やったぞ、大田区町工場! 車いすバスケット用の車いす完成!
2020年東京オリンピック・パラリンピックに向けて、
車いすバスケット用の車いすが完成。
大田区総合体育館メインアリーナにてお披露目
車いすバスケットボールチーム
「NO EXCUSE」によるデモンストレーション
(2018年3月31日)
区内の町工場6社と車いすメーカーである株式会社松永製作所(本社:岐阜県養老郡)とが産業クラスターを形成し、車いすバスケットボール用の車いすの開発事業(大田区障がい者スポーツ用具製品開発事業)を行いました。
このたび、完成したものを使って選手たちが、シュートをつないで見せてくれました。実に素早く、軽妙な動き、力強い動きに驚きました。
車いすバスケのデモンストレーション
大田区の町工場の担当したところは、キャスターとフレームとキュラッシュという結合部分だそうです。軽量化と操作性のアップを実現できたとの報告でした。
白いキャスターが大田区の町工場の作品。軽量化と操作性がアップしたとのこと
車いすバスケットボールの元日本代表選手で、競技用車いすの設計・製造に携わる株式会社松永製作所の神保康広さんにお話を伺うと、大田区の町工場の技術が優れていたこと、「NO EXCUSE」チーム選手に実証テスト等ご協力いただいて、現役トップ選手の生の声を聞きながら、改良・改善に努めてこられたこと、データをとれたことが特に大きな収穫だったとのこと。今後につながっていけると希望をかたってくださいました。
車いすを見せていただくと、車輪が3つのもの、4つのもの、車輪の間隔も選手によって違います。ポジションの違いで車いすの動きも機能も微妙に変えてあるのでしょう。選手にとっては、車いすは体の一部。慣れるまでに3カ月はかかるとのこと。大田区の町工場の技術が選手の力をさらに引き出し、コートを縦横無尽に走り、たくさんのシュートを決めることができるように、ぜひその雄姿をオリンピックで観たいものです。
手前の白いキャスターが大田区の町工場の作品、向こうの赤いものは従来のドイツ製のもの
以下は、今回の大田区議会定例会において、大田区の今年度予算についての最終討論の最後の一部分、車いす用バスケット用の車いす開発について、書いた文章です。
私は教育や福祉、人への投資が大事だと考ますが、今回、産業経済部が「産業クラスター形成支援事業」として障害者用スポーツ用具の開発に予算を計上しています。大田区の町工場が協力してメーカーとの連携で、2020年オリンピック・パラリンピックに向けて車椅子用バスケットボール用の車いすを開発したことは、これからめざすべき、インクルージョン、共生社会に大いに寄与するものになるのではないかと期待をするところです。大田の物づくりの力を世界に発信するチャンスであるとともに、人に優しいバリアフリーのまちづくりの推進につなげていけるものではないでしょうか。毎年市民団体によって開催されている「ユニバーサル駅伝」では、障害がある人もそうでない人もいっしょにゴールをめざすゲームを行いますが、それと同じように、これをきっかけに大田の子どもたちがパラリンピックの意義を深く感じる機会になることを願います。
区内の小学校に通う今度5年生になる車いすユーザーのお子さんが、学校全体の配慮で楽しく充実した毎日を送っているとの話を聞きました。運動会の時は、騎馬戦などできない競技の時は担任と相談して、マイクで解説をする役目をもらったり、ダンスの時には最も移動しなくてすむ隊列の中央に位置づけてもらって、移動が必要な時は友だちが押してくれるなど普通に運動会にも参加、プールも介助員がつき1年生から毎年、参加できているそうです。なわとびの授業でも回す役をもらって友だちと一緒に楽しんでいるそうです。体育館の舞台で表彰されるときやクラス委員として全校生徒に話をしなければならないときなど、先生たちがひょいと舞台に上げてくれるそうです。靴を履き替えるときに困っていると、他の学年でもだれでもさりげなく助けてくれるそうです。
避難訓練のとき、もし災害があったら、と不安になったそのお子さんに、担任ではない先生が、「何かあったらおんぶして逃げてあげるからだいじょうぶだよ」、と声をかけてくれたことでそれから安心してすごしているということも聴きました。
この学校の障害にごく自然によりそい、お互い助け合い、それぞれの持ち味、役割を発揮していける学校風土、障害があっても共に生きていけるという感覚を育てている先生方の配慮、チームワークは子どもたちにとって生きた教育になっていることでしょうし、そこで育った子どもたちは、きっと共生社会を創っていく担い手になるのではないでしょうか。すばらしい教育の実践といえるでしょう。
期せずして、大田区の町工場が高い技術を結集して、車椅子バスケット用の車いすを作ったわけですが、日常的には、子どもたちと町工場はあまり接点がなく、町工場を肌で感じることはめったにないのだと思います。これらを結びつけていくこと、コーディネートも行政の重要な仕事ではないでしょうか。ぜひ今回の大田の技術がパラリンピックの車椅子の選手に貢献するというニュースを子どもたちに知らせ、何事もイベントだけで終わるのではなく、子どもたちには「学ぶこと」、「技術を身に着けること」がすみやすい社会を創ること、人を幸せにすることにつながることを知り、夢や希望、職業観にもつなげてほしいと願います。
車いすユーザーの子どもの幸せな学校生活も町工場の技術も、世界にも誇れることではないかと思います。大田区全体の活性化をめざして2018年度の予算が区民の希望をさらに膨らますものになることを願って大田区一般会計予算の賛成討論といたします。