子どもの命を守る連続講座 「にんしんSOS東京」の活動から見える“思いがけない妊娠”の現状

誰もが“にんしん”をきっかけに、自分の幸せを感じながら生きていける社会へ

2017年12月22日、東京・生活者ネットワーク「子ども部会」企画の講座、『望まない妊娠の現状』が講師に中島かおりさん(一般社団法人 にんしんSOS東京 代表理事)をお迎えして行われました。

 

第2回は2018年1月10日(水) 13:00~15:00です。
↓クリックでPDFが見られます

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「にんしんSOS東京」は誰にも相談できないで苦しんでいる多くの人のために立ち上がった専門家集団です。医師、助産師、看護師、保健師、社会福祉士、弁護士たちで構成されています。“にんしん”にまつわる相談の現場から社会のひずみ・重たい問題が見えてきます。幸せな“にんしん”を迎えるために、児童虐待をなくすために、命を守るために私たちに何ができるのか、深く考えさせられた講義でした。

 

 

 

 

 

 

 

講義風景

 

今、日本で起きていること・・・乳児遺棄

児童虐待死の58%が0歳児
47%が0カ月児、そのうちの82%が0日
189への虐待通報が10万件を超えた・・・虐待死72件(氷山の一角)

 

“にんしん”の社会課題

出生数 98万人
中絶件数 18万人
年間死亡者数は130万人

全妊娠の15%が中絶している
理由の第1位は結婚していないから
40代の中絶理由は経済的不安

 

切れ目のない支援とは(課題の背景)

「母子手帳交付」からではなく「妊娠したかも・・・」というときから繋がる仕組みが必要
・孤立・依存先が少ない、社会的資源・地域コミュニティにつながらない
・経済的困窮・母子手帳交付のためには、医師による妊婦確定診断が必要で8500円ほどかかる。その後の検診補助も全額ではない。出産費用も42万円ですまない。

 

にんしんSOS東京のミッション

妊娠にまつわる全ての「困った」、「どうしよう」に寄り添う。
相談を受けたら、必要に応じて紹介・連携・同行支援・自立までサポート
→病院・弁護士・養子縁組支援団体・こども支援団体・シェルター

 

相談の実情

相談件数は日々増加。関東圏からの相談が60%。10代の相談者が30%
避妊の失敗・生理の遅れの相談が最も多い
未婚の方が70%、既婚者も19%、男性からの相談は16%

 

解決への糸口・必要な仕組みを考える

・産婦人科受診料の無料化、妊娠初期から妊婦健診補助券を利用可能に
・妊産婦支援施設、滞在期間が決められているが、空きがある場合は融通をきかす
・親子をセットでみてくれる里親の育成
・育てるか、育てないかの二者選択ではなく、一時乳児院に預けて通いで育てていく
・犯罪被害者支援金を時間がたったレイプ被害者に適用する(本来は急性期だが)
・東京都の「にんしんほっとライン」は都に住んでいる人だけしか使えないが、都で働いている人にも
・子どもの数の多い人も保育園に入れるように
・性教育のあり方、sex、生殖という意味合いだけではなく、暴力に相当する側面があること、相手を大切に思うコミュニケーションとしての役割をどのように伝えるか

 

事例

・夫は不安定収入の自営業。妻はパートで働き、住宅ローンの月6万円は妻が担っている。
3人目を妊娠。出産に際して、パートを辞めざるを得なくなるが、出産費用がかかる。しかも住宅ローンが払えなくなる。夫からは「今回はあきらめてくれ」と言われる。
・高校生、デートDV。付き合っていた彼の友人に乱暴されて写真を撮られる。写真を拡散すると脅されて性交渉を強要。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

中島かおりさんと

【参考】

漂流女子 ――にんしんSOS東京の相談現場からー― (朝日新書)