子どもを守る理念「子どもの権利条約」 子どもの権利条約 連続講座2019(第1回)に参加しました
「大丈夫 一緒に考えよう ひとりぼっちじゃないんだよ あなたは大切な人」
子どもを守る理念「子どもの権利条約」
カリヨン子どもセンター・坪井節子さん(弁護士)のお話を聞く
子どもの権利条約ネットワーク主催
子どもの権利条約 連続講座 2019(第1回)
子どもの権利条約採択30年・日本批准25年
日本の子どもの現実―何が変わったのか!?
2019年5月24日 早稲田大学 戸山キャンパス 33号館にて
坪井節子さん(弁護士・カリヨン子どもセンター理事長)は、長年、少年犯罪、虐待、いじめなどもっとも厳しい状況の子どもたちと向き合ってこられた弁護士です。「子どもの権利条約」との出会いとその意味、「子どもシェルター」を創るまでの道のりをお聞きしました。
坪井節子さん
●国連・子どもの権利条約を知った時の衝撃
1989年、国連で採択。日本の子どもの状況に打ちのめされていた時期。日本国憲法と同じ、子どもにも人権があり、自由権があり、最善の利益をうたい、子どもの現実を具体的に網羅(障碍、難民、虐待・・・)した内容に感銘を受ける。日本は経済先進国であっても人権先進国ではないと痛感。
●「子どもの権利条約が子どもを守る基盤・基軸に」
弁護士としてのこれまでの活動を条約によってとらえ直すことができた。体罰は禁止というが、ではなぜダメなのかを明確に論理的に説明できるようになった。暴力で人が人を従わせるのは、人権侵害であると。虐待を「かわいそう」「加害者が悪い」という感情的、情緒的、表面的にだけ捉えるのではなく、「人間としての尊厳を回復すること」「あなたの人生はあなた自身が歩むもの」という基軸を自分の中に持つことができたことが何より大きかった。
●被害者の立場に立ちきる
いじめの構図を見ると「一人ぼっちの子どもと集団」が見えてくる。いじめの闇を開きながら、「生まれてきてよかった」と思えるように、その子どもに“よりそいきる”。その子どもの本当の苦しみはわからないが、「そばにいるよ」と言い続け、「生きていてほしい」と祈る。
子どもが自分の力で立ち上がっていく姿は、誇り高い。
●2000年、少年法の改悪
それまでの「少年法」は再犯がないようにと、欠けてきた福祉や教育を補おうとする「子どもへの信頼」の理念があった。少年審判も付添人が入って、対話型だった。しかし改正によって、少年審判に検察官(国家権力によって処罰する意味合い)が加わった。子どもへの信頼を捨てた少年法に対しては、国連も懸念を抱く。愛されて育った子どもは人を突き刺すまでにはいかない。いじめの加害者には、ストレスを抱えた優等生が多い。「なぜそうなってしまったのか、どうしたら立ち直れるのか」、子どもの側に立って見ていくべき。
●虐待の現実・圧倒的な無力感から
家で虐待を受けて、児童養護施設に送致され、そこでも虐待を受けて死んだ6歳の子ども。
「6歳までの人生はなんだったのだろう」と打ちひしがれて泣くしかなかった。手が届かない自分の無力さに「神さま、その子どもを抱いてください」と祈る。苦しんでいる子どものそばに、と児童相談所に行き「弁護士として使ってもらえないか」と頼む。入ってみると、実は無国籍の子ども、親の借金問題など、弁護士が取り組むべき仕事がたくさんあった。今では全ての児童相談所に弁護士が入るようになった。
●条約の活用、「児童福祉」から
1990年中頃までは、虐待は「育児ノイローゼ」と親の側から捉えられていた。一時保護所では、多くの場合、子どもはこれから自分がどうなるのかわからない、選択肢のない状態。子ども自身の人生を子どもに戻していくべき。子どもは奴隷ではない。今は施設では「子どもの権利ノート」が配られているが、学校では配られていない。いじめは法務省では「人権侵害」と捉え、文科省は「教育指導の問題」だと捉えている。しかし学校と争うのではなく、調整活動をしていく。
●芝居「もがれた翼」から子どもシェルター「カリヨンの家」誕生へ
1994年、子どもの権利条約が批准されたことを広く伝える手段として芝居を創る。条約42条に「条約を大人と子どもに周知させること」とある。どもの問題を芝居にするのが毎年恒例に。ある年の芝居、家庭内で性的暴力を受けた18歳の少女が児相に助けを求めたら断られた。行き場がない年齢の子どもたちの安全に過ごせて関係調整や食事、眠りを保障する子どもシェルターのことをストーリーにすると多くの人が共感。2004年子どもシェルター誕生。全国に18か所まで増え、利用者は現在380名。家族から直接逃げてくる女の子が多い。親権者から子どもを守るために、一人一人に弁護士がつく、というシステムをとる。カリヨンというのは教会の鐘。大きい鐘や小さい鐘がそれぞれの響きを持って鳴る。
●困難をかかえた子どもの権利保障
1、生まれてきてよかった
2、ひとりぼっちじゃないよ
3、あなたの人生はあなたが選んでいいんだよ
この3つの柱を保障することがカリヨンの務め。
子どもがカリヨンの家にきたら・・・ケース会議:子どももいっしょに。子ども中心に。子どもから話を聞く。これからどうしたいか。「あなたはこのチームの大将だからね、みんなが応援団だよ。これは作戦会議だよ」と。約2ヵ月で、自分で進路を選んで出ていく。
“子どもを真ん中にした他機関のスクラム”
子どもはありとあらゆる“試し行動”をする。それは、本当に自分を受け入れてくれるのかどうかを知りたいから。どんなことがあっても「出ていけ」とは言わない。
子どもが人を信じ、本当は生きたい、本当は愛されたいということを見せてくれた時がシュエルターをやってよかったと思える瞬間。
子どもに鍛えられてきた。子どもこそ、私のパートナー。
●課題
20歳になったからといってすぐに自立はできない。若者の権利保障がもっと必要。子ども・若者支援法をもっと現実的に、具体的な支援にする必要がある。特にパーソナルサポーターと支援付きの住居(サ高住のような)が必要。
非行を予防するなら、権利保障をすればいい。
だれもが自分の人生を誇り高く生きられる社会に。
司会の荒牧重人さん
「国連・子どもの権利条約」が子どもの人権を守るために果たした役割の大きさを改めて思います。しかしこの理念が活きたものとして、私たちの社会の隅々にまで行き渡るには私たちの不断の努力が必要であることは、現実を見ていると痛感します。憲法と同じですね。
大田区でも理念をみんなで共有するために「子どもの権利条例」を創ることができればいいな、と思います。
荒牧重人さんと喜多明人さんと
坪井節子さんと