超高齢化時代に対応する備えを:大田・生活者ネットワーク 大田区一般会計・特別会計に対する討論

10月11日、議会最終日は、各会派が、大田区一般会計、特別会計に対しての討論をしました。

大田・生活者ネットワークはその全てに反対の立場から討論をいたしました。自治体だけの問題ではありませんが、超高齢化時代に対応する備えがされてこなかったために介護保険も国保も保険料を上げるばかりの状況に区民は悲鳴を上げることになってはいないでしょうか。長期的な視野と生活実態に寄り添った施策が求められます。以下、全文です。


大田・生活者ネットワークは第70号議案2017年度大田区一般会計歳入歳出決算と第71号議案、第72号議案、第73号議案の各特別会計決算の認定に反対の立場から討論いたします。

大田区の高齢化率は2000年度が16.4%だったものが、2017年度には22.7%に。そのうち単身世帯が2015年には4万世帯を超えているので、地域の繋がりがなくなってきている中でどう安心して地域で暮らしていけるようにするか、社会保障と地域福祉はまったなしの大きな課題です。
特別会計決算を俯瞰する中で、見える課題から、長期的な展望を考える必要があります。

まず介護保険特別会計ですが、2000年に介護保険制度が導入されてから改正が続き、高齢化の進展で保険料は導入当初の2倍にもなり、上昇を続けています。制度維持のための給付抑制は、2017年度から「介護予防・日常生活支援総合事業」という名で、要支援1,2の方の訪問サービスや通所サービスの制限という形になりました。そもそも本来、「要支援」という考え方は、“支援を受けながら自立的な生活を維持していく”ことにあり、「自立」や「1年で卒業」という考え方には無理があります。個人の実態に即したプランにこそ意味があり、そうでないとかえって重度化を招きかねません。

また総合事業を展開させるには、地域の支え手(大田区絆サービス)をどう増やしていくのか、どう運営していくのか、が問題です。大田区はNPOなど自主的な活動が盛んなので、大田区の抱える課題を区民と協働で取り組んでこられる可能性が大きかったと考えます。介護保険課、福祉部、社会福祉協議会、区民協働課や社会教育など庁内連携で、大田区の現状を見据えて課題解決のために区民との連携とネットワークを作ってくるべきでした。絆サービスのために「ボランティア」を今から募集するという安易な発想ではなく、区の課題を主体的に解決していこうとする区民が集い、自ら企画・実行できるようにする拠点づくり、区民が仕事として事業展開できる仕組みの構築、情報交換してお互い補えるようなネットワークなど、地域福祉のための布石を打っておくべきでした。区民の主体的な学習を支援する施設「生涯学習センター」を提案していましたが、消費者生活センターの中に講座のチラシを置くだけの部屋になってしまったのは大変残念です。

国民健康保険特別会計決算については、収入済額172億4380万3985円に対して不納欠損額が13億6387万777円でした。自営業や非正規で働く人や無職の人、また高齢者、所得が低い人が多く、厳しい生活の中で保険料が大きな負担になっています。国からの財政支援がないと安定的な制度維持は困難で、「国民皆保健制度」は崩壊寸前といえます。抜本的な制度設計のやり直しがなされないとなりませんが、大きな原因である医療費の増大を考えると、大田区は23区中、一人当たりの医療費がトップという状況が続いていることから、区を上げてその改善と健康増進に取り組んでこなければならなかったのではないでしょうか。大田区はその意識を全区的にもっているでしょうか。国保年金課は2017年度35歳になる国保加入者、1724人に病院に行かなくても血液検査ができるという「スマホでドッグ」という早期介入保健事業を進めたところ121人が応じ、結果、約7割から8割の人がコレステロール値など脂質代謝等に異常値が発見されたそうです。2016年度もほぼ同じ結果だといいますから、医療費に占める最も多い割合の生活習慣病予防は若いうちから取り組まなくてはならないことがわかります。体作りや生活習慣は子どもの頃から始まっています。園庭のない保育園が半分以上の大田区、走り回ることができない幼児期を過ごし、公園はボール遊びができないからつまらない、結果、ゲームばかりの学童期を過ごすことになれば健康の土台である体作りができないのです。国保会計の問題から、「生涯を通じての健康」という大きな目標に立ち返るべきであり、各世代に対しての保健指導、運動のできる環境づくりは必須だと考えます。

