行為というものになります。
この事業、なんのための事業なのか、わからないこと、区民生活に対する具体的な効果が期待できないことから反対いたしました。以下が反対討論です。

 


大田区一般会計補正予算第4次に反対の立場から討論いたします。
総務費事務費の(仮称)大田ブランディング・シティプロモーション戦略の策定に係る経費について、意見を申し述べます。

8月15日の総務財政委員会で報告された企画経営部の資料によると、「区におけるブランド化・魅力発信の狙い」として、「現状、各部局のブランディングの取り組みは、成果がでているものの、個別・分散化している。実際に住めば満足できるが、対外的な区の認知度、区のイメージ、魅力の認知度、回遊性については、それぞれ高まる余地があり、更なる発信が必要とされている。おおたの魅力を総合化し、更に発信力を強化するイメージ戦略を策定することで、定住化の促進、区の認知度・イメージの明確化、区内回遊性の向上を図り、地域経済の活性化につなげる」とあります。

ここでは「魅力」「イメージ」「発信」という言葉がくり返されているだけで、実態を感じ取ることができません。これから実態を作っていくのか、本当はあるのだけれど発信するまでには確立されていないのか、何をプロモーションするのかがつかめないのです。またコンセプトを文化・空港・観光・暮らし・健康・産業・自然・食の8つの要素とするとありますが、そもそもコンセプトというのは“元になる思い”や“考え方”をいうのであって、文化や暮らしそのものがコンセプトというには無理があります。(コンテンツというべきものでしょう)。文化や暮らしを“どういう思い”で発信するのか、そのメッセージ性に意味があるのではないでしょうか。どう逆立ちしても、大田区は京都になれませんし、等身大の大田区が大田ブランドであって、大田区に触れた中でそれぞれの人が感じるものが大田区なのではないでしょうか。

企画経営部が取り組んでいるのですから、ただの観光案内ではないはずです。まずは当初予算のテ―マにあるように「暮らしてよし、訪れてよし、地域力あふれる国際都市おおた」の「暮らしてよし」という区民にとっての生活を重視する視点がめざされるべきです。格差による貧困や生活苦、待機児問題がある中で、いくら「イメージ戦力」をもってしても本当の満足度にはならないのではないでしょうか。実態の中での、生活上の満足感、地域の課題が解決され、区民が大事に思う地域遺産を掘り起こすなど、現在あるものにしっかり向き合うことが肝心だと考えます。

もし何をもって大田区を売り出せばいいのか、コンセプトとなる“メッセージ性”を考えるのであれば、リサーチする必要があるでしょう。“人々は何を求めているのか”、“人は何に魅力を感じるのか”それに合致するものが大田区にあるのかどうかを見極めることが必要だと考えます。それには今、大田区の何が注目されているのかがヒントになり、たとえば、大田区発祥の「子ども食堂」はいまや日本中に1千戸以上生まれているといわれています。なぜか、多くの人が“やすらぎや居場所”を求めていることの表れではないでしょうか。店主の近藤さんには日本中から講演依頼がきているそうです。先日は、同志社大学付属中学の人権教育の一環で講演を頼まれたそうですが、その時、中学の先生が、「これからは、ロボットが人間の仕事にとって代わるようになるから、教育は“人間でしかできないこと”を追求するのだ」とおっしゃったそうです。こども食堂をうみだした近藤さんの発想力、人々の求めているものを察知する能力に注目されたということでしょう。

大田区はその意味で言えば、“人間にしかできないこと”を生み出しているところだと思います。小さな町工場の技術は機械では作れない人間の手のわざと優れた勘で生み出されています。そのような職人技や日本有数の文学者を数多く集積させた馬込文士村、世界中にファンのいる版画家川瀬巴水の描いた美しい景色のある大田区、人間のすばらしさをうたうことは世界の人に勇気を与えるものであり、人々が求めているものであり、ひょっとしたら、“人間性の回復”という意味で最先端といえるものを大田区の中に数多く見出すことができるのかもしれません。“実態に裏づけられた人々の心に響くコンセプト”を打ち出すことが大田ブランディング・シティプロモーションになり、世界に貢献できることにつながるのではないでしょうか。

この事業のために各部局が集まって検討委員会を組織しているということで全体的な区民生活の底上げや環境作りにもつながるのであれば、意味があると考えます。もちろんそれは現場からの声を集約し、大田区の誇るものは何か、区民の求めることは何か、を追求する会議である場合です。しかし戦略策定という大事な課程において、審議会のメンバーも外部の民間事業者、そして、コンサルティング業者への委託で、最も地域のことを知る区民意見を積極的に聞くこともなく、大田区の本当の良さ、区民が誇りをいだけるような実態を伴うものとなるのか、疑問を抱くところです。大田区への安住性を求めるという目的もあるのであれば、なおさら実態とメッセージ性、少なくとも大田区のめざす姿や思いがこめられてこそのシティプロモーションであるべきではないでしょうか。

以上のことから現在の大田ブランディング・シティプロモーション戦略の構想にも位置づけに対しても疑問をもつことから、補正予算に反対いたします。


(ちなみにこの議案に反対したのは、“大田・生活者ネットワーク”と“フェアな民主主義”です)

 

 

 

 

 

 

 

写真は六郷用水