「赤ちゃん縁組」愛知方式を生み出した矢満田さんのお話。「こども笑顔ミーティング」のご報告
子どもは私たちの命、私たちの未来。
~日本は子どもを大切にしていますか?~
「赤ちゃん縁組」愛知方式を生み出した矢満田さんのお話から
最も大事な新生児期に目を向けて、特別養子縁組の推進を!
7月25日の「こども笑顔ミーティング」では「赤ちゃん縁組」を推進してきた愛知県元児童相談所職員で児童福祉司の矢満田篤二さんのお話を伺いました。
予期せぬ妊娠で苦しむ女性のいること、0歳児の虐待(生まれてすぐの遺棄)が最も多いこと、石巻市の産院院長の菊田医師がやむにやまれぬ状況での赤ちゃんの命救済のために偽の出生証明書を書き罪になるが、のちに(平成3年)に「生命尊重賞」を受賞したことなどの話を伺い、子どもの最善のためには私たちはこれからどういう仕組みを作るべきか考えさせられました。
特別養子縁組の仲介事業を行っている「NPO法人 Babyぽけっと」の取り組みもDVDで見せていただき、窮地に立たされている女性を支援し、赤ちゃんを育てたいという夫婦に丁寧に託すことで、赤ちゃんにとっての幸せ、新しい家庭の喜びが生まれる救いを知りました。
●社会的養護の課題
レイプをされて予期せぬ妊娠をした妊婦がそのショックから自殺をしたり、生まれてきた子どもをすぐに遺棄してしまうことほど悲しいことはないですが、今の日本の制度の中では、この苦しみの中にいる妊婦や命の危機にさらされている赤ちゃんを守る体制はあまりにも脆弱です。
妊娠期からの相談体制と支援の仕組みを構築する必要があり、産んでも育てられない場合は社会的養護への道筋をつけてあげることが重要です。この時、赤ちゃんの発達への影響を考えれば、最も愛着形成にとって重要な新生児期に、安定的な保護者との関係を築くことのできる養育環境がベストであることはいうまでもありません。里親委託や特別養子縁組など、家庭的養護に勝るものはないのです。
●東京都の児童相談所の課題
東京都では新生児のほぼ100%が乳児院への措置です。愛知県とは大きな差があります。
平成27年度の新生児の措置先をみると
東京都は
・0歳児(1か月未満)の乳児院への措置が103人、里親への措置が0人。
・0歳児(1か月以上)の乳児院への措置が117人、里親への措置が6人。
愛知県は
・0歳児(1か月未満)の乳児院への措置が12人、里親への措置が14人。
・0歳児(1か月以上)の乳児院への措置が27人、里親への措置が6人。
●乳児院の問題
乳児院の職員は一生懸命子どもに向き合っていますが、勤務体制は3交代制。子どもは特定の保育士との絆を結ぶことができず、さらに夜は職員が減るので甘えることができない状況です。ある都内の乳児院では、夜は0歳から2歳までの子ども35名にわずか3名の保育士がお世話をしています。子どもたちの“だっこ”の要求に応えられないことが辛いと聞きましたが、本来は1対1の関係を強く求める年代の子どもたち、愛情飢餓はあきらめや失望感となり、人格形成に深く影響することが懸念されます。新生児からの里親委託の取り組みはぜひとも必要です。
●虐待の背景
幼児への虐待で往々にしてあるのが、一時期母親などから引き離されて育った乳幼児が戻ったときに、親になつかない、反抗する、わざと困らせることをするなど、育てにくい状況にあり、母親等が難儀をしていることが背景にあるといわれます。一定の世話人がいなかったことによる、安定した愛着形成の阻害、愛着障害について、児相や身近な民生委員などに知識があれば、支援により親はその時期を乗り越えることができるのかもしれない。現状、支援体制がほとんどない。
●愛知県の取り組み・子どもの最善の利益のために
愛知県ではこの21年間に398組の縁組を成立させてきています。愛知方式といわれる特別養子縁組制度は、生まれてすぐの対面、養親が赤ちゃんに名前をつけるなど愛着形成に着眼した仕組みとその後の支援体制を持つなかで、1件の不調もなく成功を収めてきています。
欧米では社会的養護の主流は家庭的養護であり、里親による養育です。子どもの権利の視点にたって、東京の児相もこれから作られる区立の児相も積極的に特別養子縁組に取り組んでほしいものですが、なぜ、東京の児童相談所では特別養子縁組を進めていないのか、その理由に向き合っていきたいと思います。
●子どもが後回しの日本
・出生率を回復したフランスは、出産費用も教育費もベビーシッター費も無償。
・「子どもの声は騒音ではない」とドイツ政府は宣言し、国を挙げて次世代の幸せに取り組む。ベルリン市内には冒険遊び場がたくさん創られ、子どもに解放されている。親は立ち入り禁止で、専属プレーリーダーが子どもを安全に導く。
・児童虐待の件数はうなぎのぼりの日本。子どもの声がうるさいと保育園建設に際しての反対運動。乳幼児に集団養育、本能的な欲求も満たされない中での、この世での第一歩。
どうしても産めない事情、育てられない事情の母親と赤ちゃんを救う体制を早く整えるべきです。国内ではただ一つ、熊本慈恵病院が赤ちゃんの匿名安全救護設備「こうのとりのゆりかご」を開設して、9年間に125人の乳幼児を保護して、命を守ってきました。半分は関東からの赤ちゃんだといいます。