後期高齢者医療特別会計は、75歳以上という高齢で低所得者が多いのに、医療費のもっともかかる世代を支える制度です。今後さらに被保険者が増加し、現役世代が減少していく中で、保険料を上げることは現役世代の支援金分もあげることになり、現実的ではなく、やはり制度の見直しが急がれます。

各特別会計からわかる課題は、2017年度に限ったものではなく、ずっと続いてきた問題でもあり、今後さらに大きな問題になることです。この区民の生活に直結する重大な課題を、縦割りの枠を超えて全庁挙げて取り組む課題として、大田区は認識してきたでしょうか。将来的な不安を抱える区民を増やしてはいないでしょうか。オリンピック・パラリンピックよりも、ましてや羽田の跡地開発よりもまず区民の生活に向き合う区政であるべきだと考えます。

2017年度重点課題の一つに、「未来を拓く子どもたちや若者の成長を支える取り組み」とありますが、青少年に対する相談窓口がないこと、居場所がないこと、適応指導教室以外の不登校児童生徒への支援、学ぶ権利の保障の問題、高校中退者への支援の不足、等、隙間からこぼれている世代があることがわかりました。切れ目のない支援とは言い難く、所管でないという理由で子どもをトータルでみていく部署がないことも感じました。
学校教育においては、人間関係が希薄になり、体験を通じての共感性が育ちにくい現状、いじめも減らないという現状なのに、ICT環境整備など、電子機器との対面ばかりでだいじょうぶだろうかと心配になります。

そこかしこに孤立の問題があり、そのせいで、日本中に広がった子ども食堂。居場所、話を聞いてくれる人をみな求めています。「だんだん」の近藤さんから聞いた話です。こども食堂が終わりの時間になっても帰りたがらない子どもがたくさんいるとのこと。家に帰ってもお父さんもお母さんもまだ帰ってきていないというのです。子どもが大切にされていない社会であることを感じざるをえません。子どもたちの寂しさを受け止める場所の必要性を感じますが、どういう社会をめざすべきか、私たちは子どもの視点から考えていかなければなりません。ぜひ大田区には子どもたちの声を聞く自治体であってほしいと願います。

議会の役割について、ひとこと。
羽田の跡地購入が決まりました。5.9haを165億円で購入、50年の定期借地、鹿島建設を代表とする9社のグループに貸し出すということになりました。大田区はそのうち4000㎡を毎月2400万円の賃料で借りて事業を展開するということですが、将来的な負担へのリスクと、新しい事業展開というものが住民福祉を第一とする基礎的自治体の仕事といえるのかどうか、疑問を感じます。しかし、そもそもここに至るまでの進め方において多額の税金が使われる事業であるにもかかわらず、議会の中で議論する場面が少なかったこと、つまり区民に対してもその全容と意義を説明する機会がなかったことに大きな問題を感じ、議会の果たすべき役割を考えさせられるものでした。

区民主体の、区民に開かれた区政、区民と共に創る区政であってほしいと願います。

さて、2017年の第1定で、大田・生活者ネットワークは「区民の福祉向上のための寄付の受付のシステムに関しての提案」をいたしました。

区のホームページに目的別の寄付先の項目の表示と実際、どのように使われたのかを見ることができる仕組みについてです。この度、「大田区寄付金受け入れに関する庁内検討会」が立ち上がることになったことは大変うれしいことです。給付型の奨学金、末吉基金が枯渇することがないように、また様々な寄付先を選ぶことで、区民が自分の意志を反映させることができるように、優しさを循環させるためのコーディネートを大田区にはしていただきたいと考えます。また空き家や土地の寄付も受け付けて、区民の知恵も借りて、地域の居場所や公園、花壇など区民の憩える場所を確保していただきたいと考えます。

長期的な展望を持ち、様々な場面で大田区が区民と連携していっしょに住みやすいまちをつくっていくことはこれからますます重要になってきます。

区民生活の実態から出発する大田区政を希望し、大田区一般会計歳入歳出決算、各特別会計に反対の討論といたします。